質問主意書

第146回国会(臨時会)

質問主意書


質問第一三号

愛知万博計画と新住宅市街地開発計画に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成十一年十二月十三日

中村 敦夫   


       参議院議長 斎藤 十朗 殿


   愛知万博計画と新住宅市街地開発計画に関する質問主意書

 二〇〇五年日本国際博覧会(以下「万博」という。)の計画案も大詰めを迎え、その基盤事業となる新住宅市街地開発計画(以下「新住」という。)と名古屋・瀬戸道路ほか三本の道路事業に関する環境庁長官意見、建設大臣意見がそれぞれ本年十一月までに提出された。
 この万博と新住・道路事業は、実際上一体のものとして行われており、この際、政府の見解を明らかにしておく必要があると考える。
 以上の観点から次の事項について質問する。なお、事態が切迫しているため、遅くとも国会法所定の期限内に答弁されたい。また、同様の文言が並ぶ場合でも、各項目ごとに平易な文章で答弁していただきたい。

一 構想案がほぼ固まろうとしている現在、團紀彦氏を始めとする博覧会プロジェクトチームの複数のメンバーが、通産省原案を吟味する時間が充分になかった、原案に賛同するように求められただけ、新住事業と万博がセットになっている、海上の森での開催が理解できない、開催だけが自己目的化しているなどと、万博と新住・道路事業を厳しく批判していると聞く(朝日新聞・一九九九年九月二十六日付け参照)。
 博覧会協会内部のプロジェクトチームのメンバーから、このような厳しい批判が出ていることに対し、政府の見解を明らかにされたい。

二 万博と新住・道路事業が進められている場所は、愛知県のみならず全国的にも貴重なものとして見直されつつある里山である。鷲谷いずみ筑波大学助教授は、絶滅の危機にある動植物が海上の森で四十種以上確認されており、生態学的にも第一級のホットスポットとみなされる場所であると指摘している。一方、万博は、「新しい地球創造」に加えて「自然の叡智」がメインテーマとなり、「環境万博」として広くアピールされている。
 しかし、先の朝日新聞記事などの新聞報道によると、プロジェクトチームのメンバーが、万博と新住・道路事業を切り離さなければ、本当の意味での「環境万博」を実現できないと、万博と新住・道路事業を厳しく批判している。新住・道路事業を全面的に再検討することなく、世界に誇れる「環境万博」を実現できるのか。万博と新住・道路事業とを併せて推し進める理由を具体的に明らかにされたい。

三 新住・道路事業について、その資金計画と採算の見通しを、具体的な根拠を挙げてそれぞれ示されたい。

四 万博と新住・道路事業のため、海上の森の「土砂流出防備保安林」指定解除手続が間近に迫っている。海上の森は、一級河川・矢田川の源流であり、深層まで風化した花崗岩を基盤とする、極めて崩落しやすい地質を有している。過去にも災害が頻発しており、開発するにはあまりにも危険であるが故に、保安林指定がなされている。
 しかし、万博と新住・道路事業を強行するために保安林指定を解除するというのでは、本末転倒もはなはだしく、保安林制度を真っ向から否定するものである。政府は、国民の生命と財産を守ることが第一義的な使命であると考える。よって、保安林解除を行うべきではないと考えるが、政府の見解を明らかにされたい。

五 愛知県は、アセスメントの結果とオオタカ検討委員会の結論を待たず、本年十一月から一四〇本ものボーリング調査に着手した。新住・道路事業に対しては、環境庁長官がオオタカの調査と保全後に事業を行うようにと意見を表明しているにもかかわらず、オオタカのペアリングが行われる時期にボーリング調査を始めている。
 政府は、通産省アセス手法検討委員会とオオタカ検討委員会を軽視しているのではないか。それぞれの委員の意見及び政府の見解を明らかにされたい。

六 今秋、クロード・マータン世界自然保護基金本部事務局長は、オーレ・フィリプソン博覧会国際事務局議長に、海上の森で計画されている博覧会と住宅建設が森に深刻な損害をもたらす旨の書簡を送った。世界的な環境保護団体による万博に対してのこうした強い懸念を決して軽視すべきではないと考えるが、政府の見解を明らかにされたい。

七 本年九月九日に万博の会場基本計画が公表された。それによると、海上の森地域(瀬戸市)のほか、愛知青少年公園(長久手町)や科学技術交流センター(瀬戸市と豊田市)も会場として利用するという。だが、万博の環境影響評価実施計画書は、関係地域を瀬戸市と豊田市と定めており、長久手町は含まれていない。
 博覧会協会は、評価書に影響が低減すると書かれるので、実施区域が変更になっても環境影響評価の再実施を必要としないと主張していると聞く。しかし、このような環境影響評価対象区域の増加は、環境影響評価法の規定によると、環境影響評価のやり直しが必要になる。
 よって、万博の環境影響評価の再実施が必要であると考えるが、政府の見解を明らかにされたい。

八 万博の環境影響評価は、本年六月から施行された環境影響評価法の事実上の適用第一号であり、通産省も二十一世紀の環境影響評価モデルとすると通達で述べている。しかし、関係地域が増加したにもかかわらず、環境をメインテーマとしている万博が環境影響評価の再実施を行わないことは、悪しき前例となるのではないか。環境庁長官の意見を示されたい。

  右質問する。