質問主意書

第143回国会(臨時会)

答弁書


答弁書第八号

内閣参質一四三第八号

  平成十年十一月十三日

内閣総理大臣臨時代理             
国務大臣 野中 広務   


       参議院議長 斎藤 十朗 殿

参議院議員小川勝也君提出震災時における電気火災防止のための「感震ブレーカー」に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。


   参議院議員小川勝也君提出震災時における電気火災防止のための「感震ブレーカー」に関する質問に対する答弁書

一について

 消防庁及び資源エネルギー庁においては、神戸市消防局による火災原因調査結果及びノースリッジ地震に関する政府調査団作成の報告書を平成九年十二月二日以前に入手していたところであるが、同日の参議院建設委員会での審議を踏まえ、その後、ノースリッジ地震に関する追加資料及び筑波大学熊谷良雄教授が平成七年度日本火災学会講演討論会において「阪神大震災からの教訓」と題して講演した内容に関する資料を入手した。
 また、消防庁においては、平成九年度に、財団法人消防科学総合センターに対して、阪神・淡路大震災における被害状況等を踏まえ、地震時における出火防止対策の在り方に関する調査検討を委託したが、その調査検討結果の取りまとめに関しては、資源エネルギー庁と協議を行った上で、阪神・淡路大震災における火災の発生状況及び出火原因に関する分析結果、地震時における出火防止対策に関する提言等を内容とする報告書を作成し、本年七月にこれを各地方公共団体に送付した。

二について

 電気機器は、震災等の異常時には通常想定できないような事故を招く危険性を内包しているが、日常生活において通常の状態で使用している限り、かかる危険性が表面化することはないと考えられるため、一般的に需要家の電気の危険性に関する認識が希薄になりがちである。このため、地震の発生時にブレーカーを切るという行動をとることができる者は一般的にさほど多いとは思われないので、平素から電気の需要家の防災意識の高揚を図ることが、非常時における的確な対応を促進するために必要であると考え、通商産業省においては、関係団体を通じた周知等により、地震の発生時にブレーカーを切って避難する等の注意喚起を行っているところである。

三について

 需要家の受電盤において地震を感知して電源を切る装置である感震ブレーカーについては、御指摘のような場合には避難に支障を来す等の問題を生じないこともあるが、各戸別に分電盤に取り付けられる感震ブレーカーについても、これまでに製造されているもののうち主回路を遮断する型式のものが占める割合が少なくないため、地震の発生時に、戸建て住宅や小規模な店舗において、感震ブレーカーの作動によりエレベーター内に閉じ込められたり自動ドアが停止する等、避難に支障を来す等の事態が発生することが懸念される。また、蓄電池等を内蔵し、ブレーカー作動時に自動的に補助照明が点灯するものは、必ずしも十分に普及しているとは言えないため、夜間の避難に支障を来す恐れがある。さらに、消防法令上設置が義務付けられている自動火災報知設備には、停電時に備え非常電源の附置が求められているが、住宅等に自主的に設置されているものについては、非常電源を附置していないものがある。
 いずれにせよ、感震ブレーカーの技術開発の状況等を勘案し、今後、その活用の在り方について検討してまいりたい。

四について

 政府としては、災害防止を目的とする製品等の普及を促進すべきか否かについては、当該製品等の災害防止に対する効果の有無や程度、その製品の普及のために必要となるコストその他の事情を勘案して判断すべきであると考えている。
 なお、感震ブレーカーについても、その災害防止に対する効果の有無や程度に加え、感震ブレーカーの作動による安全確保措置に対する支障の有無、感震ブレーカーの信頼性、設置に係るコスト等を勘案して判断すべきであると考えている。

五について

 政府が行う調査研究等の成果を始め、災害防止に有益かつ必要な情報については、これまでも各地方公共団体に周知するように努めてきたところであり、今後ともこのような情報の積極的な提供に努めてまいりたい。