質問主意書

第150回国会(臨時会)

質問主意書


質問第八号

国際自然保護連合のジュゴン保全勧告決議に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成十二年十一月十三日

照屋 寛徳   


       参議院議長 井上 裕 殿


   国際自然保護連合のジュゴン保全勧告決議に関する質問主意書

 国際自然保護連合(以下「IUCN」という。)は、二〇〇〇年十月十一日、ヨルダンの首都アンマンで開かれた総会で、名護市辺野古一帯海域を中心に生息するジュゴンと沖縄本島山原(やんばる)の森に生息するノグチゲラ、ヤンバルクイナなどの保全を求める勧告決議を採択した。その要請内容は以下のとおりである。

1 日本国政府に対し、以下のことを要請する。

(a) ジュゴンの生息場所やその周辺における軍事施設の建設に関する自発的な環境アセスメント(EIA)を、できる限り早急に完遂すること。
(b) ジュゴン個体群の更なる減少を食い止め、さらに、その回復に役立つジュゴン保全対策を、できる限り早急に実施すること。
(c) 山原の生物多様性と絶滅の恐れのある種及びジュゴンの地域個体群の保全計画をできる限り早急に作成し、これらの種とその生息地の詳細な調査研究を行うこと。
(d) 山原の「世界自然遺産」への指名を検討すること。

2 米国政府に対し、日本政府の依頼により自発的な環境アセスメントに協力することを要請する。
3 日米両国政府に対し、以下のことを要請する。

(a) 自発的な環境アセスメントの結果を考慮しながら、それに基づいてジュゴン個体群の存続を確実にするために役立つ適切な対策を講ずること。
(b) 上記1(c)で言及した調査を考慮しながら、予定されている軍事施設建設と演習に関する計画が環境へ及ぼす影響についてアセスメントを行い、それに基づいてノグチゲラ及びヤンバルクイナの生存を確実にするために役立つ適切な対策を講ずること。

 私は、IUCNのジュゴン保全勧告決議を喜ぶとともに、日本政府が勧告を履行する施策を実現するよう強く求めるものである。
 IUCNの勧告決議に法的拘束力はないというものの、世界最大の自然保護に関する連合体の勧告決議は国際社会の世論であり、尊重されなければならないと考える。
 私は、これまでに「ジュゴンの保護に関する質問主意書」(平成十二年四月十日付け)及び「ジュゴンの生息環境保全等に関する質問主意書」(平成十二年五月一日付け)を提出し、ジュゴンの保護を図る上で必要な生息確認調査、えさ場である海草藻場の現地調査及び個体識別調査等の早急な実施を求めてきた。
 これに対し政府は、「国内においては、ジュゴンの生息に関する散発的な確認報告はあるが、組織的及び継続的な調査が行われていないため、全国的な分布や生態に関する知見や資料が少なく、地域に即した効果的な調査手法の設定が困難な状況にある。このようなことから、直ちに広域的調査を行うことは困難と判断した」と答弁し、ジュゴンの生息調査に極めて消極的な態度を表明していた。
 ところが、二〇〇〇年九月十八日付け沖縄タイムス及び琉球新報の各夕刊に「十月四日から開かれる国際自然保護連合の総会で、ジュゴン保護とノグチゲラ、ヤンバルクイナの保全を求める勧告決議が提案されることが判明した」との報道があった。また、同年十月三日開催された「普天間代替施設協議会」で岸本建男名護市長からも調査要請があり、政府は名護市辺野古周辺海域に生息するジュゴンの予備的調査を決め、現に着手している。
 私は、この予備的調査が普天間飛行場代替施設の「着工」を前提とするものではなく、ジュゴンの「保全」を前提とすることなど五項目の要請を防衛施設庁長官に行った。
 予備的調査は、十月三十日から開始されたが、十一月七日には名護市嘉陽沖合約一・五キロの海域で一頭が遊泳しているのが確認された。また、翌八日にも同海域でジャンプするジュゴンの姿が報道カメラマンによって確認されている。
 このようにジュゴンの生息調査や保全をめぐって、国際的にも国内的にも注目すべき動きが出てきた。今政府に求められているのは、時間をかけ、十分で適切な生息調査の実施と万全なるジュゴン保全の対策樹立である。
 以下、質問する。

一 日本政府がIUCNに加盟した日時及び加盟の動機を明らかにされたい。

二 二〇〇〇年十月十一日のIUCN総会で「沖縄島のジュゴン、ノグチゲラ、ヤンバルクイナの保全」に関する勧告決議の採決に際し棄権した理由を明らかにされたい。

三 政府は、このIUCNの勧告決議をどのように受け止めているのか明らかにされたい。

四 政府は、IUCNの勧告決議における要請事項の1の(a)、(b)、(c)、(d)及び3の(a)、(b)について、どのような対応をとるのか、各事項ごとに具体的な方策を明らかにされたい。

  右質問する。