質問主意書

第149回国会(臨時会)

答弁書


答弁書第一〇号

内閣参質一四九第一〇号

  平成十二年九月十九日

内閣総理大臣 森 喜朗   


       参議院議長 斎藤 十朗 殿

参議院議員福島瑞穂君提出東京電力MOX燃料の品質保証確認に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。


   参議院議員福島瑞穂君提出東京電力MOX燃料の品質保証確認に関する質問に対する答弁書

一の1について

 通商産業省は、ベルゴニュークリア社(以下「ベルゴ社」という。)が保有する情報について、法律上の調査権限を有していないが、東京電力株式会社(以下「東京電力」という。)福島第一原子力発電所三号機(以下「福島三号機」という。)及び柏崎刈羽原子力発電所三号機(以下「柏崎刈羽三号機」という。)用ウラン・プルトニウム混合酸化物(以下「MOX」という。)燃料の品質保証にかかわるデータについては、東京電力にMOX燃料体を供給する株式会社東芝(以下「東芝」という。)とベルゴ社のMOX燃料ペレットを使用して製造される燃料体を供給するコモックス社等との間の契約に基づき、守秘義務を遵守した上で、東芝がベルゴ社の検査を行う際にこれに同行し、当該データを確認することは、可能である。

一の2について

 MOX燃料の品質及び安全性については、これを使用する電気事業者自らが確保すべきことは当然であるが、電気事業法(昭和三十九年法律第百七十号)第五十一条に基づき、通商産業大臣が検査を行うことによっても担保されている。

一の3について

 御指摘の安全宣言が何を指すのか明らかではないが、通商産業省においては、電気事業者からの輸入燃料体検査申請を受けて、当該燃料体が、発電用核燃料物質に関する技術基準を定める省令(昭和四十年通商産業省令第六十三号。以下「技術基準」という。)に適合するか否かを確認するところ、関西電力株式会社(以下「関西電力」という。)高浜発電所三号機(以下「高浜三号機」という。)用MOX燃料については、輸入燃料体検査申請を受けていないため、技術基準に適合するか否かの判断を示していない。
 なお、通商産業省においては、高浜発電所四号機(以下「高浜四号機」という。)用MOX燃料については、平成十一年九月二十四日に公表された関西電力の作成に係る「MOX燃料ペレット外形寸法データ問題に係る調査報告書(中間報告書)」と題する報告書においてブリティッシュ・ニュークリア・フュエル・ピーエルシー社(以下「BNFL社」という。)の不正はないとする点を妥当として、その後、厳正に輸入燃料体検査を行うとしていたところ、同年十二月にBNFL社における不正が明らかになり、関西電力が輸入燃料体検査申請を取り下げたため、技術基準に適合するか否かの判断を示していない。

一の4について

 御指摘の安全宣言が何を指すのか明らかではないが、MOX燃料に起因する事故であるか否かを問わず、原子力損害の賠償に関する法律(昭和三十六年法律第百四十七号)に基づき、原子炉の運転等により生じた原子力損害については、当該原子炉の運転に係る事業者が、その損害を賠償する責任を負うこととされている。なお、電気事業法第五十一条に基づく検査の実施その他の権限を適切に行使しなかったために事故が発生したような場合には、通商産業省においても責任を負うべきことは言うまでもない。

二の1について

 通商産業省においては、東京電力から、ベルゴ社において、MOX燃料ペレットの外径測定は品質部門で行われているところ、測定担当の人間が御指摘のような操作を行った場合、別の人間がその事実を把握することはできないと聞いている。

二の2について

 通商産業省においては、東京電力から、ベルゴ社において、福島三号機用及び柏崎刈羽三号機用MOX燃料ペレットについて、上・中・下部の三か所で外径測定することが同社の品質管理計画書に規定されていると聞いているが、その具体的な測定位置については把握していない。

二の3及び4について

 通商産業省においては、平成十二年二月二十四日に公表された東京電力の作成に係る「福島第一原子力発電所三号機並びに柏崎刈羽原子力発電所三号機用MOX燃料に関する品質管理状況の再確認結果について」と題する報告書(以下「東電報告書」という。)によれば、ベルゴ社においては、品質部門が製造部門から独立していること、MOX燃料ペレットの外径測定とその評価が別の人間によって行われていること、東京電力の社員等の立会いによる再度のMOX燃料ペレットの外径測定が行われていること、内部監査が計画的に実施されていること並びに従業員の教育及び訓練が適切に行われていることが確認されており、不正に対する抑止効果が働いていると考えていることから、御指摘の点について直接確認する必要はないと考えている。

三の1について

 東京電力及び東芝は、ベルゴ社においては、品質部門が製造部門から独立していること、MOX燃料ペレットの外径測定とその評価が別の人間によって行われていること、東京電力の社員等の立会いによる再度のMOX燃料ペレットの外径測定が行われていること、内部監査が計画的に実施されていること並びに従業員の教育及び訓練が適切に行われていることから不正に対する抑止効果が働いていると考えており、このような体制の下で行われた検査結果により、東京電力が定めたMOX燃料ペレットの外径に関する仕様(以下「仕様」という。)を満たす高い精度の円筒形の形状を有するMOX燃料ペレットを製造できると判断したものと承知しており、この判断に特段の問題はないものと考えている。

三の2について

 通商産業省においては、東京電力及び東芝は、ベルゴ社におけるMOX燃料に関する品質管理状況の再確認を行う中で、製造工程でMOX燃料ペレットの外径の全数レーザ自動計測が行われていることを、ベルゴ社が作成したレーザ計測装置認定報告書により確認したものと承知している。

三の3について

 通商産業省においては、東京電力から、レーザ計測装置認定報告書は、ベルゴ社がレーザ計測装置の機能等を確認するための社内文書であり、当該装置により計測された福島三号機用及び柏崎刈羽三号機用MOX燃料ペレットの外径の計測データが記載又は添付されたものではないと聞いていることから、その内容を確認する必要はないと考えている。

三の4について

 通商産業省においては、東京電力が、平成六年に行った工程調査の結果により、ベルゴ社において、二つの製造工程のうち、一方は抜取りによる計測、他方は全数レーザ自動計測であると理解し、このことを通商産業省に説明したことを受けて、御指摘のような説明を行っていたものであり、昨年においても、このような説明を行っていたのは、当該工程調査の後に、同社において製造工程の変更が行われ、いずれの製造工程においても全数レーザ自動計測が行われていることを把握していなかったためである。
 なお、通商産業省においては、東京電力は、MOX燃料ペレットの外径の全数レーザ自動計測は、ベルゴ社の製造工程においてMOX燃料ペレットの研削機の調整のために行われているものであるところ、このような研削機の調整方法については、ベルゴ社内で決定する事項であり、その決定に当たり東京電力の了解を得る必要がないことから、福島三号機用MOX燃料ペレットについては、福島三号機用MOX燃料ペレットに関する品質管理状況の再確認の時点までこれを把握しなかったと承知している。

三の5について

 通商産業省においては、MOX燃料ペレットの外径の全数レーザ自動計測は、ベルゴ社の製造工程における研削機の調整のために行われているものであるところ、このような研削機の調整方法については、ベルゴ社内で決定する事項であることから、東京電力がその実施を知った時期を特定する必要はないと考えている。
 なお、通商産業省においては、東京電力は、柏崎刈羽三号機用MOX燃料ペレットについて、平成十年六月以前に、二つの製造工程において全数レーザ自動計測が行われていることを知ったことから、福島三号機用MOX燃料ペレットの製造工程についてベルゴ社に確認したところ、当該MOX燃料の製造の時点から、二つの製造工程において全数レーザ自動計測が行われていることを知ったものであると承知している。また、柏崎刈羽三号機用MOX燃料ペレットについては、東京電力において、二つの製造工程において全数レーザ自動計測が行われていることを知ったことについて、直ちには同省に報告しなかったものと承知している。

四の1について

 東電報告書によれば、ベルゴ社におけるMOX燃料ペレットの抜取検査では、一ブレンダー当たり約七千個のMOX燃料ペレットから三十二個以上を抜取検査したとされている。
 ベルゴ社における一ブレンダー当たりのMOX燃料ペレット数を七千個、抜取個数を三十二個とした場合、抜取率は約〇・四五パーセントとなる。

四の2及び3について

 通商産業省においては、輸入燃料体検査では、燃料体が、技術基準に適合するか否かについて確認できるデータが提供されることが必要であると考えており、ベルゴ社の抜取検査がMIL-STD-一〇五D又は日本工業規格Z九〇一五を満たすことを要求するものではないことから、その確認をする必要はないものと考えている。

四の4について

 同一の判定基準を用いる限り、より多くの個数を抜き取り検査することは、より厳しい検査を行うことになると考えている。

四の5について

 通商産業省においては、ベルゴ社における福島三号機用及び柏崎刈羽三号機用MOX燃料の品質管理状況に関する調査については、第一次的には東京電力により実施されるべきものであると考えている。なお、通商産業省においては、ベルギーにおいて、ベルゴ社における東京電力の調査方法等の確認を行ったものである。

五の1について

 通商産業省においては、原子炉の設置及び運転に関する審査等を行うべき部局が、電気事業法第五十一条に基づく検査等の原子力発電の安全確保に関する規制を行っているところである。

五の2について

 不合格ブレンダーの数については、これを公にすることにより、ベルゴ社の競争上の地位を害するおそれがあり、また、ベルゴ社に具体的な不正の疑義があるわけでもないことから、答弁を差し控えたい。

五の3について

 通商産業省においては、東京電力から、ベルゴ社におけるMOX燃料ペレットの抜取検査については、上、中、下の三点のうち一点でも仕様を外れた場合には不合格とすると聞いている。

五の4及び5について

 通商産業省においては、柏崎刈羽三号機用の不合格ブレンダーの処理について、ベルゴ社が作成する不適合報告書に記載された処理手順どおりに行われたか否かについて直接確認していない。
 また、通商産業省においては、柏崎刈羽三号機用の不合格ブレンダーに関してのベルゴ社における御指摘のような再研削の必要性の判断、原因調査の結果及び是正措置の内容について承知していない。

五の6について

 通商産業省においては、東京電力から、ベルゴ社においては、製造部門に戻された不合格ブレンダーのMOX燃料ペレットのうち、再研削の必要がないと判断されたものについては、全数レーザ自動計測による選別を実施された後に品質部門に引き渡され、その上で品質部門が再度抜取検査を行い、改めて合否判定を行うと聞いている。その場合においては、AQL(合格品質水準)は、〇・一五パーセントに相当する検査であると考えている。

六の1について

 ベルゴ社が作成したロットごとのヒストグラムから、ブレンダーごとに行われた品質保証検査の結果を読み取ることはできないが、通商産業省においては、ブレンダーによって構成されるロットごとに、検査されたMOX燃料ペレットが仕様を満たしていることを確認することができる。

六の2について

 通商産業省においては、東電報告書にあるベルゴ社作成の千分の四ミリ単位のヒストグラムによる統計的分析により、検査されたMOX燃料ペレットが高い精度で仕様を満たしていることを確認することができる。

六の3について

 通商産業省においては、東京電力から、ベルゴ社において製造されたMOX燃料ペレットのうち、製造過程において除外された等の事由により燃料棒の製造に使用されなかったものはあるが、ブレンダーの中に含まれないものは存在していないと聞いている。

七の1について

 MOX燃料に係る輸入燃料体検査に当たっては、電気事業者に対して検査に必要な範囲で情報の提供を求めることとしているが、MOX燃料の製造等に係る個々のデータをすべて確認するのではなく、MOX燃料の製造等が適切な品質保証体制の下に行われていることを確認することが重要であると考えている。このため、本年七月、電気事業法施行規則(平成七年通商産業省令第七十七号)を改正し、事業者から品質保証計画等を記載した品質保証に関する説明書を提出させることとしたところである。この中でMOX燃料の製造時の品質保証体制及び第三者機関を活用した確認結果を明記することを求めていることから、通商産業省において、品質保証体制を適切に確認できるものと考えている。
 なお、福島三号機用MOX燃料については、電気事業法施行規則の改正前に輸入燃料体検査申請が行われていたが、その趣旨を踏まえ、東京電力から、MOX燃料の製造時の品質保証体制及び第三者機関を活用した確認結果が記載された品質保証に関する説明書の提出がなされ、通商産業省において、これを確認したところである。

七の2について

 通商産業省においては、東京電力及び関西電力からの報告に基づいて、BNFL社MOXデモンストレーション・ファシリティー(以下「MDF」という。)における高浜三号機用及び高浜四号機用MOX燃料の製造過程と、ベルゴ社における福島三号機用及び柏崎刈羽三号機用MOX燃料の製造過程の間の、MOX燃料ペレットの品質保証体制の差異について以下のとおりであったと認識している。

(1) MDFでは、品質保証に係るMOX燃料ペレット外径の測定を製造部門の職員が担当していたが、ベルゴ社では、製造部門ではなく品質部門の職員が測定を担当していた。
(2) MDFへの立会検査については、関西電力は短期間の立会検査を数回実施していたが、ベルゴ社への立会検査については、東京電力が同社向けMOX燃料の製造期間を通じて立会検査を実施していた。
(3) MDFでは、内部監査及び教育訓練については、有効に機能していなかったが、ベルゴ社では、的確に実施されていた。

 なお、MDF及びベルゴ社においては、MOX燃料ペレットの外径測定結果とその評価が別の人間によって行われていることから、この点については差異はなかったものと認識している。

七の3について

 御指摘の契約先の変更については、東京電力が行う契約に係る判断であることから、答弁を差し控えたい。