第150回国会(臨時会)
質問第三号
戦後処理問題としての戦時遭難船舶犠牲者に関する質問主意書 右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。 平成十二年十月五日 照屋 寛徳
戦後処理問題としての戦時遭難船舶犠牲者に関する質問主意書 戦時遭難船舶遺族会(島袋林功会長)は、第二次大戦中、米国潜水艦等の攻撃を受け撃沈された対馬丸を除く戦時遭難船舶二十五隻の犠牲者遺族らによって組織された団体である。
一、私は、平成十年八月十二日付けで「戦時遭難船舶犠牲者の洋上慰霊祭・遺族補償等に関する質問主意書」を提出した。その中で「対馬丸以外の戦時遭難船舶の犠牲者についても、洋上慰霊祭の開催、その他の慰霊事業等を実施すべきと考えるが、所信を明らかにされたい。」と問うたのに対し、政府は、九月八日付けの答弁書(以下「答弁書」という。)において「沈没艦船に係る洋上慰霊については、海域ごとにその海域で亡くなられた方々を対象としてこれを行ってきたところであるが、(中略)他の戦時遭難船舶については、既に過去に洋上慰霊の対象となったものもあると考えられるが、今後関係遺族の要望等を踏まえながら、海域ごとに行う方式による洋上慰霊の実施を検討してまいりたい。」と回答している。
二、戦時遭難船舶遺族会が求めている国主催の洋上慰霊祭をいつ、いかなる規模と予算で実施するのか明らかにされたい。 三、私は、国が主催し実施する洋上慰霊祭は、各戦時遭難船舶ごとに沈没地洋上で実施すべきと考える。それが困難であれば、せめて湖南丸や開城丸が沈没した「沖縄-鹿児島間」海域とその他の沖縄関連戦時遭難船舶が沈没した中部太平洋海域での合同慰霊祭として実施すべきと考えるが、政府の対応を明らかにされたい。 四、私は、戦時遭難船舶犠牲者は、被害の特殊性等に照らし、国が戦争を遂行する過程で強いた「特別の犠牲」であり、その遺族等に対しては、国の責任において現行法令上、又は新規特別立法等の措置により、十分な補償がなされるべきものと考えている。ところが、政府は、答弁書の中で、「対馬丸遭難学童遺族特別支出金の支給は、沖縄戦が目前に迫った時期に政府の軍事政策に協力するという形で対馬丸による学童疎開が行われ、その途中で遭難したという特別の事情を考慮して、このような特別な状況下で死亡した対馬丸遭難学童の遺族に対し、国として弔意を表す措置として支給しているものであるが、御指摘の戦時遭難船舶犠牲者については、対馬丸遭難学童を除き、特別支出金を支給すべき特別の事情はないものと考えている。」と回答している。政府の右答弁は、とても納得できるものではない。
五、戦時遭難船舶のうち第一千早丸及び第五千早丸は、政府の軍事政策に協力する形の疎開船であり、その他の戦時遭難船舶には、阪神方面の軍需工場へ赴く徴用工や女子挺身隊の犠牲者、召集令状を受けて自宅から出征しようと帰省の途上の犠牲者、定期客船に便乗した少年航空兵の犠牲者などの乗船が確認されている。まさに「政府の軍事政策に協力」した「特別の事情」による犠牲ではないか。これらの者が「政府の軍事政策に協力するという形で遭難したという特別の事情」に該当しない、すなわち国家補償の対象に該当しないとする理由を明らかにされたい。 右質問する。 |