質問主意書

第145回国会(常会)

質問主意書


質問第一一号

コンピュータ西暦二〇〇〇年問題への政府の対応に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成十一年三月十六日

日笠 勝之   


       参議院議長 斎藤 十朗 殿


   コンピュータ西暦二〇〇〇年問題への政府の対応に関する質問主意書

 平成十一年一月二十九日に、コンピュータ西暦二〇〇〇年問題への政府の対応に関する質問主意書に対する答弁書(内閣参質一四四第一一号)が提出されたが、いまだ以下のような不明点等があるため、再質問する。

一、二〇〇〇年問題についての政府の対応については、全般的には対応が進められていることは理解できるが、人命の安全に関わる航空分野での対応の遅れが特に心配である。答弁書によると、航空管制システムについては本年六月末までに対応が完了することになっているが、重要と考えられるシステムにおける模擬テストの進捗率が、平均で四十パーセントの水準では、計画的な取組が進展しているとは言えないのではないか、政府の見解を明らかにされたい。
 また、諸外国とのグローバルネットワークでの模擬テストの実施について、「航空管制分野において、日米航空当局間で昨年十月に接続確認テストを実施し、問題が発生しないことを確認する等の取組を行っている」としているが、米国以外の国との模擬テストの実施も必要ではないのか。政府の見解を示されたい。
 さらに、金融情報通信等の分野では「国際的な共同模擬テストを必要とするシステムは存在しない」としているが、インターネットを通じてのクレジット決済などグローバルネットワークでの問題は少なからず存在すると考えられる。「テストを必要とするシステムは存在しない」とする根拠について明らかにされたい。

二、中央省庁、特殊法人等の優先システムの模擬テストの実施について、「実施時期が明らかでないものもみられる」とし、「本年度内に、改めて対応状況の調査を行い、中央省庁、特殊法人等における模擬テストの実施状況等について把握する」としているが、再調査の結果においても実施時期が明らかでないもの、あるいは六月末までに実施できないとするものがあった場合、政府はどのような対応をするのか示されたい。

三、金融機関に対する政府ないし第三者機関によるチェックについて、「民間専門家四名を登用し、主要行を中心に集中的な検査を実施している」とのことであるが、このような少人数の体制で徹底した検査を実施することは、はたして可能であるのか疑問である。また、米国からは日本の銀行の対策費が少なすぎると指摘されているが、この米国の指摘に対する政府の見解を明らかにされたい。
 さらに、政府による積極的検査が求められているのは主要行より、むしろスタッフ、予算等が充分でない中小の金融機関の方ではないかと考えるが、政府の対応を明らかにされたい。加えて金融以外の他の民間重要分野についても同様のチェックを行う必要があると思われるが、政府の考えを示されたい。

四、米国国務省が本年一月二十九日、内外の米国人に対し今年末から年始にかけ海外旅行に特別の注意を払うように警告している。また、FRB(米連邦準備制度理事会)議長は、二月二十三日に、銀行等の利用者の不安感を取り除くため年末年始にかけての通貨供給を二千億ドル拡大する計画を明らかにしている。我が国においてもそのような対策を講じるべきであると考えるが政府の見解を示されたい。
 さらに、危機管理体制の構築について、政府関係機関や企業における危機管理計画の策定の徹底を促すとしているが、危機管理の面では二〇〇〇年を目前にした時にパニックを起こさないために、個人、一般消費者用の二〇〇〇年問題発生時の対応のためのマニュアル等を作成すべきではないか、政府の見解を示されたい。

五、「九九」がコンピュータ制御の特別の番号として使用されていたことにより、二〇〇〇年を前にすでに船舶の計器や通信機器に異常が起きたり銀行での送金ができなかったり、又は情報が消えたとの事例が伝えられている。人命にかかわる重大事故ではなかったため事なきを得たが、政府はこのような件についてどのように分析しているのか。また、一九九九年に起きる可能性のある、いわゆる「九九問題」について広く一般に周知する必要があると考えるが、政府の方針を示されたい。

六、二〇〇〇年は西暦の下二けたが「〇〇」で終わる年のうち、四〇〇年に一度の閏年であるが、ほとんどのコンピュータはこの四〇〇年ルールをプログラムしておらず、二〇〇〇年は二月二十八日までしか設定されていないといわれている。従って日付が一日早まってしまう問題が生じる。この問題に対する政府の対応を示されたい。

七、航空機及びその制御装置、医療機器等に埋め込まれたマイコンチップについて重大な問題を有する装置等は確認されていないとの答弁であるが、その後、厚生省の行った調査によれば、一部の医療機器について「二〇〇〇年一月一日に止まる」等の問題のあることが判明したとのことである。航空機及びその制御装置、医療機器等に埋め込まれたマイコンチップは膨大な量である。その確認についていかなる調査を行っているのか明らかにされたい。

八、現在の政府の対応は各省庁別の対応が中心となっているが、西暦二〇〇〇年問題は複合的な作用により、一層深刻な問題を生ずる可能性もあり、総合的な観点から危機管理計画を作成することが肝要と思われる。例えば、長時間電力供給が止まり、コンピュータの無停電装置の能力を超えるような停電になった場合のコンピュータシステムの安全性、あるいは、エレベータが作動しなくなった救急病院の代替病院の指定といったような問題は、エネルギー、医療といった各分野別の対応では想定しづらい問題と思われる。こうした複合的な作用から生ずる問題に対し、政府はどのような危機管理計画を策定しているのか示されたい。

九、最後に国際的課題について伺いたい。

イ 日本は食糧や資源の海外依存度が極めて高い国である。日本に大量の輸出をしている国で二〇〇〇年問題の発生による混乱が起きれば日本への影響も当然考えられる。また、輸送船舶はコンピュータ化による自動化が進んでおり、日本への輸送船舶における二〇〇〇年問題の発生が危惧される。我が国との関係の深い海外諸国及び輸送船舶の二〇〇〇年問題への対応のための海外支援について政府の対応を示されたい。
ロ NATO(北大西洋条約機構)では「ロシアが抱える大量の核弾頭ミサイルが二〇〇〇年のコンピュータの誤作動で発射される恐れがある。」との予測を発表し、日本にも飛来する可能性があると言われている。また、CIA(米中央情報局)はロシアの早期警戒システムのデーター処理に手違いが起きる恐れがあると指摘している。政府は我が国の防衛という観点からこのような問題に対してどのような対策を講じているか示されたい。

  右質問する。