第147回国会(常会)
答弁書第四九号
内閣参質一四七第四九号 平成十二年六月二十日 内閣総理大臣 森 喜朗
参議院議員福島瑞穂君提出護衛艦さわぎり艦内での隊員自殺事件についての調査委員会報告書に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。 参議院議員福島瑞穂君提出護衛艦さわぎり艦内での隊員自殺事件についての調査委員会報告書に関する質問に対する答弁書 一について 平成十一年十一月八日に護衛艦「さわぎり」艦内で発生した隊員の自殺事故(以下「本件事故」という。)に係る一般事故調査委員会(以下「調査委員会」という。)作成の「護衛艦「さわぎり」の一般事故調査結果」と題する報告書(以下「報告書」という。)に記述した本件事故の発生場所と、本年二月二十一日の海上自衛隊佐世保地方総監部(以下「佐世保地方総監部」という。)による発表の際の本件事故の発生場所は、同じ地点を表しているものである。両者で表現が異なったのは、発表においては、場所がイメージされやすくするために「土佐沖」と表現したのに対して、報告書においては、これが海上幕僚長に報告することを目的として作成されたものであるため、起点を設定して方角や距離を表示するという、海上自衛隊内で通常使用している表記法により記述したからである。
二について 報告書の二ページの(ウ)の記述は、平成十一年十一月七日の当直終了後、自殺した隊員(以下「事故者」という。)が、普段と変わりなく同僚と将棋を指していたという調査の結果を記述したものである。
三について 事故者は、平成十一年十一月六日の午後十時から翌七日の午前四時までは、非番であった。同日の午前四時から午前八時までは、機関科の当直員として当直勤務に従事した。同日の午前八時から午後三時までは、非番であった。同日の午後三時から午後六時までは、機関科の当直員として当直勤務に従事した。同日の午後六時から翌八日の午前零時までは、非番であった。同日の午前零時から午前四時までは、機関科の当直員として当直勤務に従事した。同日の午前四時からは、非番であり、その後、午前十時一分ころ、事故者が右舷軸室で発見された。なお、事故者は、同月七日から八日にかけては、訓練には参加していない。
四について 報告書の一ページから二ページまでに記述しているとおり、平成十一年十一月三日の佐世保港出港から同月七日の午後六時までの間、事故者は、「当直時間外に操縦室及び機関科事務室等で勉強している姿が数回目撃されているほかは、生活態度等、別段変わるところは無かった。」ので、報告書には、この間の事故者の訓練日程を記述しなかったものである。また、同日の午後六時以降は、事故者が参加する訓練はなかった。 五について 本件事故が発生した具体的な時間は特定できないが、本件事故は、事故者が最後に目撃された平成十一年十一月八日の午前八時五十五分ころから、右舷軸室で発見された同日の午前十時一分ころまでの間に発生したと考えられるところ、御指摘の事故者の直接の上司である「P班長」は、この間、食堂及び自らの居住区におり、本件事故の発生後、当該居住区にいたところを電話で呼ばれたものである。 六について 御指摘の「副長N」は、御指摘のようなことを遺族に語ってはいないと述べている。
七について 調査委員会においては、機関科Lが、事故者を呼びに行った際にまず事故者の居住区に行ったことについて、乗員は非番であれば居住区で休憩しているのが普通であり、また、当時事故者が自殺するとは思ってもいなかったことから、事故者が居住区にいるものと思って、最初に居住区に捜しに行ったものと判断している。 八について 機関科Lは、平成十一年十一月九日、遺族に対し、事故者に「変な事を考えるなよ。」と言ったことは述べたが、それ以外の御指摘のようなことは語っていないと述べており、調査委員会においても、それが事実であったと判断している。 九について 警務隊は、平成十一年十一月九日の午前七時五十五分から午前九時二十五分までの間は、事故者の検視を行い、同日の午前九時三十分から午前十一時三十分までの間は、事故者の自殺の動機に関し、「さわぎり」の乗員に対する事情聴取等の調査を行い、同日の午前十一時五分から午前十一時二十五分までの間は、右舷軸室の実況見分を行った。
一〇について 副長Nは、平成十一年十月二十九日の分隊整列時に、当直員を除き、事故者を含めた「さわぎり」の乗員全員に対し、翌三十日に電話連絡網の確認を目的として警急呼集訓練を実施すること及び同訓練は電話連絡ができた時点で別段の命令なく訓練終了とすることを指示し、当直員に対しては、その後、各分隊を通じてこれを示達した。
一一について 平成十一年十月三十日、「さわぎり」は警急呼集訓練(電話連絡網の確認)を実施したが、事故者は電話連絡網において一番最後に連絡を受けた。
一二について 調査委員会においては、警急呼集訓練(電話連絡網の確認)の問題については、当直士官の指示内容が事故者に正確に伝わらず、誤解を生む結果となったものであるが、事故者への直接の連絡者であるW及び事故者の注意及び理解が不十分であったことが原因であると考えており、事故者の訓練に関する熱意とは関係のないものと考えている。 一三について 御指摘の事故者の手帳については、自殺と関連する記述がないかを確認するために、平成十一年十一月八日の午前中、副長Nが、数分間にわたり、二冊の手帳を調べ、また、同日の夜、副長Nの命を受けた応急長の指示により、P班長及びWが、数分間にわたり、二冊の手帳を調べ、さらに、翌九日、警務隊の二人の警務官が、事故者の遺品を調査した際、数分間にわたり、二冊の手帳を調べたが、いずれの者もページが切り取られていることには気が付かなかったと述べている。
一四について 平成十一年度護衛艦さわぎり教育訓練等計画(さわぎり般命第六十八号)は、「さわぎり」における監理、情報、教育訓練、造修等に関する平成十一年度の計画を定めたものであり、教育訓練関係部分の概要は別紙2のとおりである。
一五及び一六について 自衛隊においては、隊員の悩みについて、個人面接及び管理者による観察等により心身の状況を把握し、上司、先輩等が一体となって親身に問題の解決に当たるよう指導している。また、カウンセリング制度を採り入れ、さらに、自己の受けた取扱いが不法・不当であると考えるときは、苦情受理者として指定されている各部隊等の長にその旨を申し出て、不法・不当な取扱いの是正その他の苦情の救済を求めることができる苦情処理制度を設けている。
一七について 調査委員会においては、御指摘の「H班長」及びP班長の勤務状況等についても調査を行い、両名とも上司、部下の信頼も厚く、御指摘のような「いじめ」をする人物ではないと評価しているが、防衛庁においては、その具体的な内容については、個人のプライバシーに係わる事項であることから、公表は差し控えることとした。 一八について 調査委員会においては、P班長の事故者に対する指導内容について、「いじめ」に該当するような指導が行われたか否かの観点から、P班長を含む多数の関係者からの聞き取り調査を行い、報告書の三十八ページを中心にその結果を記述しているところであって、P班長の指導内容についても十分な調査を行ったものと考えている。 一九について 調査委員会においては、平成十一年十一月二十六日に事故者の妻の実家に出向き、事故者の妻及びその両親から約四時間半にわたって聞き取り調査を行い、また、翌二十七日には、事故者の実家に出向き、事故者の両親等から約二時間半にわたって聞き取り調査を行ったものであるが、調査委員会による調査は、これらの聞き取り調査の際、遺族から訴えのあった、事故者に対する酒の要求、差別用語の使用、職務上の過度の要求又は指導等の「いじめ」に関して、そのような事実の有無を明らかにすることを中心に行われたものである。
二〇について 佐世保地方総監部においては、事故者の自殺に関し、遺族から、当該自殺の原因が「いじめ」であったとの訴えが行われたことなどから、平成十一年十一月十六日に調査委員会を設置し、約三か月間をかけて、遺族からの聞き取り調査を行うとともに、職務上の上司、同僚等の部隊関係者等から事情聴取を行うなど、徹底した調査を実施したものであり、本件事故に関し、再調査を行う必要性はないと考えている。
別紙二 平成11年度護衛鑑さわぎり教育訓練等計画(さわぎり般命第68号)教育訓練関連部分の概要 1/2 別紙二 平成11年度護衛鑑さわぎり教育訓練等計画(さわぎり般命第68号)教育訓練関連部分の概要 2/2 別紙三 護衛鑑さわぎり教育訓練実施細則(平成7年さわぎり達第2号)の概要 別紙四 平成11年度機関科教育訓練計画(機関長命令第11-2A号)の概要 1/2 別紙四 平成11年度機関科教育訓練計画(機関長命令第11-2A号)の概要 2/2 別紙五 護衛檻さわぎり技能訓練シラバス実施要領の標準(案)に関する達(平成10年さわぎり達第3号)の概要 1/3 別紙五 護衛檻さわぎり技能訓練シラバス実施要領の標準(案)に関する達(平成10年さわぎり達第3号)の概要 2/3 |