質問主意書

第145回国会(常会)

質問主意書


質問第九号

東京の廃棄物問題に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成十一年三月九日

中村 敦夫   


       参議院議長 斎藤 十朗 殿


   東京の廃棄物問題に関する質問主意書

 平成十年十一月十一日、福島県の行政代執行により、福島県いわき市の山林に野積みで放置された産業廃棄物(以下「産廃」という。)の撤去が開始された。この産廃は、民間業者によって主に首都圏から持ち込まれたことが判明している。このように、大都市から発生する廃棄物に起因する争議が全国各地で起こっており、国民生活の様々な側面に影響を与えている。それは、日本最大の都市である首都東京においても例外ではない。埼玉県の調査によると、中間処理のために流入する産廃は年間三百万千トンにのぼり、そのうち約七割の二百十六万千トンが東京都からのものであるという。今や、東京の廃棄物問題は東京都民だけではなく、国民が共通して関心を抱いている問題である。
 こうした状況を踏まえ、国政の立場から東京の廃棄物問題を解決に導くためには、生産・中間処理・最終処分という廃棄物の流れを明らかにして発生予防のあり方を探ることと、個々の争議の事実関係を整理して廃棄物問題特有の問題点を明確にすることの、マクロ・ミクロ両面からのアプローチが不可欠であると考える。
 以上の観点から、次の事項について質問する。

一 政府の廃棄物問題に対する取組について

 平成十年十一月十六日、政府は経済対策閣僚会議において総額二十三兆九千億円を上回る過去最大の緊急経済対策を決定した。このうち、一般公共事業には約五・七兆円、住宅投資の促進には約一・二兆円が計上されている。この対策が多くの建設工事を誘発し、大量の建設廃棄物(以下「建廃」という。)を発生させることは容易に想像できる。特に建築物の更新に伴う解体時に行われるいわゆる「ミンチ解体」を放置すれば、産廃の発生量、すなわち焼却量及び処分量を増加させることは確実である。政府は、この緊急経済対策を決定するにあたり、分別解体のルール化やリサイクル促進策などの特別の建廃対策を講じたのか。対策を講じたのであれば、その概要を示されたい。そうでなければ、建廃をはじめとする産廃が大きな社会問題となっているにもかかわらず、あえて対策を講じなかった理由を明らかにされたい。

二 ダイオキシン対策閣僚会議について

 民間投資が冷え込むなか、日本経済を牽引する役割を担ってきたのが、着実な公共投資であることは政府が認めるところであろう。事実、ここ数年来、度重なる景気刺激策が政府によってなされてきた。それら景気刺激策の主要な柱が、公共事業と住宅投資促進策である。しかし、これらの方策を促進させれば、一で指摘したように産廃の焼却量を増加させ、ダイオキシン問題を深刻化させるおそれがある。このような状況の下で、ダイオキシン対策閣僚会議(以下「閣僚会議」という。)は、産廃焼却施設が集中する所沢地域の農作物ダイオキシン汚染報道をきっかけにして発足した。産廃には、建廃が多く含まれている。今までの景気刺激策と閣僚会議設置との間に、明確な整合性があるのか、政府の見解を明らかにされたい。

三 産廃問題における政府と首都圏自治体との関わりについて

1 首都圏を発生源とする産廃の多くが、他地域に運ばれて中間処理・処分されている。また、ごみ焼却に伴う焼却灰や溶融灰で、東北地方や中部地方等で最終処分されているものもある。昭和六十二年の厚生省及び運輸省の連名通知「東京湾フェニックス計画に係る基本構想」に見られるような、首都圏一体となった取組により、圏外への流出を抑制する方策が必要となっていると思われるが、政府として何らかの対策を講じているのか。講じているならば、その概要を明らかにされたい。そうでなければ、対策を講じていない理由を明らかにされたい。
2 首都圏を発生源とする産廃に関して、政府は産廃の発生を抑えるために必要な措置を講じるよう東京都等首都圏の自治体と調整を行ったのか。調整を行ったならば、その概要及び結果を明らかにし、首都圏自治体の取組に対する認識を示されたい。そうでなければ、調整しない理由を明らかにし、首都圏自治体の産廃発生対策への認識を示されたい。

四 東京湾の廃棄物処分場について

 私は、平成十年十二月九日に「東京湾のゴミ処分場建設に関する質問主意書」を提出した後、十二月二十一日に東京湾新海面処分場Bブロック(以下「Bブロック」という。)への現場視察を行った。東側、南側、西側それぞれにケーソンのひび割れや鋼矢板の波打ちが見られた。特に西側護岸は、ケーソン間の段差が約十センチもあり、尋常な状態でないことを確認した。以下、視察で判明した問題点について政府の見解を伺いたい。

1 政府は、Bブロック各護岸の沈下データに関して、東京都から提出を受けているか。受けているならば、その概要を明らかにされたい。そうでないならば、データが国庫補助事業の根幹に関するにもかかわらず、提出を受けていない理由を明らかにされたい。
2 Bブロックの工事で事前混合処理土を投入した際、計画時の想定と違ってケーソン及び鋼矢板が沈下したことに関して、政府は対策を講じる予定があるのか。あるとすればその概要について、ないとすればその理由について明らかにされたい。また、東京都は対策を講じる予定があるのか。あるとすればその概要について、ないとすればその理由について、政府はどのように把握しているのか明らかにされたい。
3 Bブロックの工事に関する情報開示について、政府はこれを積極的に行う用意があるのか明らかにされたい。行わないならば、その理由について明らかにされたい。また、Bブロックの工事に関する情報開示について、東京都がこれを積極的に行う用意があるのかどうかについて、政府はどのように把握しているのか明らかにされたい。行わないならば、その理由について政府はどのように把握しているのか明らかにされたい。
4 現場視察の際、稼働中の中央防波堤処分場において、覆土した焼却灰が掘り起こされて野ざらしとなっている光景を随所で目撃した。風向きによっては灰が、神奈川・千葉両県にも及ぶことが強く懸念されるため、東京都の事業とはいえ、沿岸都県住民の健康を考慮するならば政府としても決して無視できない問題である。政府は、本処分場の焼却灰の処理についてこのような現状を把握しているか。把握しているならば、政府として対策を講じたか。対策を講じたなら対策が問題の解決に至っていない理由を示されたい。対策を講じていないならば、その理由を示されたい。また、このような現状を把握していないならば、今まで現状を把握できなかった理由を示されたい。
 また、周辺における大気や海、沿岸地域においてダイオキシン調査を行ったのか。行ったならば、調査の概要と結果を明らかにされたい。行っていないならば、あえて調査もせずに放置していることの理由を明らかにされたい。

五 都区制度改革に伴う清掃事業の移管について

 渋谷区への清掃事業移管に関連して、平成三年十月に東京都が、以前から同区が要望していた代々木公園B地区ではなく、渋谷東地区に新焼却工場を建設することを発表した。だが、計画によると渋谷東地区の焼却能力は日量二百トンしかなく、同区のごみ排出量約四百四十トン/日を大きく下回り、代々木公園B地区の六百トン/日(計画)からは遥かに下回っている。これでは、都区制度改革の基本方針である自区内処理は全く不可能である。

1 予定地は目黒清掃工場とも近接しており、住民が健康被害を心配している。この集中立地は、廃棄物処理法第九条の四で規定している「周辺地域への配慮」の面から問題がないか、政府の見解を示されたい。
2 同区が適切な用地を要望していたにもかかわらず、渋谷東地区に決まったのはなぜか。平成五年からの用地買収では、路線価を大幅に上回る価格で買収していたとの指摘がなされている。用地の選定と買収の経緯について、政府はどのように把握しているのか、それぞれ具体的に示されたい。

六 地方自治体の廃棄物行政と国庫補助との関係について

 自治体事業に対する補助金交付は、「補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律」(以下「補助金適正化法」という。)に基づき執行することが定められている。以下、平成九年度における東久留米、田無、保谷、清瀬の四市で構成する柳泉園組合に対しての施設整備計画に関する補助金交付について伺いたい。

1 柳泉園組合は、ごみ処理施設建設に伴い、東京都に提出した建築確認申請書、建築工事届、特定施設届出書、煤煙発生施設届出書の各届出書において、いずれも着工を平成十年四月一日としている。また同年四月二十三日に、建築基準法に基づく建築確認が東京都によってなされている。これらはいずれも平成九年度中に建設着工がなされていないことを示しており、政府がこのことを承知していたのか明らかにされたい。
2 柳泉園組合は、建設着工を平成十年度とした1の各届出書を平成十年二月に東京都へ提出した後の、平成十年三月十日の国庫補助金交付申請書において、平成九年度に柳泉園組合敷地内で、建物内に設置される燃焼設備である燃焼用火格子支持架台の工事を行うとしている。これらは明確に矛盾しているが、政府はこのことを承知していたのか。また、建物が未着工であるにもかかわらず燃焼設備工事が国庫補助となった理由及び政府における本件での補助金交付決定権者を明らかにされたい。
3 平成十年三月十日の国庫補助金交付申請では、平成九年度の補助対象事業として、共通仮設費、現場管理費、一般管理費等を計上している。建築確認が平成十年度であるにもかかわらず、建物完成後に工事が行われる燃焼設備の工事関係費が、建物着工前に補助対象事業となっていることの理由を明らかにされたい。
4 従来厚生省は、施工実績に対してのみ補助金交付を行ってきた。だが、本件では燃焼設備の「部品生産」に対し補助金交付を行っている。なぜ、厚生省が本件に限り施工実績によらず「部品生産」に対し補助金交付を行っているのか、理由を明らかにされたい。
5 補助金適正化法では、虚偽の申請によって補助金の交付を受けることを、罰則を設けて禁じている。政府は、補助金適正化法に基づき、関係者に対し必要な措置を講じるのか、明らかにされたい。そうでない場合は、本件が補助金適正化法に違反していないことの具体的な根拠を明らかにされたい。
6 政府は、本件における平成九年度国庫補助を取り消すのか、明らかにされたい。また、平成十年度の補助金交付を見直すのか、明らかにされたい。
7 平成十年十二月の柳泉園組合議会において、ごみ処理施設計画の事業変更が決定され、現在設計変更中である。政府がこの計画への平成十一年度国庫補助を前倒しして、平成十年度に補助金交付を行うと聞くが事実か。事実ならば、平成十一年度事業が変更となって補助内示すら行われていないにもかかわらず、補助金交付を行うことになる。前倒し交付が事実ならば違法支出ではないか、政府の見解を伺いたい。

  右質問する。