質問主意書

第146回国会(臨時会)

質問主意書


質問第一七号

石油公団の業務改善等に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成十一年十二月十五日

海野 義孝   


       参議院議長 斎藤 十朗 殿


   石油公団の業務改善等に関する質問主意書

 民間会社の石油開発を支援するため、石油開発公団(昭和五十三年に石油公団に名称を変更)が設立されたのは昭和四十二年であった。その後、昭和四十八年と昭和五十四年に起きた二度のオイルショックによって、石油公団の意義は飛躍的に高まり、原油の中東依存体質から脱却するという国家目標を掲げて、通産省・資源エネルギー庁は、石油の安定供給のために自主石油開発を積極的に推進してきた。石油公団は、巨額の出融資をして、多くの石油開発会社の設立に力を注いできた。石油探鉱はリスクが大きいので、石油公団は開発会社に、開発費の七割を限度に出融資を行っている。探鉱が失敗した場合、石油公団は出融資金の返済を求めないことになっている。リスクを伴う仕事を行う特殊法人たる石油公団の使命は大きい。ただ、国民の税金を使う以上、開発には慎重の上にも慎重を期す必要がある。これまで石油公団が出融資した石油開発会社は、二八九社、総額一兆八五九二億円に達している。このうち、一六五社が清算され、現存する会社は一二四社である。しかも、一二四社のうち、累積赤字の出ていない会社はわずか一一社に過ぎない。油田の自主開発の実態は依然として分かりにくく、石油公団の財務の改善と情報公開を急がなければならない。このことを踏まえ、以下質問する。

一、平成十一年二月二十五日に提出された石油公団開発事業委員会報告書(以下「開発事業委員会報告書」という。)では、「石油公団が石油開発事業に対し多額の財政資金をリスクマネーとして供給するものであるから、情報開示についてはその徹底を図る必要があり、出融資先会社の有価証券報告書なみの情報開示、石油公団と出融資先会社との間での全部連結決算の導入が必要である。」との指摘がなされている。平成十事業年度決算報告において、情報開示、連結決算等において、どのような改善がなされたか示されたい。

二、平成十事業年度財務諸表の末尾に添付されている石油公団監事の意見については、「平成十事業年度の財務諸表及び決算報告書について監査の結果、適正であることを認めます。」とされているが、この「財務諸表」には「平成十事業年度貸借対照表及び損益計算書の付属明細書」も含まれるか。仮に含まれない場合には、その内容の客観的適正さについて責任を負うのは誰か。監事が監査を行うにあたり、精査を行った資料の種類、量及び動員されたスタッフの人数、所要期間を具体的に明らかにされたい。

三、開発事業委員会報告書では、石油公団の事業運営や会計処理については、「公認会計士の任意監査(公認会計士が監査証明に責任を負うもの)による外部監査の充実が必要である」との指摘がなされている。今回の決算報告書において、公認会計士の任意監査がどのような形で行われたか示されたい。また、その結果、問題が指摘された点があれば、明らかにされたい。また、任意監査が実施されなかった場合、その実施しなかった理由を明らかにされたい。

四、投融資損失引当金については、平成十事業年度決算から、個別に算定した損失見込額が計上されているが、その具体的な算定根拠を示されたい。また、投融資損失引当金に係る規定は、どのように改正されたか、その内容を示されたい。加えて、平成十事業年度に新設された債務保証損失引当金に係る規定の内容を示されたい。
 平成十事業年度財務諸表によると、債権発行費について、従来五年間で均等償却されていたものを十年間に延長した理由は何か。また、これは重要な会計方針の変更に当たらないか、政府の見解を示されたい。
 さらに、保有株式売却等による含み益を実現し、欠損金を処理するため、中期計画を策定中とあるが、どんな作業をしているのか。策定中であるのなら、いつ結果が出るのか示されたい。

五、平成十事業年度決算では、三三四三億円の損失金が計上されるとともに、一般勘定の政府出資金が六〇一億円増額(前年度比約六〇%増)されている。こうした巨額の損失の発生及びそれに対する税金等による穴埋めについて、総裁以下役員の経営上の責任をどのように認識しているか。また、こうした巨額損失の発生について、国民への説明責任をどのように果たしているか示されたい。
 また、前総裁に対し、当時の通産大臣により支払が止められていた退職金が支払われたと報じられているが、支払を行った理由及び前総裁の経営上の責任に対する政府の見解を示されたい。

六、役職員の退職給与引当金について、従来、自己都合で退職した場合の期末要支給額の百分の五十相当額を計上していたものを、平成十事業年度から全額を計上することとした理由は何か。また、改定された退職給与引当金に関する規定の内容を明らかにされたい。

七、二の付属明細書では石油公団の長期損益見込みについて、過去の実績値に蓋然性を加味し、最終損益見込みとして上限としては四六八〇億円の黒字、下限としては六九六〇億円の赤字が出ると試算している。仮に、この下限のような大幅な損失が生じた場合、石油公団は税金の投入以外にどのような対応策を講ずる所存か。また、石油公団が保有する株式等が想定された通りの資産価値を有しないと判明した場合、どのような対応策を考えているか。この推計においては、回収の見込みが低いとして財務諸表に計上されていない棚上利息は、損失として扱われているか。もし、損失として扱われていない場合には、損失として扱った場合の損益見通しの額を再計算し、それを示されたい。
 石油公団自体の財務内容が極めて悪化している現状に鑑み、常勤役員の大幅削減等、抜本的組織改革を行う意向はないのか。

八、国会における政府答弁等において、我が国の石油開発コストは、世界の主要企業(メジャー)と比較しても遜色ないとの認識が示されているが、その客観的根拠を示されたい。
 メジャーの追加埋蔵量確保に要するリプレースメント・コストと石油公団の同コストの比較については、すでに試みられているが、総務庁行政監察局の「特殊法人に関する調査結果報告書-公団の財務内容等を中心にして-」によれば「両者のコスト比較においては、そもそも比較の方法やベースとなる諸条件が著しく異なっていることから、両者を単純に比較して結論を導き出すことは困難」であり、「コストの算出方法の共通化を図った上で比較を試みるなどの対応が必要である」とされている。このように前提条件を見直した上でリプレースメント・コストを算出したものがあれば示されたい。

九、本年九月十三日、石油公団は、ジャパン石油開発(株)に対し、同社に対する貸付金の出資への振替や貸付金利息の無利息化等の特別措置を発表した。こうした特別措置については、開発事業委員会報告書において、「特別対策を実施する際の考え方や手順、内容、会計処理のルールについては明文化されておらず、また、特別対策の内容についての情報開示は、再建検討委員会報告書がそれを公表するまでは行われていなかった。特別対策は石油公団の財務に与える影響が大きいことから、実施する際の考え方、手順、内容や会計処理についてルールを明確にするとともに、その効果についてもフォローアップと情報開示を行い、国民に対する説明責任を果たす必要がある。」と指摘されているところである。ジャパン石油に対する貸付金の出資への振替、金利の減免等は、どのような手続により行われ、また、どのような会計処理が行われたのか。過去三回の特別措置を含め示されたい。また、国民に対する説明責任をどのように果たしたか、明らかにされたい。

十、開発事業委員会報告書によれば、「石油公団の業務は、石油開発事業に対し、多額の財政資金をリスクマネーとして供給するものであるから、常に効果的・効率的な事業の実施を図るため、実施状況について不断の見直しを行い、適切な措置をすることが求められる」とある。これによれば、情報の迅速な開示は当然の義務と考える。民間企業の情報公開よりも厳しくてしかるべきと思う。平成十一事業年度上半期(中間期)の財務諸表及び決算報告書は公開されるのか。公開されないとするならばその理由を示されたい。

十一、石油公団の経営体質がこれまでのように税金の投入を前提としたままでは、国家財政自体が逼迫している折、その破綻は免れない。したがって、こうした事態を回避するため、例えば、石油公団と新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)を統合し、「エネルギー公団」とし、組織自体をスリム化するとともに、日本のエネルギー政策全体を支える観点から、環境にやさしい新エネルギーの研究・調査・開発等にもその事業範囲を広げ、エネルギーのベストミックスの実現を図ることも可能であると思うが、政府の見解を示されたい。

  右質問する。