質問主意書

第146回国会(臨時会)

答弁書


第百四十六回国会答弁書第九号

内閣参質一四六第九号

  平成十二年一月二十八日

内閣総理大臣 小渕 恵三   


       参議院議長 斎藤 十朗 殿

参議院議員櫻井充君提出特別療養環境室の料金請求に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。


   参議院議員櫻井充君提出特別療養環境室の料金請求に関する質問に対する答弁書

一について

 御指摘の「特定療養費に係る療養の基準の一部改正に伴う実施上の留意事項について」(平成九年三月十四日付け保険発第三十号厚生省保険局医療課長・歯科医療管理官通知。以下「平成九年通知」という。)にいう「治療上の必要」とは、特別の療養環境に係る病室(以下「特別療養環境室」という。)へ入院しようとする患者についての治療上の必要をいう。
 お尋ねの1に示された患者について、他者の院内感染を防止する観点のみから保険医療機関が特別療養環境室へ入院させることは、当該患者に対する治療上の必要がある場合には該当しない。
 2に示された患者について、抗がん剤等の使用に伴い免疫力が著しく低下していること等による感染症の罹患を防止する観点から保険医療機関が特別療養環境室へ入院させることは、当該患者に対する治療上の必要がある場合に該当する。
 3に示された患者について、集中治療の実施又は著しい身体的及び精神的苦痛の緩和の観点から保険医療機関が特別療養環境室へ入院させることは、当該患者に対する治療上の必要がある場合に該当する。
 4に示された患者について、痴呆、いびき等による他者の迷惑を防止する観点のみから保険医療機関が当該患者を特別療養環境室へ入院させることは、当該患者に対する治療上の必要がある場合には該当しない。

二について

 特別療養環境室以外の病室に空床がない場合等においても、保険医療機関が救急患者等を治療上の必要から当該特別療養環境室へ入院させた場合を除けば、当該患者から特別療養環境室に係る特別の料金(以下「差額室料」という。)を徴収することは差し支えない。

三について

 厚生省保険局医療課の調査によれば、平成九年七月一日現在、特別療養環境室の全病床のうち、一日当たりの差額室料が三万円を超える病床が占める割合は〇・六パーセント、千円以下の病床が占める割合は十二・七パーセントとなっており、また、特別療養環境室の全病床に係る一日当たりの差額室料の平均額は四千九百四円となっている。差額室料の上限及び下限の金額については、把握していない。
 当該調査は、毎年一回、各年七月一日現在の施設の状況について、すべての保険医療機関を対象に、厚生省保険局医療課が各都道府県保険主管課を通じて実施しているものである。

四について

 保険医療機関が治療上の必要から患者を特別療養環境室へ入院させたにもかかわらず当該患者から差額室料を徴収することは、患者による差額室料の負担を伴う特別の療養環境の提供は患者の選択と同意に基づいて行われる必要があるという制度の趣旨に照らして極めて不適切である。このため、健康保険法(大正十一年法律第七十号)第四十三条ノ七第一項の規定により厚生大臣又は都道府県知事が行う保険医療機関に対する指導等を通じて御指摘のような保険医療機関の存在が明らかになった場合は、当該指導等において、当該保険医療機関に対して、受け取った差額室料を速やかに患者に返還するよう指導するとともに、治療上の必要から患者を特別療養環境室へ入院させた場合は、当該患者に対して同意書を求めて差額室料を徴収してはならない旨を周知徹底することとしてきたところである。今後、御指摘のような保険医療機関が存在することが明らかになった場合は、同様の指導及び周知徹底を行うこととしている。

五について

 差額室料の請求等に関する苦情等については、現在、厚生省保険局医療課及び各都道府県保険主管課に相談窓口を設置して対応している。患者又は患者から相談を受けた市民グループ等から当該相談窓口に対して、御指摘のような事例に関する情報提供がなされた場合は、事実確認を行った上で、必要に応じ、当該事例に係る保険医療機関に対し、四についてで述べたような指導及び周知徹底を行うこととしているところである。

六について

 平成九年通知を遵守しない保険医療機関の数を正確に把握することは現実的には極めて困難であり、お尋ねの割合は把握していない。

七について

 厚生省保険局医療課及び各都道府県保険主管課において、保険医療機関に対する指導監督を行っている。