質問主意書

第147回国会(常会)

答弁書


答弁書第二五号

内閣参質一四七第二五号

  平成十二年五月十六日

内閣総理大臣 森 喜朗   


       参議院議長 斎藤 十朗 殿

参議院議員清水澄子君提出原子力エネルギーの経済性に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。


   参議院議員清水澄子君提出原子力エネルギーの経済性に関する質問に対する答弁書

一について

 平成六年四月十四日の第三十五回電気事業審議会需給部会に提出した原子力、一般水力、石油火力、LNG(液化天然ガス)火力及び石炭火力の発電原価試算(以下「平成六年試算」という。)では、発電所の運転年数を、原子力については十六年、一般水力については四十年、石油火力、LNG火力及び石炭火力については十五年に設定するとともに、発電所の設備利用率を、一般水力については四十五パーセント、その他の電源については七十パーセントに設定している。
 一方、昨年十二月十六日の第七十回総合エネルギー調査会原子力部会に提出した資料(以下「第七十回部会資料」という。)における原子力発電の経済性試算(以下「平成十一年試算」という。)では、最近の原子力発電所の稼働状況等を勘案して条件を設定しているところである。具体的には、すべての電源について、発電所の運転年数を四十年に設定するとともに、発電所の設備利用率を、原子力、石油火力、LNG火力及び石炭火力については八十パーセント、一般水力については四十五パーセントに設定しているところである。
 平成十一年試算において、発電所の運転年数及び設備利用率を、平成六年試算において使用したものと同じものとして計算した場合、各電源の発電原価は、第七十回部会資料に記載しているとおり、いずれもキロワットアワー当たり、原子力にあっては八・五六円、一般水力にあっては十三・六三円、石油火力にあっては十一・三四円、LNG火力にあっては七・五七円、石炭火力にあっては九・〇四円である。

二について

 各電源の建設費用は、いずれもキロワット当たり、原子力については二十九万千円、一般水力については七十五万七千円、石油火力については二十八万四千円、LNG火力については二十万三千円、石炭火力については三十万三千円としているところである。

三について

 平成十一年試算においては、平成六年試算と同様に、いずれの電源についても、一定の期間発電所が運転するとの仮定の下、発電のために毎年必要となる経費を運転開始時点の価格に換算した総経費と、発電によって得られる毎年の収入を運転開始時点の価格に換算した総収入とが等しくなるように発電原価を決定している。具体的には、毎年の資本費、運転維持費及び燃料費を合計して得た値を運転開始時点の価格に換算したものを合計した総経費を、毎年の送電端電力量(発電所において発生した電力量からその発電所内の補助機等に使われる電力量を差し引いた、実際に送り出される電力量)を運転開始時点の価値に換算したものを合計した総発電電力量で除して発電原価を得ている。
 また、資本費、運転維持費及び燃料費については、これらを構成する費目ごとの費用を積み上げて算出しているところである。

四について

 三についてで述べたとおり、原子力以外の各電源についても、資本費、運転維持費及び燃料費については、これらを構成する費目ごとの費用を積み上げて算出しているところであり、具体的には、資本費については、減価償却費、固定資産税、事業報酬等の各費用を積み上げ、また、運転維持費については、修繕費、諸費、給料手当等の各費用を積み上げているところである。
 原子力以外の各電源の資本費、運転維持費及び燃料費は、いずれもキロワットアワー当たり、一般水力にあっては、それぞれ十一・六円、二・〇円及び〇円、石油火力にあっては、それぞれ二・二円、一・五円及び六・五円、LNG火力にあっては、それぞれ一・五円、一・一円及び三・八円、石炭火力にあっては、それぞれ二・四円、一・五円及び二・六円である。

五について

 平成十一年試算における核燃料サイクルの各工程の取扱い燃料量当たりの単価は、別表のとおりである。
 なお、経済協力開発機構原子力機関の試算等において核燃料サイクルコストを含めて原子力発電の発電原価が算出されているところであるが、その際にはキロワットアワー当たりの金額で発電原価が表示されていることに加え、平成十一年試算においても、他の電源についてはキロワットアワー当たりの金額で発電原価を示していることから、原子力発電の発電原価についても同様の表示方式を採用したところである。

六について

 第七十回部会資料における「廃棄物処理・処分」の中には、再処理に伴い発生する高レベル放射性廃棄物の貯蔵・処分に係る費用及び再処理に伴い発生するその他の廃棄物の処理・貯蔵・処分に係る費用が含まれており、それ以外の費用は含まれていない。
 御指摘の第七十回部会資料四ページの「その他廃棄物」は、再処理に伴い発生する廃棄物のうち高レベル放射性廃棄物以外のものを示しており、その処理、貯蔵及び処分に係る費用は、いずれもキロワットアワー当たり、それぞれ〇・〇五円、〇・〇二円及び〇・〇三円である。
 なお、「廃棄物処理・処分」の中に含まれていない廃棄物処理関連費用としては、運転中廃棄物の処理・処分に係る費用及び解体放射性廃棄物の処理・処分に係る費用がある。前者は、「運転維持費」の中の諸費に含まれているが、当該諸費は、これに加え、消耗品費、賃借料、損害保険料等からなり、その合計はキロワットアワー当たり〇・六〇円である。後者は、キロワットアワー当たり〇・〇二円であり、これは資本費に含まれている。

七について

 平成十一年試算の結果から、原子力発電の経済性は、平成六年試算の際の結論と同様に、引き続き、他の電源との比較において遜色はないものと考えられる。
 なお、発電コストは諸条件によって変化することから、平成十一年試算の結果もあくまで一定の条件の下でのものであることに留意することが必要ではあるが、近年、原子力発電所の設備利用率が向上していることに加え、原子力発電が他の化石燃料電源と比較して為替レートや燃料費の上昇による影響を受けにくいことは考慮に入れられるべきであると考えている。
 これらの点については、総合エネルギー調査会原子力部会の各委員により、試算方法を詳述するとともに諸条件を変化させた場合の試算結果についても明示した第七十回部会資料を踏まえ、真摯かつ積極的に御審議をいただいたものであり、現段階において、平成十一年試算の結論は適切なものであると考えている。

別表 1/2

別表 2/2