質問主意書

第144回国会(臨時会)

答弁書


第百四十四回国会答弁書第一号

内閣参質一四四第一号

  平成十一年一月二十九日

内閣総理大臣 小渕 恵三   


       参議院議長 斎藤 十朗 殿

参議院議員但馬久美君提出高齢者対応住宅問題に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。


   参議院議員但馬久美君提出高齢者対応住宅問題に関する質問に対する答弁書

一の1について

 御指摘の「スケルトン方式」(以下「スケルトン方式」という。)とは、建築物の建設に当たって、柱、床、はり等の建築物の構造部分(以下「構造部分」という。)と内装、間仕切壁等の造作(以下「造作」という。)とを分離して計画する技術をいう。

一の2について

 スケルトン方式により計画された建築物については、通常の鉄筋コンクリート造の建築物と比較して、構造部分の耐久性を高めること並びに二重床及び二重天井の仕様とすることに伴う建設費の増大が予想されるが、御指摘の「費用面でどれだけの違いがあるか」は現時点では不明である。

一の3について

 木造住宅の耐用年数を百年とすることの技術的可能性については、いまだ研究の段階にある。例えば、建設省においては、平成十年度から三か年の計画で、官民連帯共同研究「木造住宅の長寿命化・ストック化技術の開発」に取り組んでいるところである。

一の4について

 建設省においては、環境問題にも対処しつつ、二十一世紀を通じて良質な資産として長期に活用し得る集合住宅の整備の促進を図る観点から、スケルトン方式は積極的に研究を推進すべき技術であると考えている。このため、平成九年度から五か年の計画で、総合技術開発プロジェクト「投資効率向上・長期耐用都市型集合住宅の建設・再生技術の開発」として、構造部分と造作とを構造的に分離し、別個に供給するために必要となる新たな技術の研究開発を行っているところである。

一の5について

 御指摘のような各省にまたがるプロジェクトは存しない。

二の1について

 住宅・都市整備公団が建設し、管理する住宅(以下「公団住宅」という。)は、我が国の住宅需要に対応して、住宅・都市整備公団法(昭和五十六年法律第四十八号)第一条の目的に従い適切に供給を行っていく必要があるものであり、住宅需要の動向にかんがみれば、公団住宅の空き家についても、その用途を変更して入浴サービスの用に供することは適当でなく、引き続き住宅として管理を行っていくことが必要と考えている。
 一方、新たに公団住宅を建設するに当たっては、高齢化の進展に対応するため、今後とも、老人福祉法(昭和三十八年法律第百三十三号)による介護の措置等の実施者である市町村等と連携しつつ、公団住宅と入浴サービスを提供する老人福祉施設等との併設等を図っていきたいと考えている。
 なお、要援護状態にある者に対する老人デイサービス運営事業の一環として市町村が自ら、又は社会福祉法人等に委託して提供する入浴サービスについては、老人福祉法第二十条の二の二に規定する老人デイサービスセンター以外の入浴等の便宜を適切に供与することができる施設において提供されるものに対しても、その運営費を国庫補助の対象としているところである。

二の2について

 政府としては、高齢化の進展に対応し、高齢者、身体障害者等が安全かつ快適に生活することができる生活環境を整備することが極めて重要な課題であるとの認識から、次のような施策を推進しているところである。
 住宅に関する施策としては、住宅のバリアフリー化を進めるため、公営住宅、公団住宅及び地方住宅供給公社の供給する住宅(以下「公営住宅等」という。)について、高齢者、身体障害者等に配慮した住宅を標準仕様として順次供給している。また、民間住宅についても、平成七年に「長寿社会対応住宅設計指針」(以下「指針」という。)を策定し、身体機能が低下しても住み続けることができるような設計上の配慮事項を示すとともに、住宅金融公庫及び年金福祉事業団の融資においても、指針に沿った住宅に対して金利の優遇及び割増融資を行っているところである。さらに、平成十二年四月から施行される介護保険制度においても、介護を要する状態となっても住み慣れた住宅で暮らし続けることができるよう、手すりの設置等の一定の住宅改修に要する費用を介護給付の対象とすることとしている。
 また、公営住宅等を建設する際の社会福祉施設等の併設、生活援助員の配置等による高齢者世話付き公営住宅の整備の推進、高齢者向け優良賃貸住宅制度の創設による民間の土地所有者等による高齢者向け賃貸住宅の供給促進等の施策を実施している。
 市街地における施策としては、動く通路、エレベーター等の高齢者、身体障害者等の安全かつ快適な移動を確保するための施設等の整備に対する補助を行っているところである。
 今後とも、これらの施策を積極的に推進し、高齢者、身体障害者等が安全かつ快適に生活することができる生活環境の整備を進めていくこととしている。

三の1について

 御指摘の「リバースモーゲージ」(以下「リバースモーゲージ」という。)とは、高齢者の居住の安定を図る観点から、高齢者に対し、その所有する不動産を担保として介護費用、生活費用等の融資を行うものであるが、リバースモーゲージには、土地価格の下落等により担保が不足する危険性、契約中に契約者が意思能力を喪失し、契約の解除、融資条件の見直し等ができなくなる危険性等が存するとの問題点が指摘されている。
 今後、これらの問題点への対応も含め、リバースモーゲージの制度について検討を進めてまいりたい。

三の2について

 神戸市における災害復興住宅高齢者向け不動産処分型特別融資(以下「特別融資」という。)は、年齢要件等により他の融資制度を利用できなかった高齢者の住宅再建を支援するために、自己の所有する土地及び建物を担保とした融資を神戸市があっせんするものであり、貸付金の償還は原則として借受人の死亡時等における当該土地及び建物の処分を前提としており、融資に際しては、借受人に対する当初十年間の利子補給の措置が財団法人阪神・淡路大震災復興基金により、融資を行う金融機関に対する当該融資に必要な資金の預託及び当該融資に伴って生じた損失の補償の措置が神戸市により、それぞれ講じられているものであると承知している。
 特別融資の利用実績が平成九年二月の制度創設時から平成十年十二月末までの間において十件にとどまっていることに関し、神戸市は、その原因は申込みに当たって相続人全員による債務の保証が得にくいこと、自己の所有する土地及び建物を処分することへの抵抗感が強いこと等の事情によるものであり、特別融資の普及には市民への制度の趣旨の周知、適切な相談体制の整備等が必要と認識しているものと承知しており、政府として、特別融資に対する助成策を講じることは考えていない。

三の3について

 リバースモーゲージに関しては、三の1についてで述べた問題点が指摘されているが、米国住宅都市開発省が試験的に実施している御指摘の「HECM」には、その利用者が米国連邦住宅庁に保険料を支払うことにより担保の不足、融資機関の倒産、貸付金の不払等の危険性に対応する保険制度が含まれていると承知している。
 政府としては、高齢者の居住の安定を図る観点から、今後、三の1についてで述べた問題点への対応も含め、リバースモーゲージの制度について検討を進めてまいりたい。