質問主意書

第145回国会(常会)

質問主意書


質問第一七号

在留特別許可に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成十一年四月二十二日

照屋 寛徳   


       参議院議長 斎藤 十朗 殿


   在留特別許可に関する質問主意書

 去る三月十七日、参議院予算委員会における在留特別許可(以下「在特」という。)についての私の質疑に対し、陣内孝雄法務大臣は、中村正三郎前法務大臣(以下「前法務大臣」という。)の取組の結果を十分に分析し、検討する旨答弁した。また、陣内法務大臣は四月八日、法務大臣室にて右結果についての私の質疑について、要旨、以下のとおり説明した。

(1) 前法務大臣の決裁については、妥当であったかどうか検討中である。
(2) 入国管理局の所管する事務に関する通達や内部基準については、公開を積極的に検討する。
(3) 法務大臣裁決に関する諸通達については、見直しを指示している。
(4) 前法務大臣が直接決裁した不許可処分に関する行政訴訟の原告についての仮放免、特別放免は司法判断を待って検討する。

 在特は、在留資格のない外国人であっても、日本人と婚姻している等の特別な事情のある場合は、右事情を考慮し、当該外国人に対し、「日本人の配偶者等」等の在留資格を与える処分であるが、右のような特別事情を有する外国人の人権、日本も加入する「市民的及び政治的権利に関する国際規約」第十七条によって保護されることが国際的に認められている家族的結合及び外国人と結婚した日本人の婚姻生活を送る権利に鑑みれば、偽装結婚は別として、日本人と婚姻した全ての外国人に在特が与えられるべきである。現に、前法務大臣就任前には、それらの外国人に対し、一九九六年には千五百九十八件、一九九七年には千五百五十一件の在留許可処分がなされている。前法務大臣の思いつきで在特の運用を後退させてはならないのであって、今後、国際結婚をした家庭を従来以上に保護することが望まれる。
 また、前法務大臣は新聞報道にもあるとおり、事件記録も十分に検討せず、大量の在特不許可処分(出入国管理及び難民認定法(以下「入管法」という。)四十九条三項の「異議の理由がない」との裁決)をした疑いが強い。その結果、多数の行政訴訟が提起されているところ、そのほとんどの原告が身柄を収容されたままである。収容の継続は当該外国人の権利を損ない、その配偶者である日本人の生活を破壊しかねないものである上、行政訴訟の遂行に支障を来し、当該外国人及びその配偶者である日本人が在特不許可処分を争う機会を奪いかねない。現に、右の不許可処分を受けた外国人の多くは、身柄拘束による拘禁反応のため本国送還を受け入れ、多数の婚姻生活が破壊された。以上に鑑みれば、少なくとも行政訴訟が係属している事例については、本案訴訟の判決が確定するまで身柄を解放するべきである。右の措置は入管実務上特段の問題はなく、かえって入管法五十二条六項の趣旨に添うものである。
 さらに、裁判所による送還停止決定のあった事例については、長期にわたる訴訟期間中、結論を保留して当該外国人及び日本人の婚姻生活を不安定な状態にとどまらせることは人道上大きな問題があるので、前法務大臣がした不許可処分を撤回し、在特処分を行うことにより早期救済を図るべきである。伝え聞くところによると、入管局内部でも早期救済に前向きな意見もあるが、訴訟担当者が早期救済に反対しているとのことである。
 よって、次の点について質問する。

一、在特に関する全通達及び内部基準を明らかにされたい。

二、現在検討の対象とされている通達及び検討の方向を明らかにされたい。また、検討の終了したものについては、その検討結果を明らかにされたい。

三、在特手続(退去強制手続)における審判の結果につき一九九八年中に法務大臣宛に提出された異議の件数及び在特不許可処分の件数を明らかにされたい。

四、前法務大臣が直接決裁した在特不許可の件数及び各案件についての不許可の理由を明らかにされたい。

五、現在係属中の入管法上の処分に関する行政訴訟の件数及び右のうち前法務大臣の在任中の処分にかかわる訴訟件数を明らかにされたい。

六、前法務大臣が直接決裁した在特不許可処分の当否に関する調査結果を明らかにされたい。

七、在特不許可処分に関する行政事件が係属中の案件につき、どのような基準で仮放免ないし特別放免を行うのか、また、現在、何件が仮放免ないし特別放免中であるのか明らかにされたい。

八、在特不許可処分に関する行政事件が係属中の案件につき、どのような基準で、再度、在特を許可する法務大臣決裁を行うのか、各案件につき再度の法務大臣裁決の可否及びその理由を明らかにされたい。

  右質問する。