質問主意書

第147回国会(常会)

答弁書


答弁書第五二号

内閣参質一四七第五二号

  平成十二年六月三十日

内閣総理大臣 森 喜朗   


       参議院議長 斎藤 十朗 殿

参議院議員福本潤一君提出循環型社会形成推進の基礎となる環境教育・環境学習に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。


   参議院議員福本潤一君提出循環型社会形成推進の基礎となる環境教育・環境学習に関する質問に対する答弁書

一の1について

 環境教育・環境学習は、環境に関心を持ち、環境に対する人間の責任と役割を理解し、環境問題解決に資する能力を育成することを通じて、国民一人一人を具体的行動に導き、持続可能なライフスタイルや経済社会システムの実現に寄与するものであり、循環型社会の形成推進に向けて大きな意義を有するものと認識している。

一の2について

 循環型社会を実現するためには、現在の国民のライフスタイルや経済社会システムを根本的に見直し、環境への負荷の少ないものに変えていくことが不可欠である。このため、子供から高齢者までのすべての年齢層を対象とする環境教育・環境学習を総合的に推進してまいりたい。

二の1について

 学校教育における環境教育・環境学習については、児童生徒が環境問題を正しく理解し、環境を大切にする心や態度を身に付け、環境の保全やより良い環境づくりに主体的に取り組むことができるよう、小学校、中学校及び高等学校の社会科、理科、家庭科その他の教科、道徳等において、児童生徒の発達段階に即した環境に関する学習が行われている。新学習指導要領(平成十年文部省告示第百七十五号、平成十年文部省告示第百七十六号及び平成十一年文部省告示第五十八号による改正後の小学校学習指導要領、中学校学習指導要領及び高等学校学習指導要領をいう。以下同じ。)においても、各教科等に係る環境に関する内容の一層の充実を図っている。また、新学習指導要領により新設した「総合的な学習の時間」においても、体験的な学習や問題解決的な学習を通じて、環境問題について、より横断的かつ総合的に学習を深めることとしている。
 社会教育その他の多様な場における環境教育・環境学習については、地球環境パートナーシッププラザ、自然公園のビジターセンター等の環境教育・環境学習の拠点を整備しているほか、公民館等において、環境問題に関する各種の講座が開設されている。また、こどもエコクラブ事業、子どもパークレンジャー事業、グリーン購入フェア等を通じて様々な環境教育・環境学習の機会を提供している。また、環境カウンセラー登録制度、自然解説指導者育成事業、国及び地方公共団体の環境行政担当職員を対象とした研修等により環境教育・環境学習に関する人材の育成及び確保を図っているところである。

二の2について

 環境教育・環境学習に関しては、各省庁がそれぞれの所掌の分野において様々な施策を展開するとともに、関係省庁の連携による共同事業等を行ってきており、今後とも、関係省庁の連携の強化に努めてまいりたい。
 また、「これからの環境教育・環境学習-持続可能な社会を目指して-」(平成十一年十二月二十四日中央環境審議会答申)において、環境教育・環境学習の実施に当たっては、地域に根ざし、地域から広がるものであるという視点が重視されるべきであるとされている。今後は、各地方公共団体が民間団体、企業等と連携を図りながら、それぞれの地域の特色に応じた環境教育・環境学習を推進することが重要であり、政府としては、これを支援するための基盤整備に努めてまいりたい。

二の3について

 個人は、家庭、地域社会、学校、職場等の様々な場に属しながら生活している。このため、環境教育・環境学習の実施に当たっては、必要に応じ、学校教育の場で家庭や地域の人々の協力を得る等、様々な場において国又は地方公共団体以外の様々な個人、団体等の協力を得ることが重要であると考えている。

二の4について

 各大学においては、環境問題の重要性にかんがみ、環境に関連する特色ある学部及び学科並びに大学院の研究科の整備充実が行われてきており、これらの学部等において、環境関連の教育研究や専門家の育成が図られている。国立大学においても、平成十二年度に、三重大学の生物資源学部に共生環境学科を新設し、筑波大学の大学院に生命環境科学研究科を新設する等、環境問題に関する教育研究体制の整備充実を図ってきているところである。
 今後とも、各大学の検討状況、行財政事情等を総合的に勘案しつつ、必要な人材育成に努めてまいりたい。

二の5について

 循環型社会の構築のためには、事業者自らが循環型社会における事業活動の在り方を十分に認識し、事業活動を自主的に改善していくことが重要である。
 このため、ISO一四〇〇一(平成八年に国際標準化機構が制定した環境マネジメントシステムに関する国際規格)の普及、環境への負荷の自己評価等の取組を進めるための環境活動評価プログラムの普及、環境カウンセラーの育成等を進めているところである。

二の6について

 各事業者が環境保全活動を進めていく上では、従業員の環境教育・環境学習が重要である。
 このため、ISO一四〇〇一においては各事業者の環境方針等に関する従業員の訓練及び自覚の維持が盛り込まれており、また、環境活動評価プログラムにおいて環境教育を推奨し、従業員の環境教育に資する意味も含めて事業者による環境報告書の作成及び公表を促進しているところである。

三の1について

 排出者責任の考え方は、循環型社会の形成を推進する上で重要な視点であり、循環型社会形成推進基本法(平成十二年法律第百十号)第十二条において、国民の排出者責任として、分別回収への協力等の責務が規定されているところである。
 これらの責務について国民の理解と協力を得るため、同法第二十七条において、国は循環型社会の形成に関する教育及び学習の振興並びに広報活動の充実のために必要な措置を講ずるものとする旨が規定されている。政府としては、環境教育・環境学習の拠点の整備、様々な環境教育・環境学習の機会の提供、循環型社会の形成に関するパンフレットの作成及び配布等の措置を講じてきており、今後とも、排出者責任について国民の理解を深めるため、必要な措置を講じてまいりたい。

三の2について

 事業者の排出者責任及び拡大生産者責任の考え方は、循環型社会の形成を推進する上で重要な視点であり、循環型社会形成推進基本法第十一条において、事業者の責務として、循環資源の循環的な利用や処分を適正に行う責務、廃棄物等の排出抑制のために設計の工夫や材質の表示を行う責務等が規定されているところである。
 事業者の排出者責任を踏まえた具体的な措置としては、廃棄物の処理及び清掃に関する法律(昭和四十五年法律第百三十七号)等の制定が、また、拡大生産者責任を踏まえた具体的な措置としては、資源の有効な利用の促進に関する法律(平成三年法律第四十八号)、容器包装に係る分別収集及び再商品化の促進等に関する法律(平成七年法律第百十二号)等の制定が行われている。事業者に対してこれらの法律により具体的な義務が課されることによって、排出者責任又は拡大生産者責任を踏まえた取組を自らの事業活動に組み入れていこうという意識が喚起され、排出者責任及び拡大生産者責任についての認識と自覚が深められていくものと考えている。
 また、これらの責務について事業者の理解と協力を得るため、循環型社会形成推進基本法第二十七条において、国は循環型社会の形成に関する教育及び学習の振興並びに広報活動の充実のために必要な措置を講ずるものとする旨が規定されている。政府としては、各地域の事業者団体への説明、循環型社会の形成に関するパンフレットの作成及び配布等の措置を講じてきており、今後とも、排出者責任及び拡大生産者責任について事業者の認識と自覚を深めるため、必要な措置を講じてまいりたい。

四について

 ドイツにおいては、学校教育の分野では各州独自に環境教育・環境学習が実施され、社会教育の分野では各種環境教育施設において環境教育・環境学習が実施されており、また、環境教育施設の全国組織も設立されている。アメリカにおいては、平成二年に制定された国家環境教育法により、環境保護庁に環境教育局が設立され、環境に関する教育及び訓練プログラムの開発、その実施に係る補助金の交付等の施策が推進されている。また、平成九年に国際連合教育科学文化機関(UNESCO)等により開催された「環境と社会に関する国際会議」においては、テサロニキ宣言が採択され、各国政府等に対して持続可能な未来を達成するための教育に関して必要な取組を行うよう勧告がなされている。
 平成五年に国際社会調査プログラム(ISSP)によって二十か国を対象として行われた環境問題に関する各国民の意識調査によれば、環境を守るためなら値段の高い品物でも買うつもりがあるとする者の割合は、我が国とアメリカ、イギリス及びドイツとの間で大差はなく、また、リサイクルのために廃棄物の分別を心掛けている者の割合は、ドイツは我が国より高く、アメリカ及びイギリスは我が国より低かった。
 事業者の取組に関しては、平成七年から欧州連合規則に基づく環境管理・監査制度が実施されており、この制度に任意に参加した事業者が、環境マネジメントシステムの構築、環境監査の実施、環境声明書の作成等に取り組んでいる。