質問主意書

第143回国会(臨時会)

答弁書


答弁書第九号

内閣参質一四三第九号

  平成十年十一月十日

内閣総理大臣 小渕 恵三   


       参議院議長 斎藤 十朗 殿

参議院議員小川勝也君提出点字による選挙公報発行等に関する再質問に対し、別紙答弁書を送付する。


   参議院議員小川勝也君提出点字による選挙公報発行等に関する再質問に対する答弁書

一について

 現行の公職選挙法(昭和二十五年法律第百号)の規定に基づいて発行される選挙公報(以下「法定の選挙公報」という。)を点字により調製し、発行することを制度化することは、現時点では困難であるが、視覚障害者が公職の候補者又は名簿届出政党等の政策、公約等を点字により知ることができることが望ましいと考えている。

二について

 法定の選挙公報は、掲載文又はその写しを原文のまま掲載しなければならず、また、原則として選挙の期日の公示又は告示の日から掲載文の申請を行い、選挙人名簿に登録された者の属する各世帯に対して当該選挙の期日の二日前までに配布するものとされている。
 しかしながら、現状では、このような公示又は告示後の限られた期間内に掲載文のすべてを誤りなく点字により調製することは困難である。このため、法定の選挙公報ではないが現在配布されている点字による「選挙のお知らせ版」についていえば、衆議院又は参議院の比例代表選出議員の選挙においては、社会福祉法人東京ヘレン・ケラー協会が名簿届出政党等となる見込みの政党その他の政治団体に対し公示の日の二週間程度前までに法定の選挙公報とは別の限られた字数の文字のみによる掲載文の提出を求め、この掲載文を基にして点字により調製した冊子を作成し、これを都道府県の選挙管理委員会が購入して点字による「選挙のお知らせ版」として配布する方法を採っているところである。衆議院小選挙区選出議員又は参議院選挙区選出議員の選挙においては、点字による「選挙のお知らせ版」を選挙区ごとに調製しなければならず、候補者ごとに掲載文があるために掲載文の数も多いことから、限られた期間内にこれらの掲載文を点字により調製することは更に困難であり、三の(ウ)についてで述べるとおり、候補者の政見等まで掲載した点字による「選挙のお知らせ版」を配布している府県は、少数にとどまっている。
 また、現状では、法定の選挙公報のような大量の部数を調製することは困難であり、かつ、限られた部数の配布について対象者を正確に把握することも困難である。このため、点字による「選挙のお知らせ版」についていえば、点字図書館、視覚障害者団体等を通じて配布するにとどまっているところが多い状況にある。

三の(ア)について

 衆議院議員総選挙又は参議院議員通常選挙が行われる都度、自治省選挙部長名で各都道府県の選挙管理委員会委員長あてに通知しているところであり、平成十年執行の参議院議員通常選挙に際しては、別紙一のとおり通知している。
 平成十一年執行の統一地方選挙においては、法定の選挙公報を発行する選挙について国政選挙に準じた内容の通知をする予定である。

三の(イ)について

 公職選挙法上特に定義されていないが、公職の候補者等が当選を得るために選挙人に対して発表する政治的見解又は意見の意味で用いている。

三の(ウ)について

 比例代表選出議員の選挙においては、二についてで述べたように限られた字数の掲載文により調製したものについて平成八年執行の衆議院議員総選挙で四十四都道府県、平成十年執行の参議院議員通常選挙で四十五都道府県において配布していると承知している。
 平成八年執行の衆議院議員総選挙の小選挙区選出議員の選挙においては、四十六都道府県で配布しており、うち法定の選挙公報に記載されている政見まで点訳したのが十府県、候補者の氏名、所属党派、経歴等のみを点訳したのが三十六都道県であったと承知している。
 平成十年執行の参議院議員通常選挙の選挙区選出議員の選挙においても、四十六都道府県で配布しており、うち法定の選挙公報に記載されている政見まで点訳したのが十二府県、候補者の氏名、所属党派、経歴等のみを点訳したのが三十四都道県であったと承知している。
 また、平成七年執行の統一地方選挙を含め、直近の都道府県知事の選挙においては、四十一都道府県で配布しており、うち法定の選挙公報に記載されている政見まで点訳したのが十九府県、候補者の氏名、所属党派等のみを点訳したのが二十二都道県であったと承知している。直近の都道府県の議会の議員の選挙においては、法定の選挙公報を発行している二十一都府県のうち三都府県で配布しており、いずれも法定の選挙公報に記載された政見まで点訳していると承知している。

三の(エ)から(カ)までについて

 「点字による選挙公報発行等に関する質問に対する答弁書」(平成十年九月十八日内閣参質一四三第三号。以下「前回答弁書」という。)における「点字による選挙公報」は、法定の選挙公報をすべて点字により調製したものという意味で用いたものであり、現在、公職選挙法にこれを定めた規定はない。
 点字による「選挙のお知らせ版」は、公職選挙法第六条第一項の規定に基づく啓発活動の一環として配布されているものである。
 なお、「点字による選挙公報」若しくは点字による「選挙のお知らせ版」を指して又はその両者を合わせて、「点字公報」又は「点字の公報」の語が用いられる場合もある。
 点字による「選挙のお知らせ版」は、前述のとおり啓発活動の一環として行われるものであるため、法定の記載事項によらず又は法定の限られた期間によらず可能な範囲内で調製し、また、法定の配布方法によらず点字図書館、視覚障害者団体等を通じて配布したり、点字図書館において閲覧に供する等工夫をこらしつつ普及に努めているところである。

三の(キ)について

 任意制選挙公報についても、点字による「選挙のお知らせ版」として法定の選挙公報に記載されている候補者の氏名、所属党派、経歴、政見等を点訳したものを配布することは、可能であると考える。

四について

 御指摘の国会答弁中、昭和五十八年二月二十三日衆議院公職選挙法改正に関する調査特別委員会における答弁及び平成三年四月九日参議院文教委員会における答弁の引用部分にある「点字公報」又は「点字の公報」の内容を述べた部分は、別紙二のとおり点字による「選挙のお知らせ版」の意味で用いられているものであり、前回答弁書は、従来からの国会答弁を変更したものではない。

五について

 点字による掲載文の申請があった場合については、前回答弁書の二についてで述べたとおりであり、選挙公報が公職選挙法第百七十条第一項の規定により選挙人名簿に登録された者の属する各世帯に配布するものとされていること等からみて、現行法上点字による原稿をそのまま掲載して法定の選挙公報として発行することはできないものと考える。
 いずれにしても視覚障害者の方々の貴重な選挙権の行使にかかわる問題であるので、当面、現在配布されている点字による「選挙のお知らせ版」について普及及び内容の充実を図りつつ、選挙の公正さを確保しながらどのような工夫ができるのか研究してまいりたい。

別紙一 点字による参議院議員通常選挙の候補者名簿及び名簿届出政党等名簿について(原文横書き) 1/3

別紙一 点字による参議院議員通常選挙の候補者名簿及び名簿届出政党等名簿について(原文横書き) 2/3

別紙一 点字による参議院議員通常選挙の候補者名簿及び名簿届出政党等名簿について(原文横書き) 3/3

別紙二 昭和五十八年二月二十三日衆議院公職選挙法改正に関する調査特別委員会における自治省選挙部長答弁 1/2

別紙二 昭和五十八年二月二十三日衆議院公職選挙法改正に関する調査特別委員会における自治省選挙部長答弁 2/2