質問主意書

第146回国会(臨時会)

質問主意書


質問第一号

商工ローン等の諸問題に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成十一年十月二十九日

海野 義孝   


       参議院議長 斎藤 十朗 殿


   商工ローン等の諸問題に関する質問主意書

 ノンバンクによる中小企業向け保証人付き無担保融資の総称である、いわゆる商工ローンの貸出残高は、この数年間のうちに大幅に増加しているが、なかでも業界第二位の商工ファンドの融資残高は、平成八年から十一年までの三年間に、約八〇〇億円から約三二五〇億円へと四倍にも及ぶ急激な増加を示している。この急成長の背景には、銀行等の金融機関による貸し渋りがある。高金利で成り立つ会社はありえないにもかかわらず、中小企業が、「銀行の貸し渋り」にあい、無担保・保証人付きの商工ローンに飛びつくのも無理はなかった。商工ローンの急成長と並行して、返済をめぐる債務者、保証人とのトラブルも急増している。平成十年十二月には「日栄・商工ファンド対策弁護団」が結成される等、弁護士に相談する被害者も多くなっている。このような事態を踏まえて、以下質問する。

一、金融監督庁は、平成十一年九月三日及び十三日付けで商工ローン業界に対する行政指導を行ったとのことであるが、その趣旨、内容について明らかにされたい。また、今回の一連の行政指導によって、業界が具体的にどのような対応をとるものと期待されるのか見解を示されたい。

二、商工ローンを含む貸金業の金利を規制する法律には、利息制限法と出資法の二つある。元本が一〇〇万円以上の場合、利息制限法の上限金利は、年一五%、出資法は、年四〇・〇〇四%である。出資法には罰則規定があるが、利息制限法にはないため、多くの業者は、両金利の間であるいわゆるグレーゾーン金利での営業を行っているといわれる。それが著しい利鞘をもたらしている三〇%以上ともいわれる貸出し高金利である。このような金利のダブルスタンダードが放置されている理由は何か。その経緯を含め明らかにされたい。

三、グレーゾーン金利の見直しに関しては、第百四十五回国会に民主党より出資法等の改正案が提出される等、関係方面から様々な提案がなされているところである。これらの提案の基本的な趣旨は、出資法の上限金利の引下げや貸金業規制法第四十三条の「みなし弁済規定」の廃止を主な内容とするものであるが、政府として、どのような見解を有しているか示されたい。

四、トラブルの多発を看過することはできないが、商工ローンを含むノンバンクの社会的意義は一定程度認められるところであることは、第百四十五回国会でいわゆる「ノンバンク社債発行法」が成立を見たことで明らかである。一方、その「ノンバンク社債発行法」の採決にあたって、参議院財政・金融委員会では三項目からなる附帯決議を行っており、その第三項目では「出資法等で定められている金融業者の貸出金利の規制の在り方については、借手保護の視点も踏まえ検討すること。」となっている。この検討状況について明らかにされたい。

五、商工ローンを含むノンバンクの経済社会に占める位置の一定の必要性、長期にわたる公定歩合の超低金利等に鑑みれば、グレーゾーン金利での営業に対し、業者側・借り手側いずれも不透明感がつきまとうことは避けがたい。こうしたあいまいな状態を是正し、出資法と利息制限法の上限金利を一致させる方向での法改正が業者側・借り手側いずれにとっても望ましいと考えるが、政府の見解を明らかにされたい。仮に一致させ得ないとするならば、せめて出資法における金利水準の適正性を担保するために、利息制限法の上限金利に、手数料に見合った一定の金利を上乗せした金利を出資法の上限金利として採用すべきと考えるが、政府の見解を示されたい。また、借り手側の立場からは、出資法の上限金利内での更なる適正金利の追求のために、業者間の競争原理を一層働かせるべきであると考えられるが、政府の見解を示されたい。

六、日弁連は、十月二十二日の理事会で、金融監督庁に対し商工ローン業者への監督強化を求め、同問題の解決に向け、踏み込んだ対策を求める意見書を採択した。この意見書は、商工ローンに特有の制度「根保証」契約が被害を拡大させているとの認識に立ち、一定期間内ならば保証人が同契約を無条件で解約できる制度の創設を求めている。根保証契約とは、上限金額を定め、連帯保証人はその範囲内で保証するという契約である。例えば、借り主が三〇〇万円を借り、更に、その後借り主が限度枠内で追加融資を受けた場合、連帯保証人には追加融資分の返済責任も発生する。一九八三年に施行された貸金業規制法と、金融監督庁のガイドラインでは、この根保証について十分な規制がなく、貸金業者は借り主への追加融資の際、連帯保証人に対する貸付残高等の書面の交付や開示は義務付けられていない。この法律の盲点を突いて、商工ローンは、連帯保証人に高額の返済を迫っている。しかし、根保証のような極めて商業取引的色彩の強い法律関係は、日常頻繁に商取引を行っている訳ではない一般市民にとっては、よく理解するところではない。したがって、これを取引の直接当事者以外の第三者たる保証人にまで効力を及ぼすことは、一種の公序良俗違反と言うべきものと考えられる。そこで、前記の根保証契約の解約制度や、根保証の仕組みの周知義務、根保証責任の範囲の説明と明記義務、借り主に対する追加融資の際の連帯保証人への内容通知等根保証に関する規制を盛り込んだ貸金業規制法の改正も検討すべきだと思うが、政府の見解を示されたい。

  右質問する。