質問主意書

第147回国会(常会)

質問主意書


質問第三〇号

戸籍の続柄欄の記載に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成十二年五月十日

福島 瑞穂   


       参議院議長 斎藤 十朗 殿


   戸籍の続柄欄の記載に関する質問主意書

 日本における婚外子に対する社会制度上の差別は、国際社会から度々批判を受けているにもかかわらず依然として存在し、婚外子への差別と偏見を助長している。なかでも、戸籍の父母との続柄欄における婚内子と婚外子を区別する記載が存在することについては、再三にわたり国連から改善勧告を受けている。
 一九九八年には、国連規約人権委員会から日本政府に対し、「委員会は、婚外子に対する差別に再度憂慮を示す。特に、国籍、戸籍と相続に関わる権利についてである。規約二六条に従い、あらゆる子どもは平等の保護に値するというこれまでの見解をここに確認する。政府は、民法九〇〇条四号を含め、法制度を改正するための必要な措置をとることを勧告する」とする、婚外子の差別撤廃を求める二度目の勧告が出された。また、国連子どもの権利委員会からも同年、「公的書類において婚外子としての出生が記載されることをとりわけ懸念する」とのコメントが出されている。
 「戸籍との連動性」を理由に、日本政府は住民票続柄差別記載の撤廃を拒否してきたが、一九九三年の国連規約人権委員会による勧告、一九九三年から一九九四年にかけての地裁・高裁段階での相次ぐ婚外子差別憲法違反の判断、そして婚外子差別は人権侵害という声の高まりの中、一九九五年三月一日から、住民票の続柄欄における長女・長男・二女・二男・養子・子という区別をやめて、すべて「子」という表記に統一した。
 本来ならば、この時点で、戸籍の続柄欄の差別表記を撤廃すべきだったと考える。しかしながら今に至るまで、現行の続柄記載の合理性が明らかにされないまま、差別表記が維持されている。
 現行の続柄記載方法は、必ずしも一般人の感覚には合致しない場合が存在する。例えば、再婚の夫婦の場合、同一戸籍内に複数の長女等が存在することがあり得ること、特別養子の続柄記載について、婚内子同様の記載がなされるため同戸籍内に入っている実子の続柄が変更されることがあること、及び双子等の場合にも出生順により長女等の記載をするなどである。
 また、養子や婚外子については、出生順を示す記載がないが、それでも不便が生じないことは、婚内子の続柄においても序列をつけることに合理性がないことを明らかにするものである。
 現行の戸籍における続柄記載については、かつての住民票の続柄欄における差別記載と同様の疑問を感じるところであり、以上の観点から、次の事項を質問する。

一、戸籍の続柄の記載はなぜ必要であるのか。その合理的な理由を明らかにされたい。

二、「長男」「次男」「長女」「二女」などの出生順を区別する続柄の記載は、法律・行政上必要不可欠なものであるのか。その理由も明らかにされたい。

三、二と同様に、双子や三つ子についても「長女」「二女」などと出生順の区別をする法律・行政上の必要はないと考えるが、どうか。

四、仮に、戸籍の続柄の記載をやめ、性別記載のみにした場合、法律・行政上、支障が生ずるか具体的に明らかにされたい。

五、国連規約人権委員会、子どもの権利委員会による婚外子に対する差別法制度の撤廃を求める勧告をどう受け止め、改善しようとしているか、明らかにされたい。

  右質問する。