質問主意書

第142回国会(常会)

答弁書


答弁書第二八号

内閣参質一四二第二八号

  平成十年七月二十八日

内閣総理大臣 橋本 龍太郎   


       参議院事務総長 黒澤 隆雄 殿

参議院議員加藤修一君提出内分泌撹乱化学物質(環境ホルモン)問題等に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。


   参議院議員加藤修一君提出内分泌撹乱化学物質(環境ホルモン)問題等に関する質問に対する答弁書

一の1及び5について

 御指摘の内分泌かく乱化学物質(環境ホルモン)問題(化学物質が生物の体内に取り込まれて正常な内分泌を阻害し、生殖や発育等に影響を及ぼす可能性に関する問題をいう。以下同じ。)については、現時点においては科学的に未解明な点が多く残されており、政府としては、参議院議員加藤修一君提出エンドクリン問題等に関する質問に対する答弁書(平成十年一月二十三日内閣参質一四一第一四号。以下「エンドクリン答弁書」という。)の六の3についてで述べたとおり、必要な調査研究等を実施するとともに、それらを踏まえ、内分泌かく乱化学物質による人の健康や生態系へ、の影響を未然に防止する観点から、必要に応じ、適切な措置を講じてまいりたい。

一の2について

 政府としては、御指摘の趣旨を踏まえ、関係各省庁において、情報交換を行いつつ緊密な連携を図るとともに、次のように必要な調査研究等を実施し、それらを踏まえ、必要に応じ適切な措置を講じていくこととしている。
 科学技術庁においては、関係省庁と連携し、内分泌かく乱化学物質の生物への影響のメカニズムの解明、生物への影響の実態の調査等を行い、それによって得られた知見に基づいて、国民の健康及び生活に対する影響の解明及び内分泌かく乱化学物質を環境中から取り除く技術についての研究を推進することとしている。また、これらの研究の進展状況を踏まえつつ、得られた知見に基づいて、適切な問題解決が図られるよう努めることとしている。環境庁においては、平成九年三月に研究班を設置し、同年七月に「外因性内分泌攪乱化学物質問題に関する研究班中間報告書」を取りまとめ、この報告を踏まえて本年五月に「外因性内分泌撹乱化学物質問題への環境庁の対応方針について-環境ホルモン戦略計画SPEED'98-」(以下「環境ホルモン戦略計画」という。)を取りまとめて公表したところであり、今後、これに基づいて内分泌かく乱化学物質問題に適切に対処してまいりたい。平成十年度においては、内分泌かく乱化学物質の人を含む生物種に対する影響に関する国際的な共同研究等の推進体制を整備するため国立環境研究所に内分泌かく乱化学物質問題に係る中核的な研究施設を設置するほか、全国の内分泌かく乱化学物質による汚染状況及び野生生物への影響の実態等を調査することとしている。
 厚生省においては、現在、本年四月に生活衛生局に設置した「内分泌かく乱化学物質の健康影響に関する検討会」において、今後講ずるべき対策について検討を行うとともに、内分泌かく乱化学物質による人の健康への影響に関する調査研究を進めているところである。今後、これらの検討結果や調査研究の成果を踏まえ、国民の健康確保に支障を来すことのないよう適切に対処してまいりたい。
 農林水産省においては、農薬等の農林水産業関連資材について、農薬取締法(昭和二十三年法律第八十二号)等の関係法律に基づき安全性の確保を図っているところであるが、内分泌かく乱化学物質についての新たな知見を得るため、現在、調査研究等を実施しているところであり、これらの成果を踏まえ、必要な措置を講じてまいりたい。
 通商産業省においては、内分泌かく乱化学物質との疑いが指摘されている化学物質のスクリーニング試験法の開発に、国際的な枠組みの中で従来から積極的に取り組んでいるところである。また、平成十年度には、こうした取組に加えて、内分泌かく乱化学物質との疑いが指摘されている化学物質の生産、消費及び廃棄の実態を調査する予定であり、引き続き内外の科学的知見の収集を行いつつ、こうした調査研究の成果を踏まえ、必要な措置を講じてまいりたい。
 労働省においては、本年七月から「内分泌かく乱化学物質等新種有害物質問題基本検討会」を開催しているところであり、同検討会において内分泌かく乱化学物質が労働者の健康に与える影響について検討を行い、その検討結果を踏まえて労働者の健康確保に支障を来すことのないように適切に対処してまいりたい。
 建設省においては、平成十年度に、全国の一級河川における水質調査、底質調査及び魚類調査並びに下水処理場への流入水、放流水等の水質調査により内分泌かく乱化学物質の実態調査を行い、これらの実態調査結果を踏まえ必要な対策を検討するとともに、土木研究所において内分泌かく乱化学物質に関する水質モニタリング手法や処理技術の開発を行うための実験施設を設置することとしている。また、住宅に使用される建材等の実態調査も行い必要な対策の検討を行うこととしている。

一の3について

 環境庁においては、平成九年七月に公表した「外因性内分泌撹乱化学物質問題に関する研究班中間報告書」に、これまでの内外の文献に基づいて内分泌かく乱作用を有すると疑われる六十七の化学物質を掲載したところである。しかし、現時点では、これらの物質の内分泌かく乱作用の有無、種類及び強弱について評価が定まっていない状況にある。したがって、内分泌かく乱化学物質に関して政府としての措置を講ずるためには、今後、スクリーニング試験法の開発及び実用化を急ぎ、これらの物質について内分泌かく乱作用の有無、種類及び強弱を確認することが必要であり、現時点において御指摘のような環境庁の所管する庁舎等の物品の調達に関する措置を行う考えはない。
 なお、これらの物質のうち、ポリ塩化ビフェニル(PCB)等九物質については、既に化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律(昭和四十八年法律第百十七号)において製造、輸入、使用等の禁止等の措置が講じられているところである。

一の4について

 食品衛生法(昭和二十二年法律第二百三十三号)第十一条第一項の規定により、厚生大臣は、公衆衛生の見地から、販売の用に供する食品等に関する表示につき、必要な基準を定めることができるとされているが、現段階においては、化学物質の内分泌かく乱作用により人の健康に重大な影響が生じるという科学的又は技術的知見は得られていないことから、御指摘の内分泌かく乱化学物質と疑われている物質について表示を義務付けることは適切でないと考えている。
 なお、本年六月十一日に開催された食品衛生調査会常任委員会において、食品衛生法に基づく表示について幅広く議論するため、同調査会に新たに部会を設けることを決定したところである。新たな部会の日程、名称等は未定である。また、厚生省においては、現在、遺伝子組換え食品は、遺伝子が組み換わるという点において、伝統的な方法で改良された既存の食品又は食品材料と同様であることから、公衆衛生の見地から他の食品と区別して表示を義務付けることは適切でないと考えている。

二の1について

 化学物質が乳幼児に与える影響については、国連環境計画(UNEP)、世界保健機関(WHO)及び国際労働機関(ILO)が化学物質の安全対策を推進するための共同プログラムとして設置した国際化学物質安全性計画(IPCS)においてその評価方法に関する考え方がまとめられたことを承知しているが、本年六月十八日現在、御指摘の乳幼児に対する基準値について国際機関又は外国政府がこれを設定している又はこれの設定を検討しているという情報は承知していない。

二の2について

 平成八年六月に取りまとめられた厚生科学研究費補助金による「ダイオキシンのリスクアセスメントに関する研究」の中間報告に示されたダイオキシン類の耐容一日摂取量は、健康影響の観点から、乳幼児期も含め一生涯にわたって摂取しても耐容される値が、科学的根拠に基づいて設定されたものである。なお、千九百九十七年五月に開催された先進八か国環境大臣会合において、子供に特異な暴露経路及び量反応関係を考慮した基準の設定の必要性が提案されていること等から、今後とも、国際機関等で行われる専門的な検討を踏まえ、必要な対応をしてまいりたい。

二の3について

 学校給食に使用される食材の購入に当たっては、どのようなものをどこから購入するかについては、学校給食の実施者にゆだねられているところであるが、従来から、「有害なもの又はその疑いのあるものは避けるよう留意すること」及び「内容表示・製造年月日・製造業者等が明らかでない食品、材料の内容が明らかでない半製品等については、使用しないようにすること」との指針を示し、学校給食における食材の生産及び流通の把握に努めるよう、学校給食の実施者に対し指導してきたところであり、今後ともその徹底を図ってまいりたい。
 しかしながら、現状においては、調達される食材が多様化していること、加工製品の原料の調達先が多様化していること等から、御指摘のように学校給食における食材の生産及び流通を完全に把握するような制度を設けることは困難であると考える。
 なお、学校給食に使用される食材については、食品衛生法に基づく安全性の基準を満たしているものが使用されている。

二の4について

 学校給食に使用される食材については、食品衛生法に基づく安全性の基準を満たしているものが使用されている。学校給食に使用する食材の購入については、従来から、「学校給食において使用される食材について定期的に細菌、農薬、添加物等についての検査を実施すること」、「有害なもの又はその疑いのあるものは避けるよう留意すること」、「内容表示・製造年月日・製造業者等が明らかでない食品、材料の内容が明らかでない半製品等については、使用しないようにすること」等の指針を示し、学校給食の食材の安全性について、十分な配慮をするよう、学校給食の実施者に対し指導してきたところである。
 また、農薬については、安全性を確認し、適正な使用方法を定めて農薬登録を行っているところである。
 したがって、学校給食について御指摘のような特定の農薬を使用した食材に関しての指導を行う考えはなく、また、御指摘の有機栽培野菜、低農薬野菜等の供給システムを整備することは考えていない。なお、有機栽培野菜、低農薬野菜等の生産については、環境保全型農業の一環として位置付け、各般の施策によりその生産振興を図っているところであり、これらの食材を学校給食に使用することについては、地域の実情等に応じて学校給食の実施者の判断にゆだねられているところである。

三の1から3までについて

 御指摘の内分泌かく乱化学物質問題に関する関係省庁間の情報交換については、これまでも必要な場合に実施しているところである。また、各省庁に設けられた検討会等において、関係省庁の有する情報を相互に積極的に利用しているほか、各省庁における検討会等には、他省庁の担当者が傍聴者として参加している。
 さらに、エンドクリン答弁書の一の1についてで述べたとおり、環境庁、厚生省、農林水産省、通商産業省及び労働省の五省庁においては、これまで内分泌かく乱化学物質問題に関して情報交換を行ってきたところであるが、今般、これらの省庁に科学技術庁、文部省、運輸省及び建設省の四省庁を加えた課長級の会議を設置し、関係省庁の調査研究等の取組、人の健康や生態系への影響等の関連情報、国際機関等の取組その他の事項について情報交換を行うとともに、必要に応じ、関係省庁間の連絡調整を行うこととしている。
 市民等への対応については、関係省庁においてそれぞれの所管する行政分野の専門的立場から、必要な情報収集、市民等からの問い合わせへの対応、インターネット等による調査研究結果の公表を含む情報発信を実施しているところである。
 したがって、御指摘の対策本部又は専門機関のような新たな組織を設ける考えはない。

三の4について

 環境庁においては、本年五月に御指摘の環境ホルモン戦略計画を策定したところであり、今後はこれに基づき各種の調査研究を進め、行政的措置の在り方について検討していくとともに、国民への情報提供等に努めることとしており、また、環境ホルモン戦略計画においては、新たな知見が得られた場合等においては必要な見直しを行うこととしているところである。厚生省においては、一の2についてで述べたとおり、 現在、「内分泌かく乱化学物質の健康影響に関する検討会」において今後の対応方針を検討中であり、本年秋を目途に中間報告を取りまとめ、公表する予定である。それ以降に新たな知見が得られた場合には、必要に応じ、対応方針の見直しを行ってまいりたい。
 農林水産省においては、農薬における作用メカニズム調査、水産資源に対する影響調査研究等を開始するとともに、「農林水産物への影響に関する検討会」を設置し、これらの調査研究等によって得られた知見も踏まえ、本年度中を目途に報告書を取りまとめ、今後の対応方針を策定する予定である。対応方針の策定後にさらなる知見が得られた場合には、その見直しを行ってまいりたい。
 通商産業省においては、一の2についてで述べたとおり、化学物質固有の性質である有害性の特定に係る内分泌かく乱作用の解明、内分泌かく乱化学物質スクリーニング試験法の開発等の問題については、国際的な枠組みの中で調査研究を実施するとともに、内分泌かく乱化学物質との疑いが指摘されている化学物質の暴露の状況については、国内関係機関との連携により実態の把握に努めることを基本方針として、今後とも積極的に内分泌かく乱化学物質問題に取り組んでまいる所存である。また、このような基本方針については、今後の調査及び研究の進展等による新たな知見が得られた場合には、必要な見直しを行うこととしている。
 労働省においては、御指摘の環境ホルモン戦略計画を踏まえつつ、関係省庁との連絡を密にして今後の対応方針について、検討してまいりたい。

四の1について

 環境庁においては、本年六月に設置された「内分泌撹乱化学物質問題検討会」の審議を原則として公開している。
 厚生省においては、本年四月に設置された「内分泌かく乱化学物質の健康影響に関する検討会」の審議を原則として公開している。
 農林水産省においては、検討会等の公開については、平成七年九月二十九日閣議決定「審議会等の透明化、見直し等」(以下「平成七年閣議決定」という。)を踏まえて対応することとしている。
 通商産業省においては、化学品に関する重要事項を調査審議する場として設置されている化学品審議会における議論は、原則公開することが同審議会の運営規定上明示されており、内分泌かく乱化学物質問題について、同審議会において審議する際には、この運営規定に従うこととなる。
 労働省においては、本年七月から開催している「内分泌かく乱化学物質等新種有害物質問題基本検討会」については、平成七年閣議決定を踏まえて議事概要及び提出資料を公開したところである。

四の2について

 三の1から3までについてで述べたように、関係省庁間で必要な情報交換を実施しているところであり、今後とも省庁間の連携を推進してまいる所存である。

四の3について

 御指摘のPRTR(環境汚染物質排出・移動登録)に係る検討会のメンバーの氏名等については、別紙一のとおりである。

五について

 御指摘の厚生省所管の庁舎等におけるポリカーボネート製食器の使用状況については、把握していない。ポリカーボネート製食器については、厚生省においては、本年三月十三日に開催された食品衛生調査会の毒性部会及び器具・容器包装部会の合同部会におけるポリカーボネート製食器から溶出するビスフェノールAの内分泌かく乱作用による人の健康への影響についての意見を踏まえ、現段階の知見に基づく限り、使用禁止等の措置を講ずる必要はないものと考えており、現時点において御指摘の国立病院等の病院で使用される食器の材質及び厚生省所管の庁舎等におけるポリカーボネート製食器の使用状況の実態調査を実施する予定はない。

六の1について

 豊能郡美化センター周辺の土壌等から高濃度のダイオキシン類(ポリ塩化ジベンゾフラン及びポリ塩化ジベンゾ―パラ―ジオキシンの混合物をいう。以下同じ。)が検出された原因については、現在厚生省において原因究明のための調査検討を行っているところであるが、豊能郡環境施設組合が設置した豊能郡美化センターダイオキシン対策検討委員会の報告等のこれまでに得られた情報によれば、因果関係は不明であるが、豊能郡美化センターから排出されたダイオキシン類が検出されたものであると推測される。

六の2について

 市町村(一部事務組合を含む。以下同じ。)の設置するごみ焼却施設から排出されるダイオキシン類の濃度の測定については、「ごみ焼却施設からのダイオキシン排出実態等総点検調査の実施について」(平成八年七月十二日衛環第二百十四号厚生省生活衛生局水道環境部環境整備課長通知)において、年間の平均的な運転状況に近い条件の日を選定して測定を行うよう依頼したところであり、当該通知に基づいて行われた測定に関して、御指摘のような事実が判明した場合には、都道府県を通じて事実関係を確認するとともに、当該市町村に対して再度測定を求める等適切な措置を講じてきたところである。また、排ガス中のダイオキシン類濃度の測定については、平成九年十二月一日から廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行規則(昭和四十六年厚生省令第三十五号)第四条の五第一項第二号カに基づいて実施することとされており、当該測定が適正に行われるよう厚生省において市町村に対する指導を強化してまいりたい。
 なお、豊能郡美化センターにおける排ガス中のダイオキシン類濃度の測定について御指摘のような事実を厚生省が確認した時期は本年五月であり、この時点において当該施設は休止していたので、直ちに再度測定を求めることはしなかったものであるが、今後、当該施設が再稼働する場合には適切な測定が行われるよう指導したところである。

六の3について

 厚生省においては、ダイオキシン類濃度の測定の適正な実施を確保する方策として、都道府県等の立入検査や報告徴収の際に、測定時の燃焼温度を連続測定したデータと通常運転時の燃焼温度のデータとを比較する方法が効果的であると考えている。

 また、ダイオキシン類濃度の測定の精度を向上する手法として、平成十年度に、同一の場所から同時に採取した試料を複数の測定機関において測定し、その結果を比較する方法について研究しているところである。

七の1について

 御指摘の血液調査は、本年六月に京都で開催された日本環境化学会主催の第七回環境化学討論会において摂南大学の宮田秀明教授が、御指摘の地域の土壌及び住民の血液の調査結果を発表した件であると承知しているが、お尋ねの調査結果の原因、住民の健康への影響、焼却炉の改修の必要性等については、これらを検討するために必要な調査対象者の職業歴、居住歴、食生活の状況等の生活環境、当該焼却炉からのダイオキシン類の排出状況、周辺環境の汚染状況等の十分な情報がないこと及び現時点では血液中のダイオキシン類濃度からダイオキシン類の健康影響を評価する手法が確立していないことから、当該調査結果に対する厚生省の見解及びこれを示すことができる時期を答弁することは困難である。

七の2について

 厚生省においては、ダイオキシン類による人体汚染状況の把握のための調査研究を推進しているところであり、平成九年度には、厚生科学研究費補助金を、東京農業大学渡邊昌教授を主任研究者とする血液等の人体汚染状況に関する調査研究に対して交付したところである。この調査研究に係る研究費補助金の額は千七百万円、研究概要は人体の各臓器中のダイオキシン類の分布及び人体の汚染指標としての血液中のダイオキシン類濃度の調査、血液中微ダイオキシン類濃度の測定方法に関する検討等であり、調査研究の結果については、研究者において報告書を取りまとめ、公表する予定である。

七の3について

 御指摘の焼却炉周辺住民の血液中のダイオキシン類濃度の調査の実施については、地域住民の健康保持の観点から、関係する地方公共団体において必要性も含め個別に判断されるものである。厚生省としては、現時点においては調査の前提となる血液中のダイオキシン類濃度の測定方法、評価方法等が確立されていない状況にあり、全国的な調査を直ちに実施するよう地方公共団体を指導することは困難であると考えている。

七の4について

 厚生省においては、平成九年度に厚生科学研究として行われる食品中のダイオキシン類濃度等に関する調査研究、母乳中のダイオキシン類に関する調査及び血液等の人体の汚染状況に関する調査研究の実施に関し、ダイオキシン類の人体に及ぼす影響を総合的に調査検討することができるよう厚生省と各調査研究の主任研究者が連絡調整を行う「厚生省ダイオキシン類総合研究検討会議」を設置し、意見交換を行っているところである。

八の1について

 御指摘のコプラナーPCBの調査については、環境庁においては、平成二年度から化学物質環境汚染実態調査において、河川等の底質や生物中のコプラナーPCBの調査を実施しており、平成八年度にはその調査対象地域を拡大したところである。また、平成九年度に実施した大気環境モニタリング調査においては、全国十地点で大気中のコプラナーPCBをダイオキシン類と併せて測定したところである。平成十年度においては、ダイオキシン類緊急全国一斉調査の中で大気、河川等の底質、土壌、生物等の中のコプラナーPCBの測定を行うこととしているところである。
 厚生省においては、平成八年度から食品中のコプラナーPCB濃度の調査を実施しているところであり、平成九年度にはその調査対象地域等を拡大したところである。また、平成九年度に実施した八十人の母親を対象とした母乳中のダイオキシン類調査においてもコプラナーPCBを併せて測定したところである。
 コプラナーPCBの調査については、引き続き実施してまいりたい。

八の2について

 本年五月に開催された御指摘のWHO欧州地域事務局及びIPCSの専門家会合(以下「WHO等専門家会合」という。)において、コプラナーPCBを含めたダイオキシン類の耐容一日摂取量の値として、体重一キログラム当たり一日一ピコグラムから四ピコグラムまでの範囲とすることが合意されたと承知しているが、この新たな耐容一日摂取量の値の設定の根拠等の詳細については、今後、出席した各国の専門家間で最終的な確認の上で、正式な報告として公表されるものと承知している。
 厚生省においては、食品衛生調査会及び生活環境審議会が合同で設置したダイオキシン類健康影響評価特別部会において、WHO等専門家会合の報告を詳細に分析、評価するとともに、新たな知見も含め、我が国におけるダイオキシン類の耐容一日摂取量の値について専門的見地からの検討を行っていくこととしており、同特別部会の検討結果を踏まえ、必要に応じて対応してまいりたい。
 また、環境庁においては、環境保健部に設置した「ダイオキシンリスク評価検討会」等において、WHO等専門家会合の報告を詳細に分析、評価するとともに新たな知見を含め、ダイオキシン類の健康影響について専門的見地からの検討を行ってまいりたい。

九の1について

 臭素化ダイオキシン類(ポリ臭化ジベンゾフラン及びポリ臭化ジベンゾ―パラ―ジオキシンの混合物をいう。以下同じ。)については、環境庁による昭和六十三年度の有害化学物質汚染実態追跡調査において河川等の底質や生物中の濃度を測定したところ、いずれの試料からも検出されなかったことから、当時の中央公害対策審議会化学物質専門委員会において、臭素化ダイオキシン類が人の健康に被害を及ぼしているとは考えられないと評価されたところであるが、今後、関係省庁が連携して知見の収集に努めるとともに、必要に応じて適切に対処してまいりたい。

九の2について

 ドイツ連邦共和国において、臭素化ダイオキシン類に対する規制があることは文献により承知しているが、その詳細については、現時点では十分把握していないところである。
 ドイツ連邦共和国を含む諸外国における臭素化ダイオキシン類に対する対策の状況については、現在、環境庁において、臭素化ダイオキシン類の主要な発生源と考えられる臭素系難燃剤の製造、使用及び販売に関する規制の動向について、厚生省において、臭素化ダイオキシン類を規制の対象に含めているか否かについて、在外公館を通じて詳細の把握に努めているところである。また、通商産業省において、関係機関を通じて臭素化ダイオキシン類に関する海外の状況の把握に努めているところである。

九の3について

 厚生省においては、平成十年度に厚生科学研究費補助金によりダイオキシン類に関する調査研究を行うこととしているが、その研究採択課題は現時点においては決定していないため、補助金の交付額、研究の概要等を示すことはできない。
 環境庁及び通商産業省においては、平成十年度の当初予算及び補正予算において、臭素化ダイオキシン類のみに着目した調査等の対策費は計上していない。
 ハロゲン系原材料と臭素化ダイオキシン類の発生との科学的因果関係について必ずしも解明されていない現時点では、御指摘の臭素化ダイオキシン類の発生に係るハロゲン系原材料の特定は困難であり、その生産量、使用される製品等を示すことはできない。

十の1について

 農林水産省においては、国民に対し安全かつ良質な食品を提供する立場から、年間を通じて、農林水産消費技術センターにおいて野菜、果実、いも類、茶等の農産物やその加工品についてヘキサクロロベンゼン等約五十種類の農薬の残留実態調査を実施するとともに、食糧事務所において米麦についてマラチオン等約八十種類の農薬の残留実態調査を実施している。
 これらの調査の結果については、平成七年度から平成九年度までの間において、食品衛生法第七条第一項の規定に基づく残留農薬基準を上回る農薬を確認した事例はないが、引き続きこれらの調査を実施していく方針である。

十の2について

 お尋ねの最大無作用量に相当すると考えられる無毒性量及びADI(一日摂取許容量。人が生涯にわたり毎日その物質を摂取し続けたとしても、安全性に問題のない量として、通常、無毒性量に安全係数百分の一を乗じて設定される量をいう。以下同じ。)については、環境庁長官が農薬取締法第三条第一項第四号から第七号までに該当するかどうかの基準(以下「登録保留基準」という。)を設定する際に考慮されているものである。
 農薬の登録保留基準については、環境庁長官が、農業資材審議会の意見を聴いた上でこれを定め、農薬取締法第三条第一項第四号から第七号までに掲げる場合に該当するかどうかの基準を定める等の件(昭和四十六年農林省告示第三百四十六号)として告示している。また、登録保留基準のうち作物残留に係る基準については、環境庁長官が、中央環境審議会への諮問及び同審議会の答申を経て、農薬取締法第三条第一項第四号から第七号までに掲げる場合に該当するかどうかの基準を定める等の件第一号イの環境庁長官の定める基準(昭和四十八年環境庁告示第四十六号)として告示している。この場合、中央環境審議会は、土壌農薬部会において、農薬の製造業者又は輸入業者から提出された毒性及び残留性に関する試験成績等に基づいて農薬の無毒性量、ADI及び作物残留性について審議している。また、このうち、無毒性量及びADIについては、厚生省が食品衛生上の危害を防止する観点から国立医薬品食品衛生研究所等の専門家からなる残留農薬安全性評価委員会に意見を聴いて検討し、得られた結果のうち、ADIの値を当該農薬に関する意見として環境庁に通報しており、同部会の審議においては、この意見を尊重しているところである。
 農薬取締法第十二条の六の規定に基づく農薬安全使用基準については、農林水産大臣が、農薬の安全かつ適正な使用を確保するため必要があると認める場合に、農業資材審議会への諮問及び同審議会の答申を経て、これを定め、公表している。この場合、農業資材審議会は、農薬部会において、同法第二条第二項第四号に係る適用病害虫の範囲及び使用方法、農薬の製造業者又は輸入業者から提出された残留性に関する試験成績等に基づき、農薬の種類ごとにその使用の時期及び方法等を審議している。

十の3及び5について

 農薬を含む化学物質の内分泌かく乱作用による人の健康への影響については、その有無、種類、程度等が未解明であり、現在、関係省庁において、調査研究を行っているところである。したがって、現段階においては、御指摘の農薬の毒性評価及び残留農薬に係る基準の見直しを行う必要はないと考えているが、これらの調査研究の結果や国際的な動向を踏まえ、食品衛生調査会等の意見も聴きつつ、必要に応じて、その見直しについて検討してまいりたい。
 なお、食品衛生法第七条第二項の規定に基づき、食品が残留農薬に係る基準を超えた場合には、国産又は輸入の区別なく、当該食品の販売の禁止等の措置が講じられているところである。

十の4について

 食品衛生法第七条第一項の規定に基づく残留農薬基準については、御指摘の農薬の収穫後使用(ポストハーベスト使用)に限定した検討は行っていないが、公衆衛生の見地から国民の健康を確保するため、農薬の使用時期にかかわらず、平成十二年までに二百農薬につき残留農薬基準を設定することを目標として、現在、食品衛生調査会の毒性部会及び残留農薬部会の合同部会において、検討を進めているところである。合同部会の現在の構成メンバーの氏名等については、別紙二のとおりである。

十一の1について

 御指摘の有機農業については、消費者の安全志向、健康志向等にこたえつつ、生産者が様々に工夫しながら取組を拡大してきており、農林水産省においては、これを地域資源の循環活用及び環境への負荷軽減を図る環境保全型農業の一形態と位置付けているところである。
 また、農林水産省においては、御指摘の「有機農業」及び「有機栽培」については定義を定めていないが、「有機農産物」については、平成四年十月に、この定義を、当該農産物の生産過程等において、化学合成農薬、化学肥料及び化学合成土壌改良資材(以下「化学合成資材」と総称する。)を使用しない栽培方法又は必要最小限の使用が認められる化学合成資材を使用する栽培方法により生産された農産物であって、必要最小限の使用が認められる化学合成資材以外の化学合成資材の使用を中止してから三年以上を経過し、堆肥等による土づくりを行ったは場において収穫されたものと定め、「有機農産物及び特別栽培農産物に係る表示ガイドライン」(農産園芸局長、食品流通局長、食糧庁長官通達)において示している。
 この定義を定めるに当たり、農林水産省においては、消費者、生産者、流通関係者及び学識経験者から構成される「青果物等特別表示検討委員会」を設置し、平成三年から平成四年にかけて、国内で有機農業に取り組む団体の意見や諸外国における考え方を踏まえて検討を行ったところである。

十一の2について

 御指摘の無農薬食品、低農薬食品、有機食品等の基準について、特に内分泌かく乱化学物質問題を受けて検討は行っていない。
 内分泌かく乱化学物質の人の健康への影響については、その有無、種類、程度等が未解明であることから、その調査研究を進めるとともに、この結果や国際的な動向を踏まえ、必要な対応を検討してまいりたい。

十一の3について

 御指摘の報告は、「THE LANCET」第三百四十三号及び第三百四十七号に掲載されたものであると思料する。厚生省においては、現在、御指摘の有機食品の摂取と人の精子数との間の因果関係に関する調査は行っていないが、平成九年度から、健常男子の精子の数についての基礎的調査を実施しているところであり、調査研究の結果については、報告書として取りまとめ、公表する予定である。

別紙一 1/19

別紙一 2/19

別紙一 3/19

別紙一 4/19

別紙一 5/19

別紙一 6/19

別紙一 7/19

別紙一 8/19

別紙一 9/19

別紙一 10/19

別紙一 11/19

別紙一 12/19

別紙一 13/19

別紙一 14/19

別紙一 15/19

別紙一 16/19

別紙一 17/19

別紙一 18/19

別紙一 19/19

別紙二 1/3

別紙二 2/3

別紙二 3/3