質問主意書

第147回国会(常会)

答弁書


答弁書第三九号

内閣参質一四七第三九号

  平成十二年六月二十日

内閣総理大臣 森 喜朗   


       参議院議長 斎藤 十朗 殿

参議院議員櫻井充君提出介護現場におけるアロマセラピーの臨床実践に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。


   参議院議員櫻井充君提出介護現場におけるアロマセラピーの臨床実践に関する質問に対する答弁書

一について

 平成九年度の厚生科学研究費補助金により行われた「健康保養医学の健康増進効果に関する精神・神経・内分泌・免疫学的評価に関する研究」において、一定の香りのある環境での休憩が作業能率の低下の抑制に有効であった旨の報告がなされていることは承知しているが、お尋ねのアロマセラピー一般については、いまだその定義が確立されておらず、その医学的効果も明らかではないと認識している。

二について

 医療とは、一般に、疾病の治療を中心として、疾病の予防のための措置及びリハビリテーションを含むものであると考えられているところであるが、お尋ねのアロマセラピーについては、その定義及び治療効果に関する医学的評価が確立されておらず、医療であるかどうかを判断することは困難である。

三について

 医師法(昭和二十三年法律第二百一号)は、医師以外の者が、医業(医行為(医師の医学的判断及び技術をもってするのでなければ人体に危害を及ぼし、又は危害を及ぼすおそれのある行為をいう。)を業とすることをいう。)を行うことを禁止し、また、保健婦助産婦看護婦法(昭和二十三年法律第二百三号)は、保健婦、助産婦、看護婦又は准看護婦以外の者が、診療の補助行為を業として行うことを禁止している。
 お尋ねのアロマセラピーが医行為又は診療の補助行為に該当するのであれば、医師又は看護婦等の資格を有する者のみが業として行うことができることとなるが、アロマセラピーが医行為又は診療の補助行為に該当するかどうかについては、アロマセラピーの定義が明らかにされた上で具体的行為に基づいて判断すべきものであるので、その定義が確立されていない現時点において、アロマセラピーを業として行うに当たり医師又は看護婦等の資格が必要かどうかを一概に判断することはできない。
 また、新たにアロマセラピーを業として行う資格を設けることについては、アロマセラピーが医行為又は診療の補助行為に該当するかどうかが明らかでなく、その治療効果に関する医学的評価が確立されていない現時点において、検討を行う考えはない。

四及び五について

 精油(植物から抽出される芳香性かつ揮発性を有する油をいう。)の一部には、香料等として医薬品に使用されているもの又は健胃作用等の薬理作用を示すものがあり、薬事法(昭和三十五年法律第百四十五号)第四十一条に規定する日本薬局方(平成八年三月十三日厚生省告示第七十三号)に収載されているが、これらについては、使用目的が食品用等に限定される場合を除き、同法第二条第一項に規定する医薬品に該当する。
 また、御指摘のような「精油自体が持つ抗菌力・免疫力等により未病・予防環境が整う等」の効能又は効果を標榜するものは医薬品に該当すると考えられるが、このような効能又は効果を有する医薬品は承認されていない。
 さらに、精油には、医薬品、同法第二条第二項に規定する医薬部外品又は同条第三項に規定する化粧品の原料として使用されているものがある。
 これら以外の精油については、品質及び性質を承知していない。

六について

 医薬品に該当する精油を医業、診療の補助又は薬剤師法(昭和三十五年法律第百四十六号)に規定する調剤に用いる場合にあっては、医師、保健婦、助産婦、看護婦、准看護婦又は薬剤師が取り扱う必要があるが、これら以外に、精油を取り扱うに際しての資格制度はなく、また、新たな資格制度を設ける考えもない。

七について

 医薬品に該当する精油については、薬事法第十四条第一項の規定に基づき製造の承認の申請があった場合に、必要な審査等を行うこととしており、精油一般について安全基準等のガイドラインを策定する考えはない。

八について

 痴呆性高齢者に対する介護技術に関する研究、研修等を行うことを目的として、現在、三か所の「高齢者痴呆介護研究センター」(以下「センター」という。)を整備しているところであり、平成十三年度から本格的に事業を開始する予定としている。
 センターにおいては、併設する特別養護老人ホーム、老人保健施設等を活用して、介護サービスの提供現場における臨床的な研究を積極的に進めることとしており、具体的な研究課題については、お尋ねのアロマセラピーも含め、各センターに設置される運営協議会を中心に今後検討されることとなる。