質問主意書

第144回国会(臨時会)

答弁書


答弁書第一二号

内閣参質一四四第一二号

  平成十年十二月二十五日

内閣総理大臣 小渕 恵三   


       参議院議長 斎藤 十朗 殿

参議院議員緒方靖夫君提出東京・武蔵府中税務署における修正申告書偽造事件に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。


   参議院議員緒方靖夫君提出東京・武蔵府中税務署における修正申告書偽造事件に関する質問に対する答弁書

一について

 平成十年九月十八日に、御指摘の事件に係る納税者のうち一名が東京国税局武蔵府中税務署を訪れ、納税者本人名義の修正申告書の閲覧を行った際に、修正申告書の住所、氏名等の筆跡は自分のものではないとの申立てを行ったため、東京国税局武蔵府中税務署において直ちに事実確認を行い、当該納税者の調査を担当した職員に事情説明を求めたところ、翌十九日に、当該職員が修正申告書を作成した上で納税者自身がこれを提出したかのごとく装ったこと及び他に同様の事案が一件あることが判明した。このため、週明けの二十一日及び二十二日に、東京国税局武蔵府中税務署総務課長及び個人課税第一部門統括国税調査官がこれらの納税者の方々それぞれの自宅に赴き事実関係を説明し、遺憾の意を表した。また、これらの納税者の方々には、修正申告に係る所得税の督促状及び加算税の賦課決定通知書が送付されていたほか、所得税の修正申告に伴う地方税の賦課決定等も行われていたため、直ちに所要の手続を開始し、二十五日に、東京国税局武蔵府中税務署個人課税第一部門統括国税調査官が、これらの納税者の方々それぞれの自宅に改めて赴き、督促状の全部取消通知書及び加算税の賦課決定処分の取消通知書を交付するとともに、改めて遺憾の意を表した。さらに、二十八日及び十月五日に地方税の還付手続が行われたことを確認し、国税、地方税ともに所要の措置を完了したところである。
 また、当該職員に対しては、国税庁監察官が厳正な調査を行い、当該職員が国家公務員法(昭和二十二年法律第百二十号)に違反する行為を行っていた事実を確認したことから、調査結果に基づき懲戒処分を行うとともに、指導監督等が不十分であったと認められる監督者に対しても、厳正に処分を行ったところである。
 今回の事件は、国民の税務行政に対する信頼を著しく損なうものと考えている。国税庁としても厳粛に受け止めており、誠に残念なことであると考えているところであり、今回の事件を踏まえ、事務管理の一層の徹底を図るよう各国税局等に対し改めて指示を行ったところである。今後このような事件が起こらないよう税務行政の適正な執行に努めてまいりたい。

二について

 国税庁においては、大蔵省設置法(昭和二十四年法律第百四十四号)に基づき、職員についてその職務上必要な監察及び職員の職務に関する犯罪の捜査等を行うために、刑事訴訟法(昭和二十三年法律第百三十一号)に規定する司法警察員に準じた捜査等の権限を有する国税庁監察官が設置されており、国税庁監察官は、犯罪の捜査に関し、他の捜査機関と協力することとされているところである。
 なお、個別の事案の処理については、答弁を差し控えたい。

三について

 過去における事例としては、昭和五十九年に関東信越国税局所沢税務署、昭和六十年に福岡国税局筑紫税務署、昭和六十一年に大阪国税局東大阪税務署、平成元年に札幌国税局札幌西税務署、平成四年に福岡国税局福岡税務署において、それぞれ調査担当職員が修正申告書を作成した上で納税者自身がこれを提出したかのごとく装った事実が判明したことを把握しているところである。

四について

 このような事件は、税務行政において本来起きてはならないものであるが、個々の事件の背景には、個人的な事情など様々な事情があったものと考えている。
 また、修正申告書は、税務調査の結果、納税者の申告額が過少であることが判明した場合に、調査結果を十分納税者に説明した上で納税者が自主的に提出するものであり、税務職員がその提出を強要するというものではない。

五について

 税務行政の適正な執行については、常日頃から会議、研修等を通じ職員の指導に努めているが、今後このような事件が再発しないよう国税組織全体として取り組んでいかなければならないと考えている。
 このため、国税庁においては、今回の事件を踏まえ、統括国税調査官等が税務調査の進ちょく状況を的確に把握し、担当者に対して明確な指示を行うこと、修正申告書等の収受の方法を工夫することなど事務管理の一層の徹底を図るよう各国税局等に対し改めて指示を行ったところである。