質問主意書

第143回国会(臨時会)

質問主意書


質問第八号

震災時における電気火災防止のための「感震ブレーカー」に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成十年十月十五日

小川 勝也   


       参議院議長 斎藤 十朗 殿


   震災時における電気火災防止のための「感震ブレーカー」に関する質問主意書

 平成九年十二月二日の参議院建設委員会において私小川勝也は、震災時における電気火災防止のために「感震ブレーカー」を普及すべき、との立場から質問を行った。それに対して、政府は、「震災時に自動的に電気が遮断される装置については、火災報知機やエレベーターが作動しなくなる」などの理由をあげ、「マイナス面がある」と消極的な姿勢に終始した。しかし、この答弁には、一部事実誤認や、認識不足がある。また、政府自身が答弁している通り、震災時の貴重な資料に基づく担当省庁間の協議が行われていなかったことが明らかになった。政府は、多くの尊い犠牲の上に積み上げられたデータを、真剣に分析、活用すべきである。さらに、いつ来るか分からない災害に対処するため、民間が開発した有益な装置の普及を促進するなど、できるところから積極的に取り組むべきと考える。また、こうした政府答弁が範となり、札幌市でも同様の議会答弁が行われるなど、事実誤認に基づく政府の誤った対応が、自治体においても災害対策の遅れを惹起していると懸念している。
 そこで、以下のとおり質問する。

一、阪神大震災時の電気に起因する火災に関し、建設委員会の質問で指摘した神戸市消防局のデータ、筑波大学の熊谷教授の報告書及びノースリッジ地震における報告について、消防庁やエネルギー庁はその後情報を把握したか。また、質問以来十カ月余りの中で、省庁間の協議をどのように行い、どのような結果を出したか。

二、資源エネルギー庁は前記委員会において「地震の際にはブレーカーを切って避難をしていただくなどの震災発生時の注意点につきましてPR活動を行っているところ」と答弁しているが、逃げるのに精一杯の緊急時に、何割ぐらいの人がブレーカーを切る事ができると考えているのか。

三、現在開発、市販されている感震ブレーカーは、戸建て住宅やマンション等集合住宅の各戸別に、分電盤に取り付けるものが主流となっている。政府は、「エレベーター内に閉じ込められる」「自動ドアが停止する」などをマイナス面としてあげているが、このタイプは電気の各支流ごとに制御するもので、感震ブレーカーが作動しても、エレベーター等共有施設の電源が遮断される訳ではない。また、蓄電池等を内蔵し、ブレーカー作動時に、自動的に補助照明が点灯するものも多く、夜間であっても避難に多大なる支障が起きるものではないと考える。さらに、火災報知機等については「火災報知設備の感知器及び発信機に係る技術上の規格を定める省令」等により停電時においても作動するよう定められている。つまり、政府が消極的理由としてあげた事例はすべて事実誤認、認識不足によるもので、感震ブレーカーに対するマイナス面になり得ないと考えるが、いかがか。

四、前記の通り、感震ブレーカーに関しては、震災後の再通電時に多発する電気火災に対し効果はあっても、デメリットがあるとは思えない。政府は、感震ブレーカーのみならず、災害防止に効果のあるものであれば、その普及を促進すべきと考えるが、見解を伺いたい。

五、前述の通り、地方自治体においては、政府の認識不足による対応を範としているところがすでにある。万が一の時の災害をいくらかでも未然に防ぐため、政府は自治体に対し、早急に正しい情報を提供すべきと考えるが、いかがか。

  右質問する。