質問主意書

第147回国会(常会)

質問主意書


質問第四二号

国営諫早湾干拓事業に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成十二年五月二十六日

中村 敦夫   


       参議院議長 斎藤 十朗 殿


   国営諫早湾干拓事業に関する質問主意書

 諫早干潟の命を奪う「ギロチン」から三年が過ぎ、二〇〇一年度には、農水省の事業再評価の対象となる。その事業再評価に向けて、日本国内だけでなく、アメリカ合衆国福岡領事館の担当官やデンマーク環境エネルギー省自然保護担当官などが現地を視察したり、韓国のテレビ番組で取り上げられるなど、国際的な関心も非常に高まっている。こうした目が光る中、事業続行を前提とした「アワセメント」的な事業再評価が行われては、国際的に日本の威信が失墜し、国益に大きな打撃となることは疑いない。「環境博」を標ぼうする二〇〇五年開催予定の愛知万博の開催にとっても大きな痛手となろう。
 よって、国営諫早湾干拓事業の再評価は、国際的にも通用するレベルの再評価システムで実施される必要がある。そのためには、何よりも官と民が情報を共有することが前提条件となる。
 以上の観点から、次の事項について質問する。なお、同様の文言が並ぶ場合でも、各項目ごとに平易な文章で答弁されたい。

一 国営土地改良事業等再評価実施要領に基づいて九州農政局に設置される第三者委員会の二〇〇〇年度及び二〇〇一年度の委員名と所属を明らかにされたい。

二 一九九九年の事業計画変更時における総事業費二四九〇億円の内訳を、潮受堤防、内部堤防、農地造成に三区分して示されたい。

三 一九八六年着工時と一九九九年の事業計画変更時における全体実施設計の災害防止効果算出に際して、それぞれの想定被害内容(堤防、住家、非住家、農地、農業用施設、農作物、道路・鉄道、その他)ごとの現況被害額と計画被害額と年当たり効果額の詳細、それらを導き出した基礎データと積算プロセス、及び被害想定地域を示されたい。

四 三と同様に作物生産効果、維持管理費節減効果、一般交通等経費節減効果及び国土造成効果についても、それぞれの基礎データと積算プロセスを示されたい。

五 一九八六年着工時及び一九九九年事業計画変更時における妥当投資額の算定に際して、それぞれの割引率、還元率及び総合耐用年数を示し、その数値変更の根拠を示されたい。また、一九九九年事業計画変更時の妥当投資額算定に当たって採用した一般的計算式と本件への適用による式の具体的展開も併せて示されたい。

六 一九九九年十二月の事業計画変更にかかわる「国営土地改良事業変更計画書」及びこれに対応する全体実施設計書に相当する文書を公表すべきではないか。公表できないならば、その合理的な理由と法的根拠を明らかにされたい。

七 昨年秋以降、潮受堤防排水門から海水を流入させている事実はあるか。あるとすれば、その理由を明らかにされたい。また、事実である場合、排水門に、海水流入に際しての構造的問題がないと解釈できるが、どうか。

八 水質調査を含む八項目にわたるモニタリング調査の生データを、最新のものを含めて全て示されたい。

九 調整池の水質はモニタリングでも目標値を達成していない。工事完了後に水質が改善するという見通しの合理的な根拠を明らかにされたい。

十 現在、潮受堤防は河川管理施設であるのか。

十一 河川法第三条第二項ただし書の規定に基づく長崎県との同意は、いつなされたのか、年月日を明らかにされたい。

十二 伊勢湾台風並みの高潮と諫早大水害並みの洪水が同時に襲来する確率は、何年に一度と想定しているのか。

十三 一九九七年四月の湾閉め切り後に完工したクリーク拡幅や排水ポンプ増設などの低地湛水対策工事を全て挙げ、その効果を明らかにされたい。

十四 一九九九年七月二十三日の豪雨で、市内全域に避難勧告が発令されたり湾岸低地の湛水が生じたりして大きな被害が発生した。当該事業によって防げなかったのはなぜか。

十五 潮受堤防外側に干潟が再生した場合、調整池からの排水に支障を来して防災機能が減退する可能性があるのではないか、合理的な理由でもって説明されたい。

十六 内部堤防、用排水路、農道の建設の工事内容とその工程表、工事費の項目別の詳細を示されたい。

十七 潮受堤防の沈下量と時間-沈下関係の予測と、二〇〇〇年三月三十一日までの沈下実績を示されたい。

十八 新干拓地盤の時間-沈下の予測と、二〇〇〇年三月三十一日までの沈下実績を示されたい。

十九 新干拓地の排水機場の配置とポンプ容量、排水機場の建設費をそれぞれ示されたい。

二十 当該事業の着工以来、特に一九九七年の湾閉め切り以降、周辺漁業者からの「漁業被害」を訴える声や報道が相次いでいる。これに関連して、政府が確認していることの概要とその原因を明らかにされたい。もし、原因が不明であるならば、原因究明のために政府が必要と考えている調査研究項目も明らかにされたい。また、何らの対策もとっていないならば、なぜ対策しないのか、その合理的な理由を明らかにされたい。

二十一 情報公開法の施行を控えていることや徳島での住民投票に代表される公共事業に対する国民の懸念を踏まえた上で、当該事業再評価に臨む政府の姿勢を示されたい。

  右質問する。