質問主意書

第143回国会(臨時会)

質問主意書


質問第三号

点字による選挙公報発行等に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成十年八月二十一日

小川 勝也   


       参議院議長 斎藤 十朗 殿


   点字による選挙公報発行等に関する質問主意書

 選挙権は、憲法第十四条、第十五条及び第四十四条により、国民固有の権利として等しく保障されている。したがって、視力などに障害を持つ有権者に対しても、当然健常者と同様の権利が保障されている。
 昨今、障害者が健常者と同様に社会生活を過ごすため、「バリアフリー」、「ノーマライゼーション」などが言われながら、現実の選挙権の行使に関しては、投票所において様々な障害があり、また、視覚障害者が投票の判断材料とする選挙公報に関し十分な情報が得られにくいなど多くの課題が山積しているものと考える。
 この中でも、視覚障害者のための点字選挙公報は、これまで製作コストや期間、公平性の担保などの点から発行が困難だったと思慮するが、札幌の写真製版会社が「安く、早く、大量に」点字印刷を可能にした技術を実用化するなど(平成十年八月十三日付朝日新聞家庭面報道)、著しい技術進歩も見られる。社会福祉法人日本盲人会連合も平成九年度政府予算案編成にあたり、自治省等に対し、「点字による選挙公報の発行」を要望している。
 政府は、来るべき統一地方選挙等を前に、視覚障害者が憲法に保障された参政権を適正に行使できるよう、点字による選挙公報発行に向けた整備等を推進すべきだと考える。
 そこで、以下のとおり質問する。

一、衆議院は、昭和五十一年十一月四日、点字公報発行を含めた「障害者の選挙権行使に関する請願」(第六〇九号)を採択し、内閣に送付している。また、昭和五十年二月二十四日の衆議院予算委員会第三分科会において、自治大臣はじめ政府は、点字公報の発行等に関し、検討を約束している。さらに、政府は、「必要な諸条件が整うのを待ちまして実行に移すことを検討する…」(昭和五十二年三月二日、衆議院公職選挙法改正に関する調査特別委員会)、「点字の公報は公職選挙法上に明文の根拠があるわけではございません。そういう意味で一種の便宜供与とか啓発とかいう側面を持っていることもまた事実でございます。むずかしく申し上げますよりは、現在のようにいろいろな混合形態ではございますが、実態に即して点字公報が出され、国政の選挙でありますからには、国費の範囲内で賄われていくようにというような姿勢で臨んでまいりたいと思っております。」(昭和五十八年二月二十三日、衆議院公職選挙法改正に関する調査特別委員会)、「点字公報につきましては、…その内容の充実につきまして今後とも指導、協力をしてまいりたい…」(平成三年四月九日、参議院文教委員会)等と答弁している。請願に対し、どのように対応したのか、また、この二十年来、政府としてどのように取り組み、成果をあげているのか伺いたい。

二、公職選挙法(以下「公選法」という。)第百六十七条による選挙公報に関し、点字による選挙公報を通常の文字による選挙公報と同様に発行することは法律上可能か。この点について、自治省は、昭和四十四年九月二日回答により「点字による選挙公報の申請の取扱いについて」において「選挙公報を点字により発行することができない」とし、また、「公選法第百六十八条および第百六十九条では、このような趣旨から、選挙公報を点字で発行する事は、まったく想定していなく…」としているが、自治省がそのように解釈する法的根拠を示されたい。

三、政府は、視覚障害者に対し、各候補者の政策、公約を知らしめるため、実際にどのような取り組みをされているか示されたい。また、政府は、地方選挙における実情についてどのように把握しているのか示されたい。

四、公選法第百七十二条の二による「任意制選挙公報」に関し、北海道選挙管理委員会は、同法第四十七条及び前記自治省回答を根拠に「点字による任意制選挙公報の発行は法律上できない」(平成十年七月三十日電話回答)としている。しかしながら、同法第百七十二条の二、地方自治法第百十二条及び同法第百四十九条第一項により、点字による選挙公報の発行を内容とする条例案を地方公共団体の長又は議会の議員が提出することができると解すべきであると考えるが、政府の見解を示されたい。

五、政府は、公選法第百六十七条による選挙公報及び同法第百七十二条の二による「任意制選挙公報」に関し、視覚障害者に対する参政権を保障するためにも、点字印刷技術の進捗状況を踏まえ、各候補者の政策、公約をも含む点字による選挙公報の発行を積極的に推進し、指導すべきと考えるが、見解を伺いたい。

  右質問する。