質問主意書

第146回国会(臨時会)

答弁書


答弁書第三号

内閣参質一四六第三号

  平成十一年十二月十日

内閣総理大臣 小渕 恵三   


       参議院議長 斎藤 十朗 殿

参議院議員海野義孝君提出我が国の持続可能な森林経営実現に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。


   参議院議員海野義孝君提出我が国の持続可能な森林経営実現に関する質問に対する答弁書

一について

 森林は、再生可能な資源であり、木材の供給、国土の保全、水資源のかん養、二酸化炭素の吸収・固定等の機能を通じ、持続的発展が可能な循環型社会を実現する上で重要な役割を果たしている。
 このため、健全な森林の整備とそのために不可欠な林業及び木材産業の活性化は極めて重要であると考えており、現在、このような観点も踏まえ、森林・林業・木材産業に関する基本政策の見直しを行っているところである。

二について

 木材の自給率については、木材に対する需要の変化、世界の木材需給の見通し、国内の森林資源の状況等を踏まえつつ、現在進めている森林・林業・木材産業に関する基本政策の見直しの中で、その在り方につき検討してまいりたい。
 また、林業及び木材産業の体質強化等を通じて、国民のニーズに対応した木材の供給に努めてまいりたい。

三について

 木材価格の低迷等により、全国的にみて健全な森林の育成に不可欠な間伐が十分に実施されていないなど森林の整備は十分とはいえない状況にある。
 このため、緊急の課題である間伐の推進に重点を置きつつ、森林整備事業計画(平成九年十二月十九日閣議決定。以下同じ。)及び治山事業七箇年計画(平成十年一月三十日閣議決定。以下同じ。)の着実な実施等を通じ、適切な森林の整備に努めてまいりたい。

四について

 木材の高品質化、加工・流通の合理化等を図るため、高次加工施設の整備、高能率の機械設備の導入等を推進するとともに、木材の特質を生かした新たな分野への利用を図るための技術開発等の施策を講じているところであり、今後ともその充実に努めてまいりたい。
 林業労働力の確保のため、林業労働者の福利厚生施設の設置に対する助成、新規就業者等に対する研修の実施への助成等を行っており、また、労災保険率の引下げに必要な労働災害の減少に向け、高性能林業機械の導入、安全衛生指導員の養成、巡回指導等の安全対策を図るための措置を講じているところであり、今後ともその充実に努めてまいりたい。

五について

 林業関係の制度資金については、これまでも林業経営を取り巻く状況の変化を踏まえて貸付条件の改定等を行ってきたところであり、今後とも必要な措置を講じてまいりたい。
 また、既貸付造林資金について、長伐期施業又は複層林施業への転換を図る場合には、償還期間、据置期間等の見直しを行うことができる資金制度の活用を推進しているところである。

六について

 森林の保全に取り組む者に対して直接支払を行うことについては、造林、間伐等の林業生産活動に対しては個人を対象に森林の公益的機能に着目した助成措置が既に講じられていること等から、森林・林業の実態、既存施策との関係等を十分に踏まえて、その必要性も含め、総合的な観点から検討していく必要があると考えている。

七について

 山林に対する相続税については、財産の適正な評価を行うとともに、立木の特殊性を考慮して、従来から課税面及び納付面において特段の配慮を行っているところである。
 すなわち、課税面では、立木の評価額を算定するに当たり、立木の伐採の実態、立木価格の動向等を踏まえて適正に評価した価額からその十五パーセントに相当する額を減額する措置を講じているところである。
 また、納付面では、例えば、森林法(昭和二十六年法律第二百四十九号)に基づく特定森林施業計画が定められている区域内に存する立木に係る相続税については、延納期間を最長四十年とするとともに延納の利子税率を低利とし、かつ、同計画による伐採の時期及び材積に応じた分納税額による納付ができることとする特例を既に講じているところである。

八について

 我が国の国土の七割を占める森林は、国民生活にとって重要な国土の保全、水資源のかん養等の多面的な機能を有していることから、森林整備事業計画及び治山事業七箇年計画の着実な実施により、これらの機能の発揮に必要な森林の整備を推進してまいりたい。
 また、森林整備に対しては、各種補助事業、地方交付税等による措置が講じられているところであり、新たな税財源の導入については、その必要性や合理性について慎重な検討が必要であると考えている。
 さらに、河川の上下流域の地方公共団体の協力による森林整備への取組については、分収林制度等を活用した事例が各地でみられるが、これらは都市住民の参加による森林づくりを進める上で重要な意義を有しており、今後とも推進してまいりたい。

九について

 木材産業から排出される木質廃棄物については、パルプ・チップ、木炭、家畜敷料、堆肥等への再利用が図られているが、今後とも、木材資源の有効利用と廃棄物の減量化を進める見地から、木質廃棄物の再利用の一層の推進に努めてまいりたい。
 また、温室効果ガスの削減を図るため、荒廃地等における植林、保育・間伐の的確な実施等により健全で活力ある森林の整備の推進に努めるとともに、技術研究組合等による木質バイオマスエネルギー利用技術の開発等を推進してまいりたい。