質問主意書

第144回国会(臨時会)

質問主意書


質問第一一号

コンピュータ西暦二〇〇〇年問題への政府の対応に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成十年十二月十四日

日笠 勝之   


       参議院議長 斎藤 十朗 殿


   コンピュータ西暦二〇〇〇年問題への政府の対応に関する質問主意書

 二〇〇〇年まで残すところ一年となっているが、今日、コンピュータの西暦二〇〇〇年問題(以下、「二〇〇〇年問題」という。)が大きな社会問題になっている。二〇〇〇年問題とは、比較的初期に導入されたコンピュータがメモリ及びディスク容量を節約するため、西暦の上二桁の「一九」を省いて下二桁のみで処理するプログラミングがなされたことにより、「二〇〇〇年」を「一九〇〇年」とコンピュータが誤認してしまうことにより起こる問題である。
 現代社会において、コンピュータは企業活動のみならず国民生活全般にわたり浸透しており、二〇〇〇年問題は社会全体の問題となっている。その対応を誤れば、我が国の社会全般に深刻な影響を与える懸念がある。さらに、コンピュータネットワークは国内にとどまらず全世界と接続されており、その意味で二〇〇〇年問題への対応は世界全体の緊急の課題ともなっている。
 このように重大な問題である二〇〇〇年問題に対しては、社会・経済が大混乱する危険性を払拭するため、政府が一丸となって真剣に対処すべきである。
 以下、二〇〇〇年問題への政府の対応に関し質問する。

一、二〇〇〇年問題への対応については、欧米諸国に比べて我が国が遅れているとたびたび指摘されているところである。このような対応の遅れにより、金融機関のパニック、航空機の事故、電力・ガス供給の停止、通信網の混乱等の重大な事故が発生することがないよう、二〇〇〇年問題への対策を万全に行う責務を政府は有している。主な分野ごとの対応の進捗状況とこの問題に対する政府の決意について示されたい。

二、二〇〇〇年問題がマスコミ等で注目されるようになったのはこの一、二年のことであるが、問題の存在自体は、以前からコンピュータ業界では知られていた。政府は二〇〇〇年問題に対処するために「コンピュータ西暦二〇〇〇年問題関係省庁連絡会議」を平成九年十二月十六日に設置しているが、問題の重要性からすれば、より早い段階で政府全体としての取組みが必要であったと考えるが、このように対応が遅れた理由を伺いたい。

三、政府は、平成十年九月十一日、「コンピュータ西暦二〇〇〇年問題に関する行動計画」を策定した。計画では、国民生活に密接に関連するシステム等優先度の高いシステム全ての模擬テストを、平成十一年六月末までに完了するとしている。残り七ヶ月となっているが、現段階で期限までにテストは完了できる見込みとなっているのか、また、諸外国との関係でグローバルネットワークでの模擬テストの実施は重要であるが、実施計画とその見通しを伺いたい。
 特に金融機関の対応が遅れた場合、さらに大きな信用不安を巻き起こす可能性があり、その意味で万全の上にも万全を期す必要がある。現在行われているチェック方法は、自己点検が中心となっているが、その影響の大きさに鑑み政府ないし第三者機関の専門家による当該機関への積極的な検査を行うべきと考えるがどうか。

四、平成十年十一月二十四日の高度情報通信社会推進本部顧問会議に提出された資料によると、航空会社は運行業務の制御システムのプログラムを修正する作業がほとんど進んでいない状況にある。航空業務は人命を預かるため、高い安全性が求められる事業であり、二〇〇〇年問題への対応の遅れは非常に深刻な問題であると言わざるを得ない。また、エネルギー分野でも同じく対応の遅れが指摘されている。これらの分野について、政府として現在の進捗状況とその対策をどのように考えているか伺いたい。また、何らかの対応策を関係会社に求めるべきだと考えるが、その対策について伺いたい。

五、政府は、二〇〇〇年問題対策の予算として、平成十年度で九十八億円を計上し、平成十一年度では二百四十七億円を要求しているが、政府として平成十一年度予算について二〇〇〇年問題に係る予算の編成方針及び地方自治体への対応について示されたい。

六、経済環境が厳しい今日、言わば後ろ向きの投資といえる二〇〇〇年問題対策投資に、どの事業分野においても中小企業は消極的になっている。政府はこれまでも啓蒙活動や各種税制等の優遇措置に努めており、一定の評価はするが、二〇〇〇年を目前にした今の段階で、従来の支援策以上に踏み込んだ施策が必要だと考えられるが、政府として一層の支援策を行う意向があるか伺いたい。

七、二〇〇〇年問題への対応はソフトウェアの修正などに膨大な人手がかかり、社団法人情報サービス産業協会の推計によると、システムエンジニアの不足人員が最大で約十五万人月に達するとされている。二〇〇〇年問題の対策が、人員の不足で計画が達成不能になることはないのか、政府の見解を伺いたい。

八、航空機や製造装置、医療機器等に埋め込まれたマイコンチップについても二〇〇〇年問題が生じうるものがあると指摘されている。その数が膨大であるとともに、どの箇所にどのようなマイコンチップが使用されているのか把握が大変困難であり、二〇〇〇年問題への対処が懸念されている。マイコンチップの誤作動により航空機や医療機器等が重大な影響を受ける恐れはないか。このようなマイコンチップの誤作動により重大な影響を受けると考えられるものを示されたい。またそれに対する政府の対応を伺いたい。

九、二〇〇〇年問題に対する政府の万全な対応を期待したい。特に、二〇〇〇年一月一日には二〇〇〇年問題が同時に多発する可能性があるが、政府はどのような危機管理体制を構築するのか伺いたい。

  右質問する。