質問主意書

第147回国会(常会)

質問主意書


質問第一五号

米海軍LCAC基地に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成十二年三月三日

立木 洋   
小泉 親司   


       参議院議長 斎藤 十朗 殿


   米海軍LCAC基地に関する質問主意書

 現在、米軍はLCAC(エアークッション型上陸用舟艇)の基地を佐世保湾の西海町横瀬に建設する計画を進めている。この計画は米軍の最新鋭兵器導入のため新しい基地を建設するもので、基地密度が大問題となっている佐世保基地を一層拡張し、米軍基地撤去の世界的な流れに逆行するもので容認できない。
 この立場から、以下の事項について質問する。

一、LCAC基地建設計画について

1 米側から日本側に、公式、非公式を問わず、LCAC基地建設を要請してきたのはいつか。
2 米側は、LCAC基地建設の目的についてどのように説明しているのか。
 また、米側がLCAC基地を建設するのは、どういう目的であると日本政府は認識しているのか。
3 LCAC基地の西海町横瀬への建設は、九九年五月米海軍「艦隊支援に関する会議」で立案が決まり、その後日本側との協議があって同年七月にその全体計画が西海町に示された経過がある。どのような経緯で決定されたのか。
 また、防衛施設庁は、五か所の候補地を検討したとしているが、それはいつの時期か。横瀬がなぜ最適地として選定されたのか。その理由を詳細に説明されたい。
 さらに、他の候補地が選定されなかった理由を、それぞれ明らかにされたい。
4 米海軍第五強襲上陸舟艇部隊が九九年五月に「艦隊支援会議」に提出した「概況説明」では、「横瀬基地」の建設を「二〇〇五年までに完了することを提案した」と明記している。この報告書は当然入手していると思うがどうか。
 日本政府には、公式、非公式を問わず、こうした申入れがあったのかどうか、明らかにされたい。
5 米側は、横瀬におけるLCACの基地建設をいつまでに完成して欲しいとしているのか。
 また、横瀬に建設を要求した米側の内容、その規模、建設時期、米側の費用負担など計画の内容を明らかにされたい。米側の要求のうち、日本政府が拒否したものは何か。
6 米軍の海外におけるLCACの基地は、日本以外にどこの国にあるのか。アメリカが外国でLCACの基地を建設するのは日本が初めてなのか。

二、防衛施設庁と西海町間の「協定書」について

1 二〇〇〇年一月二六日、防衛施設庁と西海町は「横瀬貯油所内におけるLCAC施設の整備等に関する協定書」を結んだ。西海町長は町民に対し、「協定書作成に当たっては防衛施設局が米軍ともよく話し合って作成した」と説明したが、米軍のどの機関といつ、どのような協議をして作成されたのか。
2 協定では、当初計画よりも二ヘクタール縮小(「埋立て面積」と「陸上の造成面積」をそれぞれ一ヘクタール)することになった。国はこれより、工事期間が短縮されることになるという談話を発表している。計画の変更になるわけだが、ただ埋立て面積が減り、陸域面積が減るというだけということなのか。それとも全体計画(管理棟、格納庫の建設等、当初発表した計画)にも変更が及ぶのか、工事期間の短縮については「短くなるだろう」とまでは言及したが、二ヘクタール縮小することに伴う、当初計画との変更がどうなるのか、明らかにされたい。
3 総工事費についてこれまで、約百億円という説明がなされていたが、計画の変更によって、工事費はどうなるのか。また、この総工事費は、日本政府がすべて負担するのか。
4 町は、「防衛施設周辺の生活環境の整備等に関する法律」第九条第一項により、「特定防衛施設関連市町村」に指定されることは確約済みと説明しているが事実か。事実とすればその根拠はどこにあるのか。
5 隻数一二隻を更に増やすことは、町当局の了承がない限り行わないのか。それを米軍当局は確約しているのか。

三、現在の崎辺基地について

1 「概況説明」は、「崎辺の制約」の項目で、崎辺には「携帯電話しかなく、地上線が配線されていない」「通信・米軍事通信網を設置することを交渉中である」、さらにLCACの格納庫がないこと、高度な整備器具を置く施設がない、雨が降ると整備できないとしている。しかも米太平洋軍準機関紙「星条旗」九月二八日付けは「横瀬が建設されるまで、崎辺を使用する」、そのため「現在の施設を改善しなければならない」と報じている。
 これは、横瀬基地ができるまでは、崎辺駐機場の機能を強化していくということか。
2 「概況説明」では、現在の崎辺地区駐機場でのLCACの訓練では、LCACの運用は火曜日と木曜日の三時間に制限され、夜間運用は禁止され、LCACの騒音が佐世保市によって測定されるなど厳しい制約の下に置かれているとし、米軍は「乗員のもつ力量、練度を維持するのが困難、現場に即した訓練能力が制約されている」と、佐世保市の付けた条件を守っていては様々な場面を想定した実践的な訓練ができないと述べている。
 横瀬のLCAC基地では、こうした条件に限定した運用を要求するのか、それとも更に厳しい条件を要求するのか。また、夜間・早朝の航行を行わないということについて、米軍当局と調整した結果米軍当局が受け入れない場合、基地建設を撤回させるのか。あるいは今の条件よりも緩和するというのか。どのような条件を要求するのか具体的に明らかにされたい。

四、安全・環境問題について

1 LCACは、海上を走ると強力に圧縮した空気を海面に吹き出しすさまじい騒音を発し、細かい海水が霧状になって舞い上がるため、地域住民の間では塩が車に付くし、特産のゆで干し大根が台無しになる、ミカンなど農産物への塩害も心配されている。政府は、LCACによる騒音、塩害の被害についてどのように認識しているのか。
2 佐世保湾は、魚貝類の繁殖地となっている。佐世保湾にLCACの訓練基地を置くことによって魚貝類への繁殖の影響など漁業被害についてどのように認識し、考えているのか。
3 佐世保湾は船による海上交通も盛んである。ところがLCACの海上走行は、地元では「海の暴走族」と呼ばれている。協定書にLCACの佐世保湾内航行速度上限を二〇ノットにするという規定がある。港則法などでは港内での上限速度の規定はないのか。こうした危険走行のため漁船への当て逃げ事故も起こり地元では恐れられている。上限速度を二〇ノットとすることを基地建設の条件として厳守するのか、努力目標なのか。また、米軍当局はそれを確約しているのか。LCACの基地を置くことによって佐世保湾内における海上交通に対する影響をどのように考えているか。
4 以上の諸点についてどういう調査をしたか。その調査結果も含め、同時にLCACによる騒音、塩害、危険走行に対してどのような防止措置を採ろうとしているのか明らかにされたい。

  右質問する。