質問主意書

第144回国会(臨時会)

答弁書


第百四十四回国会答弁書第一四号

内閣参質一四四第一四号

  平成十一年一月二十二日

内閣総理大臣 小渕 恵三   


       参議院議長 斎藤 十朗 殿

参議院議員加藤修一君提出海外での廃船処理による公害等に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。


   参議院議員加藤修一君提出海外での廃船処理による公害等に関する質問に対する答弁書

一について

 外国における環境汚染の実態調査については、当該国が自ら行うものであり、我が国が独自の判断によって行うものではないと考えている。

二について

 日本企業が船舶解撤促進助成金の交付を受けて海外において行った船舶の解撤事業について、解撤を行った場所ごとの隻数並びに解撤された船舶の総トン数、国籍、船齢及び最終の出港地は、別表のとおりである。

三について

 船舶の解撤事業を行う者が当該事業が行われる国の環境基準を遵守することは、船舶解撤促進助成金の交付に当たって環境基準の遵守を条件とするまでもなく、当然のことであると考える。

四について

 有害廃棄物の国境を越える移動及びその処分の規制に関するバーゼル条約(平成五年条約第七号。以下「バーゼル条約」という。)は、有害廃棄物等の国境を越える移動及びその処分の規制について国際的な枠組みを定め、これらの廃棄物によってもたらされる危険から人の健康及び環境を保護することを目的とするものである。
 アスベスト又はポリ塩化ビフェニル(以下「PCB」という。)を含む物質又は物体は、バーゼル条約の規制の対象となる「有害廃棄物」に該当し得るものである。一般に、アスベスト又はPCBを含む備品が存在する船舶が、解撤を目的として国境を越える移動がなされる場合で、当該備品の処分をも目的の一つとしている場合には、バーゼル条約の規定に従って、輸入国である締約国に対し当該移動の計画を通告し、その同意を得る等の手続をとる必要があると考える。
 また、解撤目的になっていないものが現地到着後即座に解体作業に移されることもあるとの御指摘に関しては、そのような事例の有無を含め実態の把握につき検討してまいりたい。

五について

 平成十年四月から施行している外国為替及び外国貿易法(昭和二十四年法律第二百二十八号。以下「外為法」という。)においては、内外資本取引等の一層の自由化のため、対外直接投資を原則として事後報告制としているが、一部の制限業種に属する事業に係るものについては事前届出制としている。具体的には、外為法第二十三条第一項の規定により、居住者は、対外直接投資のうち同条第四項第一号に掲げる「我が国経済の円滑な運営に著しい悪影響を及ぼすことになる」事態を生じるおそれがあるもの又は同項第二号に掲げる「国際的な平和及び安全を損ない、又は公の秩序の維持を妨げることになる」事態を生じるおそれがあるものを行おうとするときは、あらかじめ、大蔵大臣に届け出なければならないこととされており、大蔵大臣は、当該対外直接投資が行われた場合には、同項各号に掲げるいずれかの事態を生じ、外為法の目的を達成することが困難になると認められるときに限り、当該対外直接投資の内容の変更又は中止を勧告することができることとされている。このうち、同項第二号に掲げる事態を生じるおそれがある対外直接投資は、外国為替に関する省令(昭和五十五年大蔵省令第四十四号)第二十一条第三号から第五号までに掲げる制限業種に属する事業に係る対外直接投資とされており、同令に掲げられている業種は、現在、武器の製造業、武器製造関連設備の製造業及び麻薬等の製造業に限られている。したがって、現行法令上、海外に進出する日本企業が当該進出先の国で行う事業により環境問題を引き起こすおそれがあるとの観点からは制限業種は定められていない。
 一般に、企業が事業活動を行う場合において環境保全に留意することは重要であり、これは海外に進出する場合であっても同様と考えられるが、外為法に基づく環境保全を図るための対外直接投資の規制については、(1)環境保全については、国際的な取組に配慮しつつも、世界全地域に多数の投資家が存在する以上、投資国側での規制は実効性上限界があり、基本的には、当該進出先国の環境規制によることが適当と考えられること、(2)外為法の基本的な考え方は内外資本取引等の自由化を原則としており、外為法に基づく規制は、その法目的に照らして必要最小限の範囲とすることが適当と考えられること等から慎重に判断する必要があるものと考える。

別表 1/4

別表 2/4

別表 3/4

別表 4/4