質問主意書

第147回国会(常会)

答弁書


答弁書第三三号

内閣参質一四七第三三号

  平成十二年六月九日

内閣総理大臣 森 喜朗   


       参議院議長 斎藤 十朗 殿

参議院議員福島瑞穂君提出ジェット練習機墜落事故と市街地上空での自衛隊機の飛行に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。


   参議院議員福島瑞穂君提出ジェット練習機墜落事故と市街地上空での自衛隊機の飛行に関する質問に対する答弁書

一について

 防衛庁においては、本年四月二十六日、御指摘のT-33A墜落事故に係る航空事故調査報告書(以下「航空事故調査報告書」という。)の概要を公表し、その際、事故機の飛行経路も明らかにしているところであるが、事故機のマイナートラブル発生の通報時から墜落時までの飛行経路は、別紙1のとおりである。また、航空事故調査報告書によれば、事故が発生した際の事故機の飛行については、航空自衛隊入間基地(以下「入間基地」という。)から運輸省が発行するAIP(航空路誌)により情報として提供されているH訓練空域まで及び同訓練空域から入間基地までを計画飛行経路とし、有視界飛行方式により、十三時零分に入間基地を離陸すること等が計画されていた。
 事故当日における事故機以外の入間基地所属機及び入間飛行場を離着陸した関係基地所属機については、これらの飛行経路をすべて明らかにすることは、技術上不可能であるので、答弁することは困難であり、また、これらの飛行計画をすべて明らかにすることは、自衛隊の練度等が明らかになるおそれがあるので、事柄の性質上、答弁することは差し控えたい。
 事故機の事故原因については、事故調査において回収された器材の調査を行った結果、主燃料コントロールユニット及び緊急燃料コントロールユニット付近にある燃料ホース又はフィッティングの一部から漏洩した燃料がこれらの燃料コントロールユニット付近で発火し、同ユニットを加熱、溶融させたことにより、エンジンへの燃料供給が絶たれ急激に事故機の推力が低下したと推定したところであるが、燃料ホース又はフィッティングから燃料が漏洩した原因については、回収した燃料ホース等が著しく焼損しており、燃料漏洩の有無を含め特定するには至らず、また、発火源については、エンジン室内の機器に接続されている電気配線の漏電又はコネクターの短絡の可能性が考えられるが、これらも焼失していたため、特定するには至らなかった。

二について

 御指摘の「一キロメートルのスパンで表示した機種ごとの詳細なフライトコースプラン図」がいかなるものを指すのか明らかではないが、航空自衛隊において調査した限りでは、御指摘の図面の存否及び入間市への提供の有無を含め、事実関係は確認できなかった。
 なお、御指摘のような図面ではないが、有視界飛行方式で飛行する航空機が入間飛行場に着陸する場合に現在目安としている場周経路を図面に示すことは可能であり、これは別紙2のとおりである。

三について

 御指摘の「緊急避難地域」がいかなるものを指すのか明らかではないが、仮に、自衛隊の使用する航空機(以下「自衛隊機」という。)に緊急事態が発生した場合に同機が指向すべき場所を指すのであれば、自衛隊においては、御指摘の「入間川河川敷」を含め、具体的な地域をそのような場所として設定している事実はない。

四について

 航空機の運航に関する訓令(昭和三十一年防衛庁訓令第三十四号)第二十八条である。

五について

 平成五年三月に小平市当局に対して入間基地が回答したものとして現在残っている記録は一件だけであるが、当該記録においては、御指摘のような具体的な飛行高度を回答したとの事実は記されていない。
 小平市上空には、計器飛行方式で飛行する航空機が入間飛行場に着陸するための、地上から発した電波により方位及び距離情報を提供する戦術航法装置(以下「タカン」という。)による進入方式が、昭和五十六年五月以来設定されており、この進入方式では、入間飛行場に設置されているタカンから八海里の地点(小平市近傍)での飛行高度は海抜二千五百フィート以上とされている。
 また、自衛隊機は、航空法(昭和二十七年法律第二百三十一号)の最低安全高度に関する規定等を遵守し、安全に配慮しつつ飛行を行っているところであり、小平市上空における入間基地所属の自衛隊機についても同様である。

六について

 航空事故調査報告書においては、T-33Aの飛行を再開する場合の再発防止策として、燃料供給系統等の信頼性の向上、火災警報システムの信頼性の向上及び緊急射出時の安全性の向上が挙げられたところであるが、これらの実施について検討した結果、現存するT-33Aについては全機使用しないこととしたところである。
 御指摘の「市街地周辺での低高度での飛行訓練」が、入間飛行場に離着陸する自衛隊機の飛行を指しているのであれば、航空機が飛行場に離着陸する際には低高度で飛行する必要があるが、自衛隊においては、周辺の航空交通の状況、地上の障害物の高さ等を勘案して飛行場ごとに場周経路を設定する等により、離着陸の安全を確保しつつ飛行を行っているところである。
 また、自衛隊においては、航空法の最低安全高度に関する規定等を遵守し、安全に配慮しつつ、市街地等の上空を極力避けた飛行経路により、飛行訓練を行っているところであり、今後とも飛行の安全の確保に最大限の努力を傾注してまいりたい。

別紙一 異常発生時から墜落時までの飛行経路

別紙二 入間飛行場に係る場周経路図(イメージ図)