質問主意書

第147回国会(常会)

答弁書


答弁書第一八号

内閣参質一四七第一八号

  平成十二年四月二十五日

内閣総理大臣 森 喜朗   


       参議院議長 斎藤 十朗 殿

参議院議員福本潤一君提出たばこ問題に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。


   参議院議員福本潤一君提出たばこ問題に関する質問に対する答弁書

一の1について

 我が国においては、平成七年の「たばこ行動計画検討会」の報告書等を踏まえて、世界禁煙デー及び禁煙週間の実施、インターネット等を通じた喫煙が健康に与える影響に関する情報の提供、老人保健事業等における保健指導の際の禁煙指導、喫煙の経験のない未成年者等が喫煙を開始することを防ぐための防煙対策、受動喫煙(自分の意思とは無関係に環境中のたばこの煙にさらされ、それを吸わされることをいう。)を防ぐための分煙対策等を行っている。また、学校教育における喫煙防止教育に関しては、学習指導要領等に基づき、小学校、中学校及び高等学校の体育科等において喫煙と健康との関連について指導している。
 政府としては、引き続き、これらの対策に取り組んでまいりたい。

一の2について

 厚生省においては、少子高齢化等の人口構造の変化及び生活習慣病の増加等の疾病構造の変化が進む中で、二十一世紀における日本の社会をすべての国民が健やかで心豊かに生活することができるものとするために、国民が健康に生活できる期間の延伸等を目的とした「二十一世紀における国民健康づくり運動(健康日本二十一)」を実施しているところである。
 健康日本二十一においては、たばこを重要な課題の一つと位置付け、喫煙が及ぼす健康影響についての十分な知識の普及、未成年者の喫煙の防止、公共の場及び職場における分煙の徹底及び効果の高い分煙に関する知識の普及並びに禁煙プログラムの普及の四項目について、平成二十二年度を目途とした目標等を定めている。

一の3について

 法律によりたばこの広告を禁止している国としては、フランス、イタリア、オーストラリア、タイ等があり、法律により公共の場所における喫煙を制限している国としては、フランス、イタリア、タイ等があると承知している。

二について

 政府としては、職場における喫煙が周囲の非喫煙者に対して受動喫煙による健康影響、不快感、ストレス等を与えていることにかんがみ、平成八年二月に「職場における喫煙対策のためのガイドライン」を公表し、企業の労使で構成される衛生委員会等において職場の分煙対策について検討する等企業による自主的な取組を促しているところである。
 企業の自主的な取組を促進するためのガイドラインとしたのは、各企業において効果的な分煙対策を実施するためには喫煙者及び非喫煙者双方の理解と自発的な協力が不可欠であること、それぞれの企業の状況に適した分煙対策を実施する必要があること並びに職場の分煙対策担当者、喫煙者及び非喫煙者等の関係者が自由かっ達に意見交換することが分煙対策の円滑な実施に効果的であることから、強制的な方策はなじまないと考えたためである。
 政府としては、今後とも、職場における受動喫煙による健康影響について一層の普及啓発に努めるとともに、各企業の分煙対策への自主的な取組が一層円滑に進むよう、本ガイドラインの普及及び企業からの相談に応じた支援を行ってまいりたい。

三について

 御指摘のような未成年者の喫煙については、その健全育成並びに健康の保持及び増進上重大な問題であると認識しており、未成年者喫煙禁止法(明治三十三年法律第三十三号)の趣旨を踏まえ、未成年者の喫煙防止を図るため、関係省庁において自動販売機による未成年者へのたばこ販売の防止を含めた次のような措置を講じているところである。
 警察庁においては、都道府県警察に対し、喫煙を行っている未成年者に対する関係機関、ボランティア等と連携した街頭補導活動の強化、関係業界に対する未成年者の喫煙防止に関する指導の徹底及び未成年者に対し公然とたばこを提供する悪質業者に対する取締りの強化を指示している。
 大蔵省においては、たばこ事業法(昭和五十九年法律第六十八号)第二十三条第三号及び同法施行規則(昭和六十年大蔵省令第五号)第二十条第三号の規定に基づき、自動販売機が店舗に併設されていない等の理由により製造たばこの販売について未成年者喫煙防止の観点から十分な管理、監督が期し難いと認められる場合には、製造たばこの小売販売業の許可を行わないこととしている。また、小売販売業者が未成年者喫煙禁止法第四条の規定に違反して処罰されたときは、たばこ事業法第三十一条第九号の規定に基づき許可の取消し等の処分をすることとしている。さらに、全国たばこ販売協同組合連合会に対し、屋外のたばこの自動販売機の深夜稼働の自粛について、地域の実情に応じた取組を行うよう依頼している。
 厚生省においては、「未成年者の喫煙行動に関する全国調査」によれば、高等学校三年生の男子のうち直近の三十日間に一日以上喫煙したことがある者は約三十七パーセントに上り、その約四分の三がたばこを自動販売機によって購入している等の実態があることを踏まえ、未成年者を含めた国民全体に対して喫煙が健康に与える影響等に関する情報提供を行うことを通じて、未成年者が自動販売機等によりたばこを入手し、喫煙することをやめるように働き掛けている。
 今後とも、関係省庁の連携により、未成年者の喫煙防止の徹底に努めてまいりたい。

四について

 歩行中の喫煙及びたばこの吸い殻の投棄については、御指摘のような他の歩行者の安全、景観の保全、火災予防等の観点から、適当でない行為であると認識している。
 このような行為を防止するための喫煙マナーの普及活動については、従来からたばこ事業関係者等により行われてきたものと承知しており、政府としても、従来から国民に対してたばこの吸い殻の投棄をしないよう呼び掛けているが、今後、歩行中の喫煙及びたばこの吸い殻の投棄を防止するための啓発活動を更に推進する必要があると考えている。

五の1について

 製造たばこに係る広告を行う者は、たばこ事業法第四十条第一項により、未成年者の喫煙防止及び製造たばこの消費と健康との関係に配慮するとともに、その広告が過度にわたることがないよう努めなければならないとされている。また、社団法人日本たばこ協会が同条の趣旨にかんがみ、製造たばこに係る広告等に関する自主規準を定めており、日本たばこ産業株式会社等は当該規準を遵守していると承知している。一方、製造たばこに係る広告の掲示を行う公共交通機関の側においても、各事業者、施設管理者等の判断により掲示の是非に係る審査基準を設ける等、必要に応じて自主的な規制を行っている例があると承知している。
 政府としては、公共交通機関における製造たばこに係る広告の在り方については、これまでどおり、広告を行う者及びその掲示を行う者が、たばこ事業法第四十条の規定の趣旨及び社会的な要請を踏まえつつ、自主的に判断すべき問題であると考えている。

五の2について

 公共交通機関における製造たばこに係る広告の主要国の規制の現状は、おおむね以下のとおりであると承知している。
 アメリカ合衆国においては、公共交通機関において広告を行う場合には、法令により警告文の表示が義務付けられており、また、関係業界による自主的な規制により、タール量及びニコチン量の表示が行われている。さらに、州によって状況は異なるが、一部の公共交通機関において広告が禁止されている例がある。
 ドイツにおいては、関係業界による自主的な規制により、外国へ運行される鉄道車両、船舶及び航空機におけるものを除き、公共交通機関における広告は行われていない。
 フランスにおいては、公共交通機関におけるものも含め、広告が法令により全面的に禁止されている。
 イギリスにおいては、関係業界の自主的な規制により、バス、鉄道車両、トロリーバス、タクシー及びたばこ会社の関係車両の車体広告は行われていない。また、多くの自治体が、公共交通機関における広告を禁止している。

六の1について

 たばこ事業法第一条は、「たばこ専売制度の廃止に伴い、製造たばこに係る租税が財政収入において占める地位等にかんがみ、製造たばこの原材料用としての国内産の葉たばこ生産及び買入れ並びに製造たばこの製造及び販売の事業等に関し所要の調整を行うことにより、我が国たばこ産業の健全な発展を図り、もつて財政収入の安定的確保及び国民経済の健全な発展に資することを目的とする。」と規定している。
 政府として、諸外国におけるたばこ事業に関する法律すべてを把握してはいないが、大韓民国においてたばこ産業の健全な発展を図り、国民経済に貢献することを目的とする法律があることは承知している。

六の2について

 政府としては、諸外国におけるたばこ事業の監督官庁すべてを把握してはいないが、たばこ製造業者の免許の付与等に関する監督については、アメリカ合衆国においては財務省、ドイツにおいては連邦大蔵省、フランスにおいては予算省、イギリスにおいては関税消費税庁が行っていると承知している。

六の3について

 現在、我が国においては、大蔵省がたばこ事業法に基づき、たばこの製造、輸入又は販売に携わるたばこ事業関係者の監督を行っているが、六の2についてで述べたように、諸外国においても類似の例が見られるところである。
 このことは、諸外国における例にも見られるように、国民の健康の保持及び増進という観点から、たばこが健康に及ぼす影響に関する所要の対策が推進されることを防げるものではない。
 国民の健康の保持及び増進という観点からのたばこ対策については、重要であると認識しており、厚生省を中心とした関係省庁の連携により、今後ともその推進に努めてまいりたい。