質問主意書

第145回国会(常会)

質問主意書


質問第二七号

国旗国歌法制化に関する再質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成十一年八月五日

福島 瑞穂   


       参議院議長 斎藤 十朗 殿


   国旗国歌法制化に関する再質問主意書

 国旗国歌の法制化について七月二一日に提出した質問主意書に対し、七月三〇日に答弁書を受け取ったが、答弁はきわめて不十分な内容であり、中にはまったく答えられていない質問もあるので、以下再質問する。

一、七月三〇日答弁書によれば「政府としては、法制化に当たり、国旗の掲揚等に関し義務付けを行うことは考えていない」としている。これは、何人であれ、政府や地方自治体が主催する式典等で日の丸掲揚や君が代斉唱を求められても拒否する権利を有しているという意味と理解してよいか。

二、政府が、この法案の法制化に当たって、日の丸掲揚や君が代斉唱を義務付けることを考えないとする理由は何か示されたい。

三、かりにこの法案が、日の丸掲揚や君が代斉唱を義務付けるものであった場合、憲法第一九条の「思想及び良心の自由は、これを侵してはならない。」という規定に抵触すると考えるが、この理解に間違いないか示されたい。

四、この法案成立後において、日の丸掲揚や君が代斉唱を強制する者があった場合、その者の行為は憲法第一九条の規定に抵触する行為であると考えてよいか。

五、法案成立後に、実際に日の丸掲揚や君が代斉唱が求められる現場で、これを拒否した人間が、式典等の主催者から退場させられたり、侮辱的な対応をされた場合、退場をさせたり侮辱を行ったりした者に対する処罰等は運用上考えられているか。処罰を考えていないとすれば、その理由は何か。

六、日の丸掲揚や君が代斉唱の義務付けは考えていないという政府答弁に反して、学校現場では現在すでに日の丸掲揚、君が代斉唱の義務化、強制が事実上行われている。この義務化と強制は学校教育法に基づく学習指導要領及び地方公務員法に基づく職務命令によって行われているという理解でよいか。

七、学習指導要領について、政府は学習指導要領には学校現場における教育内容や式典の行い方等詳細にわたってすべてを規定するほどの法的拘束力をもつと考えているのか。

八、一九七六年五月二一日の最高裁大法廷判決及び一九九〇年一月一八日の最高裁第一小法廷判決における判断では、学習指導要領の法的拘束力については大綱的基準という考え方をとっている。これに関連して、以下の四点について政府の見解を示されたい。

(1) 学習指導要領には法的拘束力を有する部分と、有しない部分があるという判断は間違っていないか。
(2) 大綱的部分でなく、細かな部分については法的拘束力を持たない部分があるという判断は間違っていないか。
(3) 学習指導要領は地域及び教師の自主的教育の余地を残しているという判断は間違っていないか。
(4) 学習指導要領は教師に一方的な教育内容を強制するものではないという判断は間違っていないか。

九、地方公務員法に規定されている職務命令について聞くが、職務命令が、憲法第一九条が侵してはならないとしている「思想及び良心の自由」を侵すものであった場合、それでも職員は職務命令に従わねばならないのか。

十、政府は日の丸掲揚、君が代斉唱をめぐる学校現場の混乱を収拾するために、国旗及び国歌に関する法律案を提出したと何度も答弁している。政府の立場からは、この混乱は、日の丸・君が代が国旗・国歌とは認められないという教職員や学生、家族等の存在によって生じていることになる。では政府は、この法案が成立すれば、この人たちの考え方が変わると考えているのか。

十一、この人たちの考えが変わらなければ、学校現場の混乱は解決しないし、対立と亀裂はさらに大きく深くなり、教育の現場に及ぼす傷もますます大きくなると考えられるが、そうなってもこの法案提出には意味があったといえるのか。

十二、それとも政府は、この人たちの考えを強引に変えようとしているのか。

十三、もしそうであれば、「法制化に当たり、国旗の掲揚等に関し義務付けを行うことは考えていない」という答弁も、「現行の運用に変更が生ずることとはならない」という答弁も嘘ということになるがいかがか。

  右質問する。