質問主意書

第145回国会(常会)

質問主意書


質問第三四号

ILO第百八十一号(民間職業仲介事業所)条約に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成十一年八月十三日

大脇 雅子   


       参議院議長 斎藤 十朗 殿


   ILO第百八十一号(民間職業仲介事業所)条約に関する質問主意書

一、ILO第百八十一号(民間職業仲介事業所)条約本文の正式な日本語訳について

1 adequateという言葉が条約中に五箇所出てくるが、第二条、第八条、第十一条は「十分な」と翻訳し、第十条と第十四条は「適当な」と翻訳している。訳し分けた理由は何か、政府の見解を示されたい。
2 第十一条、第十二条では、maternity protection and benefitsを「母性保護及び母性給付」と翻訳し、parental protection and benefitsを「父母であることに対する保護及び給付」と翻訳している。
 男女共同参画社会基本法が成立し、家族のかたちが多様化するなか、対象を限定しない訳語にすることが適当だと思われる。「母性」という言葉を使わず「妊娠出産における保護及び給付」にすべきではないか。また、一九九八年六月の仮訳文においてparentalは「親」という訳語を使用していたのを「父母」に変更した理由は何か、それぞれ政府の見解を示されたい。

二、労働者派遣法及び職安法改正法との関係について

 批准されたILO第百八十一号条約(以下「条約」という。)の内容と、今般成立した労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律等の一部を改正する法律(以下「労働者派遣法改正法」という。)及び職業安定法等の一部を改正する法律(以下「職安法改正法」という。)との関係について、以下の点につき、法的論拠を明らかにして、説明されたい。

1 今回の労働者派遣法改正法において、「適用対象労働者」のいわゆる「ネガティブ・リスト化」が原則とされたが、条約第二条の解釈として、この「ネガティブ・リスト化」は当然の要請となりうるのか否か、また、その解釈の論拠は何か。
2 条約第四条に規定する「労働者が結社の自由の権利及び団体交渉権を否定されないことを確保するための措置」に対応する現行国内法を具体的に明らかにされたい。
3 条約第五条に規定する差別禁止において、「性」、「年齢」、「障害」に基づく差別のない労働者の取扱いについて、今回の改正法をはじめ、具体的に国内法でどのように規定されているか。
4 条約第六条には、個人情報の保護について、「労働者の資格及び職業経験に関連する事項並びに他の直接に関連する情報に限(る)」とあるが、今回の改正法によると、実効性を確保するために、「限(る)」ための方策は何か。また、それは十分なのか。
5 条約第七条に規定する「民間職業仲介事業所は、労働者からいかなる手数料又は経費についてもその全部又は一部を直接又は間接に徴収してはならない。」について、有料職業紹介に関するこれまでの取扱いはどのようになるのか、明らかにされたい。
 従来は、一九九六年の職業安定法施行規則の改正によって、職業紹介の基本サービスに対する手数料とは別個に、求人措置や就職援助の付加的な相談・助言や、特定条件での求職者の探索・調査のサービスについては、労働大臣の承認を得て付加的な手数料を徴収できることになっていた(同規則第二十四条第十四項~第十九項)。
 しかし、本条約の批准に伴って、今後は、たとえ労働大臣の承認を受けた手数料であっても、「手数料又は経費」を徴収する形態であれば、「有料職業紹介」及び「ヘッドハンティング」等の「職業紹介」の類は、同条に抵触すると解されるのではないか。
 さらに、同条2に規定する「特定の種類の労働者及び民間職業仲介事業所が提供する特定の種類のサービスについて1の規定の例外を認めることができる。」について、「例外」をどのように解するか。また、原則との関連もあわせて明らかにされたい。
6 条約第十一条に規定する労働者の「十分な保護」について、「(a)結社の自由、(b)団体交渉、(i)支払不能の場合における補償及び労働者債権の保護」が、今回の改正法及び現行国内法でどのように保障されているのか。
7 条約第十二条に規定する「民間職業仲介事業所及び利用者企業のそれぞれの責任を決定し及び割り当てる。」について、今回の改正法及び現行国内法でどのように保障されているのか。

  右質問する。