質問主意書

第147回国会(常会)

答弁書


答弁書第二一号

内閣参質一四七第二一号

  平成十二年五月二十六日

内閣総理大臣 森 喜朗   


       参議院議長 斎藤 十朗 殿

参議院議員福島瑞穂君提出拘禁施設における革手錠及び保護房使用に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。


   参議院議員福島瑞穂君提出拘禁施設における革手錠及び保護房使用に関する質問に対する答弁書

一について

 御指摘の判決は、当該事案の具体的な状況の下においては、両手後ろの方法による革手錠の使用及びその継続は、刑務所長にゆだねられた裁量権の範囲を超え、又はその濫用があったものとして、違法の評価を免れないものというべきであるとしたものであるが、政府としても、同判決の指摘を謙虚に受け止め、革手錠の使用について、より一層の適正な運用に努めているところである。

二について

 御指摘の時期に松江刑務所浜田拘置支所の保護房に収容されていた受刑者が死亡した事実はあり、現在、本件事故に関し、国を被告とする損害賠償請求訴訟が松江地方裁判所に係属中であるが、現時点では、右受刑者に、通常では予見できない何らかの急性症状が発症し、その身体が急激に悪化し、死亡するに至ったものであると考えている。
 政府としては、被収容者が、逃走、暴行・傷害、自殺・自傷等に及ぶおそれなどがあり、かつ、一般の居房に収容することが不適当と認められる場合に限り、その者を保護房に収容することができると考えており、また、保護房への収容に当たっては、事態に応じ、その目的を達成するため合理的に必要と判断される限度を超えてはならないと考えている。

三について

 御指摘の最終見解については、市民的及び政治的権利に関する国際規約(昭和五十四年条約第七号)第二十八条に基づいて設置された人権委員会の意見として謙虚に受け止めている。しかしながら、従来から、革手錠の使用については、事態に応じ、その目的を達成するため合理的に必要と判断される限度を超えることのないように努め、残虐又は非人道的取扱いにならないよう配慮しているところである。
 現時点では、革手錠の使用が必要とされるような場合において、革手錠を使用した場合と同程度に戒護の目的を達成し得る他の方法が見当たらないので、革手錠の使用を廃止することは困難である。
 平成二年から平成十一年までの各年ごとの革手錠の使用件数及び保護房への収容件数は、別表一のとおりである。
 革手錠の使用又は保護房への収容については、従来から、事態に応じ、その目的を達成するため合理的に必要と判断される限度を超えることのないよう努めてきたところであり、平成二年以降においても、行刑施設の処遇部門の責任者等を集めた協議会等において、適正な運用に努めるよう周知徹底してきたところであるが、それ以外にも、平成十一年十一月一日、革手錠等の使用及び保護房への収容について、より一層の適正な運用を図るため、従来のこれに関する通達に代えて、新たに法務省矯正局長から各行刑施設の長等に対し、通達を発出した。その主な内容は、戒具使用中又は保護房収容中の者については、綿密かつ頻繁に視察し、その動静を的確に把握するとともに、進んで精神の安定を図るための働き掛けを試み、早期に解除できるよう努めること、保護房に収容されている者に対しては、保護房収容のみでは、逃走、暴行又は自殺を抑止できないと認められる場合に限り、戒具を使用することができること等について改めて徹底するなどしたものである。

四について

 御指摘の各行刑施設における、平成二年から平成十一年までの各年ごとの、革手錠の使用件数及び保護房への収容件数は別表二の一及び二の二のとおりであり、革手錠使用及び保護房収容の事由別件数は別表三の一の一から三の八の二までのとおりであり、革手錠使用の態様別件数は別表四の一から四の八までのとおりである。

別表一

別表二の一 革手錠の使用件数

別表二の二 保護房への収容件数

別表三の一の一 府中刑務所における革手錠使用の事由別件数

別表三の一の二 府中刑務所における保護房収容の事由別件数

別表三の二の一 横浜刑務所における革手錠使用の事由別件数

別表三の二の二 横浜刑務所における保護房収容の事由別件数

別表三の三の一 千葉刑務所における革手錠使用の事由別件数

別表三の三の二 千葉刑務所における保護房収容の事由別件数

別表三の四の一 東京拘置所における革手錠使用の事由別件数

別表三の四の二 東京拘置所における保護房収容の事由別件数

別表三の五の一 大阪刑務所における革手錠使用の事由別件数

別表三の五の二 大阪刑務所における保護房収容の事由別件数

別表三の六の一 大阪拘置所における革手錠使用の事由別件数

別表三の六の二 大阪拘置所における保護房収容の事由別件数

別表三の七の一 岐阜刑務所における革手錠使用の事由別件数

別表三の七の二 岐阜刑務所における保護房収容の事由別件数

別表三の八の一 熊本刑務所における革手錠使用の事由別件数

別表三の八の二 熊本刑務所における保護房収容の事由別件数

別表四の一 府中刑務所における革手錠使用の態様別件数

別表四の二 横浜刑務所における革手錠使用の態様別件数

別表四の三 千葉刑務所における革手錠使用の態様別件数

別表四の四 東京拘置所における革手錠使用の態様別件数

別表四の五 大阪刑務所における革手錠使用の態様別件数

別表四の六 大阪拘置所における革手錠使用の態様別件数

別表四の七 岐阜刑務所における革手錠使用の態様別件数

別表四の八 熊本刑務所における革手錠使用の態様別件数