質問主意書

第147回国会(常会)

質問主意書


質問第四一号

政府の国際人権条約履行義務に基づく東京都知事発言への対応に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成十二年五月二十六日

竹村 泰子   


       参議院議長 斎藤 十朗 殿


   政府の国際人権条約履行義務に基づく東京都知事発言への対応に関する質問主意書

 石原慎太郎東京都知事は今年四月九日、陸上自衛隊第一師団の創隊記念式典における挨拶で、次のように述べた。「今日の東京をみると、不法入国した多くの三国人、外国人が非常に凶悪な犯罪を繰り返している。もはや東京における犯罪の形は過去と違ってきた。こういう状況を見ると、もし大きな災害が起こった時には、大きな大きな騒擾事件すら想定される」これに対処するには、警察の力をもっても限りがあるので「皆さん(陸上自衛隊)に出動願って、都民の災害の救済だけではなく、治安の維持も大きな目的の一つとして遂行していただきたい」(『朝日新聞』四月一二日)
 また、この発言が契機となって東京都庁内で行った記者会見等では、「不法入国した多くの三国人、外国人」とは、「入国したあと不法に滞在している外国人も含めて言った」ものだと説明した上、次のような発言を繰り返した。「東京にいっぱいいる、不法入国した身元のはっきりしない人間たちが必ず騒擾事件を起こすと思う」、「東京の犯罪はどんどん凶悪化している。誰がやっているかといえば、全部三国人。日本以外の不法入国し居座っている外国人が犯罪者」(『朝日新聞』四月一一日)。「不法に滞在している、入国している外国人は……非常に厄介な存在だと思う」、「危険な薬物が、まさに『三国人』、外国人の手によってこの日本にまん延している」、「ロサンゼルスでも(地震の際に)少数民族による略奪事件があった。日本の場合は、もっと肩身の狭い、後ろめたい思いをしている外国人がいて……それが大きな災害の時、どんな形で爆発するかということを考えたら、知事として本当に寒心に耐えない」、「違法に日本に入国し、駐留し、滞在し、そして犯罪を繰り返している、そういう人間たちが、何を起こすか分からない」、「その人間たち(不法入国・不法滞在の外国人)が大きな引き金を引いて、大きな騒擾事件を起こす可能性がある」(『毎日新聞』四月一三日、一四日)。
 これら東京都知事が行った発言は、根拠がなかったり不実を根拠にして不法入国・不法滞在外国人の脅威を、挑発的な言葉で実際以上に誇張して人々の不安をあおり、外国人に対する差別や敵意をあおり助長する効果を有する点で、「あらゆる形態の人種差別の撤廃に関する国際条約」等に抵触すると思われる。
 以上のような問題意識に基づき、以下質問する。

一、四月一九日の衆議院外務委員会で、河野洋平外務大臣は藤田幸久議員の質問に答え、今回の都知事発言が同条約第四条(c)項等に抵触するか否か判断しなければならない、抵触する場合、政府の履行義務をどう果たすかを含めてもう少し時間をかけて検討したい旨、答弁した。 その検討結果を示されたい。

二、政府は、この発言に対して同条約第二条一項(a)(d)項、第四条及び同条(a)(c)項、「市民的及び政治的権利に関する国際規約」の第二〇条二項など政府が負う条約履行義務に基づいて、どのような措置をとるつもりか、見解を示されたい。

  右質問する。