質問主意書

第147回国会(常会)

答弁書


答弁書第二八号

内閣参質一四七第二八号

  平成十二年五月十九日

内閣総理大臣 森 喜朗   


       参議院議長 斎藤 十朗 殿

参議院議員照屋寛徳君提出ジュゴンの生息環境保全等に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。


   参議院議員照屋寛徳君提出ジュゴンの生息環境保全等に関する質問に対する答弁書

一について

 全国の藻場、干潟及びサンゴ礁の状況を把握する調査は、自然環境保全法(昭和四十七年法律第八十五号)第四条に基づく自然環境保全基礎調査の一環として、我が国沿岸域における生物の生息地として重要な存在である藻場、干潟及びサンゴ礁の分布状況及び消滅状況を把握することを目的として実施したものである。昭和五十三年度から二年間の調査は合計約一億四千万円、また、平成元年度から五年間の調査は合計約二億円の予算額をもって実施した。
 本調査において、藻場は、水深二十メートル以浅の沿岸域に分布する面積一ヘクタール以上のすべての藻場(海草藻場を含む。以下同じ。)を対象としており、沖縄本島周辺における調査では、海草藻場が対象となっている。
 なお、本調査は、全国の藻場等の分布状況及び消滅状況の把握を主な目的としたものであり、個々の藻場の価値に関する評価は行っていない。

二について

 ジュゴンが絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約(昭和五十五年条約第二十五号)附属書Iの掲載種であることは承知しているが、ジュゴンの日本近海における分布及び生態に関する調査研究はいまだ十分とはいえず、ジュゴンの絶滅のおそれについては、今後の知見の集積を待つ必要があると考えている。

三について

 ジュゴンに関する現地調査の必要性を否定するものではないが、現時点においては、全国的な分布及び生態に関する知見や資料が少なく、地域に即した効果的な調査手法の設定が困難な状況にあるため、直ちに広域的調査を行うことは困難であるとの趣旨である。

四について

 環境庁においては、ジュゴンに関する分布、生物学的特徴、捕獲等の人為的影響等に関する国内外の研究論文、雑誌、新聞記事等の収集を行ったところであり、その内訳は、国内の論文十七件、国外の論文八十五件、その他六十件である。

五について

 絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律(平成四年法律第七十五号)第三十六条においては、国内希少野生動植物種の保存のため必要があると認めるときは、その個体の生息地又は生育地及びこれらと一体的にその保護を図る必要がある区域の中から生息地等保護区を指定することができる旨が規定されている。ジュゴンについては、その生息状況についての十分な知見が得られておらず、同法に基づく国内希少野生動植物種への指定は困難であり、したがって、生息地等保護区を指定することもできない。

六について

 お尋ねのやんばる地域の国立公園への指定に当たっては、その自然を保護するとともに、沖縄北部地域の活性化に資することが重要であると考えており、具体的方策の検討を通じて、地元の合意形成を図っていくことが今後の課題であると考えている。
 国立公園の指定時期については、沖縄に関する特別行動委員会最終報告に基づき北部訓練場の過半が返還される予定の平成十四年度末以降を目途としている。また、国立公園の区域については、返還地域を含む山岳部を中心とした地域を想定しているが、具体的な範囲については、今後、沖縄県及び地元市町村と協議しながら検討してまいりたい。

七について

 平成十年四月に沖縄県名護市議会から、辺野古キャンプ・シュワブ沖におけるジュゴン及びウミガメの生態調査と周辺海域の環境調査の実施に係る要請を、また、平成十二年一月に「ジュゴンネットワーク沖縄」から、ジュゴンの生息実態の把握に関する調査の実施に係る要請を受けているところであるが、三についてで述べたとおり、直ちに広域的調査を行うことは困難と考えている。