質問主意書

第143回国会(臨時会)

質問主意書


質問第一四号

水環境に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成十年十月十六日

福本 潤一   


       参議院議長 斎藤 十朗 殿


   水環境に関する質問主意書

 二十一世紀に向かって持続可能な社会を維持していくため、大量生産・大量消費・大量廃棄社会から循環型社会への転換を図ることが極めて重要な課題となっている。
 その中で、水環境又は水循環の問題が本格的に取り組まれてきていない。
 水と安全はただという我が国の常識がもたらした水の浪費的使用は、水源地や水辺の環境を大きく変え、また、湖沼、河川、湿地を十分な浄化処理や保全措置を行わずに最終処理場として利用してきたことが、人の健康のみならず、生態系、生物多様性といった根本的な問題に対する影響を深刻なものとする状況をもたらしつつある。
 これに対処するためには、水環境及び水循環の保全を循環型社会構築のための大きな課題と位置づけ、人の健康のみならず、生態系、生物多様性の視点から水環境の保全を図り、水源涵養森林など水源地の保全、農業用水、都市用水の利水調整や下水の再利用などの有効利用を進める必要がある。
 さらに、このような水環境及び水循環を保全するため、従来の規制による水質汚濁防止対策では十分対応できなかったノン・ポイントソースの汚染排水に対する課徴金制度などの導入、流域単位による水管理制度を創設し、上流、下流の地域交流を深め、経済面、生活面などでの相互依存性を確認し、一体性を確立していくことが求められている。
 こうした観点から、水環境行政の目標の核をなす環境基準のあり方について根本的な点検をもとめるとともに、その実現のための政策手段の多様化を図ることが重要であると考える。
 そこで、次のことを質問する。

一、環境基準等に関し、次の項目について政府の見解を明らかにされたい。

(1) 欧米では、人の健康の保護の観点のみならず、水生生物の保護の観点からの水質基準も設定されている。我が国でもこのような基準を設定することが必要ではないか。
(2) 人の健康保護についても、有害化学物質だけではなくクリプトスポリジウム等の病原性微生物に係る環境基準の設定が必要ではないか。
(3) 水環境の構成要素である水質、水量、水生生物、水辺地の保全のうち、水質については基準があるが、その他のものについては明確な基準がない。その保全基準や指針等の設定についても積極的に検討するべきではないか。
(4) 水質に係る有害化学物質等についてはその毒性情報等について各省庁や研究所などでばらばらに管理されている。きちんとした情報の交換・共有のシステムをつくり、有害化学物質等に係る効率的なリスク管理の基盤をつくるべきではないか。

二、政策手段の多様化に関し次の項目について政府の見解を明らかにされたい。

(1) 有機性の水質汚濁に関しては、我が国ではこれまで、環境基準の設定と排水規制の実施という規制的手法及び下水道等の整備を大きな柱として水質管理を行ってきたが、特定施設等で規制できる産業系の汚濁対策が進んできた結果、有効な対策手段が少ない農地や道路といった、いわゆるノン・ポイントソースによる水質汚濁対策が相対的に立ち後れてきていると考える。このような分野については、欧米でも見られるような課徴金等の経済的措置などの新たな手法の検討・導入により効果的な対策を行っていく必要があると考えるがどうか。
(2) また、合併浄化槽が普及する一方で、単独浄化槽の設置も根強く行われている現状に鑑みると、特に必要な地域においては、単独浄化槽の設置の禁止など思い切った措置を講ずる必要があるのではないか。
(3) 今後の水環境の効果的な管理を考えると、矢作川沿岸水質保全協議会のような流域を単位とした地元関係者による水管理に係る活動が極めて重要になってくると考える。行政としてこのような流域協議会のような活動を水管理の体系の中に積極的に位置づけていく必要があると考えるがどうか。

  右質問する。