質問主意書

第147回国会(常会)

質問主意書


質問第四五号

中山間地農林業に対する所得政策に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成十二年五月二十九日

平田 健二   


       参議院議長 斎藤 十朗 殿


   中山間地農林業に対する所得政策に関する質問主意書

 政府は昨年、新たな基本法としての「食料・農業・農村基本法」を制定し、食料の安定供給の確保、多面的機能の発揮、農業の持続的な発展、農村の振興という四つの基本理念を掲げ、我が国の農業の基本方向を示す努力を払ってきた。
 しかし、我が国農業は、先進国で最も低い四〇%(カロリーベース)の食料自給率に端的にあらわれているように、農業従事者の著しい減少と高齢化の進行、後継者不足、耕作放棄地の拡大、農産物価格の下落等の深刻な問題を抱えている。
 とりわけ、我が国の国土形成上、平坦な大規模農地の確保が難しく、さらに国土の七割以上を山間地が占める我が国において、中山間地における農業の保全は重要な国政課題だと考える。
 中山間地農業は、地域社会の維持や国土、自然環境、景観の保全という視点からも重要であるにもかかわらず、農業や生活の条件に恵まれず人口が急減し、農業衰退により集落自体が消滅している地域も多発している。
 この度、新たに中山間地域の生産農家に対し「直接支払制度」が導入されたが、中山間地の農業が保全され、農業の担い手を確保・育成し、地域社会を維持していくためにはまだまだ不十分であるといわざるを得ない。中山間地域に居住する農家に対する所得政策の拡充を求める立場から、以下質問する。

一、新設の「直接支払事業」では、例えば水田に対する単価として十アール当たり二万一千円に過ぎない。中山間地における農業経営が成立し、国土と環境の保全を図るには不十分な額だと考えるが、その拡充を図る考えはないか、政府の考えを明らかにされたい。
 また、直接支払いの単価の水準が、対象農地と平地地域との生産コスト差の「八割」とされている根拠についても、明らかにされたい。

二、当制度の導入の理由に水田の保水機能を始めとする環境・国土保全が挙げられていたが、その観点からすれば林業の果たしている機能も同様であり、農業と林業を分け隔てる明確な根拠はないと考える。
 明年には新たな基本法が提案されるやに聞いているが、林業に対する「直接支払制度」を導入する考えはないか、政府の考えを明らかにされたい。

三、耕作放棄地は中山間地のみならず、全国津々浦々に拡大している。直接支払いの対象は、生産条件が不利で耕作放棄地の発生の懸念の大きい農振農用地区域内の農地とされているが、「農振農用地区域内」という限定を撤廃する考えはないか、政府の考えを明らかにされたい。
 さらに、「直接支払制度」の対象を、平地地域を始めとする全農地に拡大していく考えはないか、この点についても政府の考えを明らかにされたい。

  右質問する。