質問主意書

第144回国会(臨時会)

質問主意書


質問第九号

桜島火山対策に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成十年十二月十四日

弘友 和夫   


       参議院議長 斎藤 十朗 殿


   桜島火山対策に関する質問主意書

 桜島の火山活動による被害対策については、活動火山対策特別措置法に基づく数々の対策が講じられている。
 しかしながら、桜島火山の活動は依然として活発であり、長期にわたる噴火活動は桜島周辺に暮らす住民に想像以上の大きな影響を与え続けている。
 例えば、火山活動に伴う降灰や火山ガスは住民生活に大きな支障をきたすばかりでなく、桜島地域の基幹産業である農林水産業にも甚大な被害をもたらし、周辺市町の住民に深刻な影響を与え続けている。
 このような状況の中で、周辺市町住民は、今後もさらに活動を続ける桜島火山の対策に苦慮しているところであり、早急な対策及び長期的な視野に立った対策が必要であり、地域住民の日常生活の安全及び経済活動の安定を図るためのより積極的な対策の推進が望まれる。
 こうした認識に立って、次の諸点について政府に質問する。

一、桜島火山観測・研究の推進について

 桜島火山観測・研究体制については、第五次火山噴火予知計画に基づき、桜島火山の特性を踏まえた細かい観測・研究を実施しているところである。しかしながら、桜島火山は依然として活発な活動を繰り返しており、また、地域住民の生活圏と非常に近接しているので、住民の生命及び財産の安全を図るため、第五次の計画に引き続き、観測・研究や気象情報サービス等の情報伝達体制の拡充強化が必要であると考えるが、具体的な政府の対策を示されたい。

二、国際火山総合センター(仮称)の実現について

 昭和六十三年七月鹿児島国際火山会議の「鹿児島宣言」において提唱された「火山に関する国際的な総合情報・研究・研修機能」を確立するため、火山大国・地震大国の我が国にこそ「国際火山総合センター(仮称)」の設置が望まれ、早期実現のため関係省庁と協議し、総体的なプランを策定すべきだと考えるがどうか。
 また、「鹿児島宣言」を政府はどのように認識しているか伺いたい。

三、桜島周辺の道路整備の促進について

 桜島火山の周辺市町の地域防災計画においては、桜島火山の大爆発等大災害の発生またはそのおそれが生じた場合、住民が車両等で避難することが想定されている。その前提として、住民の避難路確保が絶対条件となる。桜島及びその周辺の国道の整備を一層促進するために、防災の観点から道路整備費の大幅な拡大と積極的な事業の推進が望まれるが、政府の見解を示されたい。

四、軽石被害の対策について

 雨のたびに桜島から周辺海域に流出する軽石は、漁船のスクリュー・シャフトの曲損や循環水取水口詰まりによる機関過熱障害を引き起こすほか、巻き網漁網や定置網への軽石侵入による操業被害や養殖生寳での投餌作業効率を著しく低下させる等の漁業被害を発生させている。しかも、除去作業は人海戦術による手作業が主となっているのが現状である。
 このようなことから、軽石の除去事業の充実拡大及び軽石の流出を未然に防止するための抜本的な発生源対策が必要と考えるが、政府の見解を示されたい。

五、健康対策について

 平成元年度から六年度まで実施した火山灰等環境影響調査の報告書では、「降灰等が住民の健康に悪影響を与えているとの結果を得られなかった」とされているが、マウスにおける実験結果では細胞等への影響を示唆される箇所もあり、住民の不安は依然として解消されていない。そのためにも、今後も火山灰の長期吸入による人体への影響について基礎的な調査研究を継続すべきであると考えるが、それに対する政府の見解を伺いたい。

六、防災営農対策事業について

 桜島の降灰は、亜硫酸ガスを含む酸性の強い火山灰による農作物への直接的な被害だけでなく、土壌の酸化やビニールハウス等の被覆施設の劣化を早めるほか、粒子の細かい灰が地面を覆い地中への空気供給を阻害し、被覆施設に積もった灰が日光を遮ることにより、農作物の育成を遅らせること等、周辺地域の農業に大きな被害を及ぼしている。
 このようなことから、酸性土壌の矯正、降灰防止施設等の整備及び耐灰性作物の導入等を進めるため、平成十年度に終了する現行の第八次防災営農施設整備計画に引き続き、降灰や火山ガスによる農作物被害を防止、軽減するため、次期計画においても施設の充実を図るとともに、平成十一年度活動火山周辺地域防災営農対策事業の推進拡大を図るべきだと考えるがどうか。
 また、桜島の降灰被害激甚地域では多量の降灰や火山ガスによる農作物の被害が甚大であるため「克灰営農の確立」により被害農業者の経営安定、地域農業の発展を図る必要があるが、そのために、弾力的な被覆対策が必要であると考えるがどうか。

七、降灰除去事業について

 現在、降灰除去事業の採択基準は年間降灰量一〇〇〇g/m2以上であるが、短期間に被る一時的な多量降灰に対しては国庫補助の対象とならない。多様な降灰の状況に配慮した降灰事業の採択基準の検討が必要ではないか。
 また、採択の基準が「連続する二月の期間において」との設定について、同じ降灰量であっても夏季の二カ月であれば採択となり、冬季の十二月から翌年の一月にかかる二カ月であれば不採択となるので冬季降灰地区は不利である。このような制度は不合理であるので見直しが必要なのではないか。政府の見解を示されたい。

  右質問する。