第143回国会(臨時会)
答弁書第一〇号
内閣参質一四三第一〇号 平成十年十一月十三日 内閣総理大臣臨時代理
国務大臣 野中 広務
参議院議員福島瑞穂君提出地球温暖化問題と電力自由化に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。 参議院議員福島瑞穂君提出地球温暖化問題と電力自由化に関する質問に対する答弁書 一について 二千十年度(平成二十二年度)における原子力発電による電力供給目標については、本年六月の電気事業審議会需給部会中間報告(以下「中間報告」という。)において、その実現が昨年十二月の「気候変動に関する国際連合枠組条約第三回締約国会議」(以下「第三回締約国会議」という。)で採択された「京都議定書」(以下「議定書」という。)第三条の規定に基づく排出の抑制及び削減に関する数量化された約束(以下「数量化された約束」という。)を履行するために必要不可欠であることから、発電電力量四千八百億キロワットアワーというこれまでの目標を維持する方向性が示されたところであるが、これを達成するためには、二千十年度(平成二十二年度)において、合計六千六百万キロワットから七千万キロワットの設備容量が必要とされ、そのためには、今後約十六基から約二十基の原子力発電所の増設が必要となる。
二について 中間報告で掲げられている原子力発電による電力供給目標が達成できない場合、議定書で定められた我が国の数量化された約束を履行するためには、例えば、必要な二酸化炭素排出量の削減をエネルギー需要面での対策で代替するなどの追加的な対策が必要となるが、我が国の地球温暖化問題への対応を図るために現在必要と考えられている原油換算五千六百万キロリットルの省エネルギー対策をはるかに上回るエネルギー消費量の削減は、国民生活や経済活動に及ぼす多大な影響を考えれば、実施することが困難であるなど、追加的な対策の実現可能性について展望を欠いている状況にある。したがって、中間報告で掲げられている電力供給目標を達成すべく、原子力発電の必要性及びその安全性に関する国民の理解を求める活動や、原子力発電所の立地地域振興策等について最大限の取組を行うことが必要不可欠であると考えている。 三及び四について 議定書では、数量化された約束を履行するため、排出量の取引に参加することができる旨規定されているが、我が国における排出量取引による購入量、原資額及びその予算措置については、排出量取引の具体的な制度の在り方に関する今後の国際交渉等に依存しており、現地点ではこれらを算定することができない。
五について 平成八年度及び平成九年度に行われた卸電力供給に係る入札の結果落札した卸供給事業者である独立系発電事業者(IPP)が有する発電設備の容量における発電燃料別の内訳は、石炭約三十九・三パーセント、石油約四十六・一パーセント、天然ガス約十三・七パーセント、その他約〇・九パーセントであると把握している。 六について 現在までの段階で許可された二件の特定電気事業者が有する発電設備の容量における発電燃料別の内訳は、天然ガス約八十パーセント、その他約二十パーセントであると把握している。 七について 卸電力供給に係る入札制度については、電気事業審議会需給部会において環境問題との関連が検討され、その結果、中間報告において、電気事業分野における二酸化炭素の排出量を抑制する観点から、入札制度において二酸化炭素の排出量のより少ないプロジェクトが優位となるような評価を一般電気事業者の自主的判断により行う方向性が示されたところであるが、政府としても、その適切な運用が図られることを期待している。
八について 電気事業審議会需給部会においては、審議に当たり、長期的なエネルギーセキュリティの確保を前提に、電気事業の効率化の推進との調和を図りながら第三回締約国会議の合意を踏まえた環境調和型の電力需給構造を目指していくことが、今後の電力需給の考え方として重要であるとの基本的な認識の下、電力需給に係る施策の在り方について広範な検討を行ったところであるが、中間報告においては、電気事業分野における二酸化炭素排出量を抑制する観点から、一般電気事業者が行う卸電力供給に係る入札制度においては、環境負荷のより少ないプロジェクトが優位となるような評価、例えば、燃料種ごとの二酸化炭素排出量の多寡を適切に反映させる評価制度の導入や燃料種限定募集を一般電気事業者の自主的判断により行うことを可能とすることが適切である旨提言されているところである。 九について 議定書で定められた我が国の数量化された約束を着実に履行することは重要であるが、一方で、電力の供給に支障が生ずることは万が一にもあってはならないことと認識しており、したがって、電力の安定供給に必要な設備形成は当然行われるべきものと考えており、中間報告においても、需要に応じた必要な供給力の確保は、今後とも電気事業の第一の課題である旨の提言がなされている。
十について 天然ガス、再生可能エネルギーは、環境負荷の小さいクリーンなエネルギーであり、石油及び石炭からこうしたエネルギーへの燃料転換は、石油依存度の低減を通じたエネルギー安定供給の確保に資するとともに地球環境の保全にも貢献し得るものであり、エネルギー政策の中で重要な一部分を成していると認識している。
十一、十三及び十六について 電気事業者等は、我が国における高コスト構造是正の観点も踏まえ、鋭意経営効率化に取り組んでいるところであると承知しているが、政府としても、平成七年の電気事業法改正により発電部門への新規参入要件の緩和が図られたことや、今後予定される電力の小売分野における部分自由化の導入等により、今後とも一層の競争促進による更なる経営効率化が図られていくことが重要であると認識している。
十二について 風力発電による電気の他者からの買取りに関し、一般電気事業者が、本年度から、長期的な買取りを可能とする購入基準を設けており、その中には当該購入基準における買取価格が単年度契約による買取価格に比して区分によっては低い価格設定になっているものもあることは承知しているが、風力発電を行う者は、こうした購入基準に基づく売買契約を締結することにより、将来の事業見通しや安定的な電力の販売先を確保できる面もあり、こうした観点からは、風力発電の事業を行う者の一層の成長、発展が期待されるところであって、燃料転換を進める考え方に逆行しているとは考えていない。
十四について 電気事業審議会基本政策部会では、現在、電気事業の効率化を図るとの要請と、ユニバーサルサービス、供給信頼度及びエネルギーセキュリティの確保を図るとともに環境を保全するとの要請の両立を図るという前提の下、電力の自由化について審議が重ねられているところであるが、再生可能エネルギーについては、これによる発電には出力の不安定性等の問題があるものの、中間報告において二酸化炭素排出の観点で優れた電源として位置付けられているところであり、その積極的な活用についても、電気事業審議会において、十分に検討されていくことを期待しているところである。 十五について 我が国においては、地球環境問題への対応、エネルギーセキュリティの確保等の観点から、本年九月、「石油代替エネルギーの供給目標について」が閣議決定されたところであるが、これによれば、二千十年度(平成二十二年度)における一次エネルギー総供給に占める割合を、太陽光発電、風力発電等の新エネルギーについては、その他石油代替エネルギーとして、現在の導入量の約三倍に相当する三・一パーセント(原油換算で千九百万キロリットル)とすることを、水力については、三・八パーセント(原油換算で二千三百万キロリットル)とすることを、地熱については、〇・六パーセント(原油換算で四百万キロリットル)とすることを、それぞれ目標としている。したがって、これらを合計すると、二千十年度(平成二十二年度)における一次エネルギー総供給に占める再生可能エネルギーの割合を七・五パーセントに増加させることを目標としている。
1 新エネルギーについては、従来のエネルギーに比し、概してコストが割高であること
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