質問主意書

第145回国会(常会)

質問主意書


質問第二二号

日米防衛協力のための指針と周辺事態に際して我が国の平和及び安全を確保するための措置に関する法律に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成十一年七月十三日

清水 澄子   


       参議院議長 斎藤 十朗 殿


   日米防衛協力のための指針と周辺事態に際して我が国の平和及び安全を確保するための措置に関する法律に関する質問主意書

 日米防衛協力のための指針及び周辺事態に際して我が国の平和及び安全を確保するための措置に関する法律(以下「周辺事態法」という。)に関し、国会における審議を通じても疑問が解けない事項につき以下質問する。

一 日米安全保障共同宣言(平成八年(一九九六年)四月)は、その副題に「二一世紀に向けての同盟」とあり、これは二一世紀に向けた日米防衛軍事協力関係について宣言されたものであり、新指針(平成九年(一九九七年)九月二三日に日米で合意した日米防衛協力のための指針)及び周辺事態法の基礎になっていると理解するが、他方、政府に二一世紀に向けた包括的外交政策又はビジョンがあれば示されたい。

二 日米安全保障条約の条項にない事項について、政府答弁のように同条約の「目的の範囲内」として米国に対し日本が引き受けようとしている新たな義務を負うとすれば、同条約の個々の条文及び一九六〇年安保条約改定交渉さえ意味をなさなくなると考えるが、政府の見解を示されたい。

三 周辺事態法第九条について

1 首長が政府からの協力の求めを拒否できる場合を、港湾及び空港施設の使用並びに建物及び設備等の安全等を確保するための許認可に関し具体的に例示されたい。
2 首長が協力を拒否した場合の政府による措置についてその根拠法と条文を示されたい。
3 憲法の定める地方自治の本旨から、地方議会決議や住民の請求等を根拠とした協力拒否も正当な理由となると考えるが、政府の見解を示されたい。
4 地方公共団体の輸送、給水、医療機関への患者受入れ、物品・施設の貸与について協力依頼とした理由は何か。また、第九条第一項の首長に対する協力要請との法的違いを明らかにされたい。
5 第九条第三項で協力した者の損失に関し財政上の措置が規定されているが、基地周辺住民等が殺傷された場合の損失に対しては財政措置を講ずることを考えているか明らかにされたい。
6 米軍の港湾、空港の使用により生ずる港湾、空港を通常使用している者の損失に対し財政措置を講ずることを考えているか明らかにされたい。

四 事前協議制について

1 周辺事態法にいう周辺事態の際にも、米軍の配置における重要な変更、装備における重要な変更及び我が国から行われる米軍の戦闘作戦行動は事前協議の対象と考えるが、政府の見解を示されたい。
2 我が国から行われる米軍の作戦行動に関する事前協議は、米軍の行動地域にかかわらず、例外なく実施されると理解してよいか、見解を明らかにされたい。
3 事前協議制について日本政府から発議できないとすれば、その根拠を示されたい。
4 日本周辺の事態に際し米軍の配置における重要な変更、我が国から行われる作戦行動等は国民の眼前で行われるものであり、その際にも事前協議が行われなければ、事前協議が全くのフィクションであることが明白になると考えるが、政府から事前協議を発議する考えがあるか、見解を示されたい。
5 新指針での調整メカニズム等により、日米間で調整が行われることになっているが、周辺事態法のもとでの周辺事態に際し、米国の協力要請に対し、政府が「ノー」という場合もあると考えるが、見解を示されたい。
6 新指針に関しても、事前協議制は適用されると考えるが政府の見解を示されたい。

五 新指針について

1 新指針について、国内法上及び国際法上の位置付け、定義及び効力について政府の見解を示されたい。
2 新指針と周辺事態法とはどのような法律的関係にあるか政府の見解を明らかにされたい。
3 新指針にある事項で周辺事態法に規定されなかった事項の国内法上及び国際法上の効力について政府の見解を示されたい。
4 指針見直しに関する閣議決定の内容(閣議了解、報告の了承を含む。)を示されたい。
5 指針関係閣僚懇談会の設置根拠、構成、開催状況、協議及び申合せの概要を示されたい。
6 橋本総理談話(平成九年(一九九七年)九月二九日)にある「先般の閣僚懇談会」とは、いつ誰が行ったものか。またその議論の内容について示されたい。
7 日米安全保障協議委員会が平成九年(一九九七年)九月二三日新指針を承認するに際し、内閣はいかなる意思決定をしたか示されたい。
8 日米安全保障共同宣言以降、周辺事態法案の国会提出までの間に防衛協力に関連する日米両国間の行政協定、閣僚級の交換書簡、その他の国際約束があれば示されたい。
9 新指針実施のための共同作業において平素から確立される「共通の基準」は、日米両国政府でどのように取り決められるか明らかにされたい。
10 「共通の実施要領等」については、どのような形で定められるか明らかにされたい。あわせて「等」に含まれるものを例示されたい。
11 「それぞれの部隊の活動を適切に律するための基準」とは何か示されたい。その策定手続きについてもあわせて示されたい。
12 新指針は英文のテキストにつき米側と交渉し、平成九年(一九九七年)九月二三日の日米安全保障協議委員会で合意されているが、衆参両議院における新指針関連の案件の審議には、もっとも重要な資料である英文の新指針が提出されなかった。不提出の理由を明らかにされたい。
13 平成九年(一九九七年)九月二九日の閣議で報告された新指針は日本語訳であるが、この訳文について責任を負うのは外務大臣(当時は小渕恵三外相)なのか。責任者及び所管を明らかにされたい。
14 日米安全保障協議委員会で承認された新指針には、了解覚書等新指針の解釈と実施に関する附属文書があるか、その存否と、あれば内容を示されたい。
15 英文において旧指針では「joint」とされていたのが、新指針では「bilateral」に変わっているにもかかわらず、日本文ではともに「共同」の訳語が用いられているが、その理由を明らかにされたい。

六 所管について

1 閣議付議事項の記録では新指針の所管省庁は外務省、防衛庁の順となっているが、「日米防衛協力のための実効性の確保について」は防衛庁、外務省の順となっているのはなぜか、その法的根拠を示されたい。
2 昭和五三年(一九七八年)の旧指針について、その主務官庁と防衛庁の所掌について示されたい。
3 周辺事態法の所管が防衛庁とされた経緯、その法的根拠を防衛庁設置法を含め示されたい。

  右質問する。