質問主意書

第142回国会(常会)

答弁書


答弁書第二七号

内閣参質一四二第二七号

  平成十年七月二十八日

内閣総理大臣 橋本 龍太郎   


       参議院事務総長 黒澤 隆雄 殿

参議院議員清水澄子君提出プルトニウム混合燃料加工に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。


   参議院議員清水澄子君提出プルトニウム混合燃料加工に関する質問に対する答弁書

一の1について

 日本から搬出された使用済燃料をグレート・ブリテン及び北部アイルランド連合王国(以下「イギリス」という。)及びフランス共和国の再処理工場において再処理することにより回収された核分裂性プルトニウムのそれぞれの国における在庫量は、別表第一のとおりであると事業者から聞いている。

一の2について

 日本の使用済燃料を再処理することにより回収された核分裂性プルトニウムの平成十年のイギリスにおける使用量は、約二百キログラムの見通しであるが、同年にフランス共和国において、日本の使用済燃料を再処理することにより回収された核分裂性プルトニウムを使用する予定はないと事業者から聞いている。同年の在庫量の見通しについては承知していない。また、平成十一年及び平成十二年における使用量及び在庫量の見通しについては承知していない。

一の3について

 我が国は、計画的にプルトニウムを利用していくこととしており、海外再処理により回収されるプルトニウムについては、基本的には、欧州で混合酸化物燃料(以下「MOX燃料」という。)に加工した後、我が国に返還輸送しプルサーマルで利用することとしている。プルサーマルによるプルトニウムの利用が進むことに伴い、海外における在庫量も将来的に減少するが、その推移の具体的な数値の想定は現在有していない。

二の1について

 御質問のプルトニウムの移転に関しては、許可、承認、届出等の法的手続は必要とされていない。

二の2の(1)について

 ベルギー王国政府から政府に対して、ベルギー王国内の核物質の施設ごとの在庫量を年単位で通報されることとはなっていない。政府と欧州共同体委員会との間の平成九年二月十日付け書簡の交換による取極(以下「日・欧州共同体委員会取極」という。)によれば、MOX燃料加工のためにフランス共和国からベルギー王国に移転される核物質の量は限定されており、かつ、ベルギー王国内においては日・欧州共同体委員会取極の附属書に掲げられる二の施設にしか置かれないことが確保されているので、ベルギー王国における当該核物質の施設ごとの在庫量について報告を求めることとはしていない。

二の2の(2)について

 我が国は、核兵器の不拡散に関する条約第三条1及び4の規定の実施に関する日本国政府と国際原子力機関との間の協定(昭和五十二年条約第十三号)により、ベルギー王国内にある核物質についていかなる義務も負うものではない。
 なお、我が国の事業者が所有する核物質を含め、ベルギー王国内にあるすべての核物質について、核兵器の不拡散に関する条約第三条1及び4の規定の実施に関する欧州原子力共同体(以下「ユーラトム」という。)、ベルギー王国を含むユーラトム加盟非核兵器国及び国際原子力機関の間の協定の規定に従い、在庫量、在庫変動等がユーラトムから国際原子力機関に報告されるものと承知している。

二の3について

 我が国の事業者が所有するプルトニウムをMOX燃料加工のためにフランス共和国からベルギー王国,へ輸送するに当たり、政府にはアメリカ合衆国政府の承認を求める義務がないため、同政府の承認は必要でない。

二の4の(1)について

 我が国の事業者が所有するプルトニウムをMOX燃料加工のためにフランス共和国からベルギー王国へ輸送するに当たり、フランス共和国政府から政府に対し、昭和四十七年二月二十六日に署名された原子力の平和的利用に関する協力のための日本国政府とフランス共和国政府との間の協定(昭和四十七年条約第九号。以下「日仏原子力協定」という。)第四条3の規定により必要とされる政府の同意を与えるより依頼(以下「事前同意依頼」という。)があったが、事前同意依頼には、御質問の内容は含まれていない。

二の4の(2)について

 事前同意依頼には、御質問の日仏原子力協定に規定される「認められた者」に関する依頼内容は含まれていない。
 日仏原子力協定上、「認められた者」との要件が関係するのは、我が国とフランス共和国との間における原子力資機材等の移転等の場合及び日仏原子力協定に基づいて移転された原子力資機材等の管轄内移転の場合である。御質問のベルゴニュークリア社は、我が国の事業者が所有するプルトニウムをベルギー王国において受領し、MOX燃料に加工する者であり、当該プルトニウムのフランス共和国からべルギー王国への移転は、日仏原子力協定上の管轄外移転に該当するので、日仏原子力協定上の「認められた者」との要件は関係しない。

二の4の(3)について

 事前同意依頼の詳細については、フランス共和国政府との関係から言及することを差し控えたいが、その概要は、ベルギー王国に平成八年十月以降及び平成十年一月以降にそれぞれ我が国の事業者が所有する二百キログラム以上の一定量のプルトニウムをMOX燃料加工のために移転するに当たって、日仏原子力協定第四条3の規定により必要とされる政府の事前同意を求めるというものである。

二の4の(4)について

 事前同意依頼の内容は、一定量のプルトニウムのフランス共和国からベルギー王国への移転について政府の同意を求めることであり、それ以外に依頼内容はない。

二の4の(5)について

 政府は、フランス共和国政府に対し、フランス共和国政府からの事前同意依頼において通報された量のプルトニウムをベルギー王国へ移転することについて同意を与えたものである。同意したプルトニウムの移転量は、東京電力株式会社(以下「東電」という。)がMOX燃料加工に係る委託契約をした二百体程度の全部に相当するものではないと承知している。

二の4の(6)について

 御質問の移転時期は、政府がフランス共和国政府に対しそれぞれ事前同意を与えた平成九年二月十日以降及び平成十年四月二十七日以降となる。

三の1について

 政府が我が国関係事業者から、また、欧州共同体委員会及びベルギー王国政府が先方関係事業者からそれぞれ確認した核物質の移転予定量、移転予定時期等を踏まえて、核物質の明細等として日・欧州共同体委員会取極の附属書及び政府とベルギー王国政府との間の平成九年二月十日付け書簡の交換による取極(以下「日・ベルギー取極」という。)の附属書に記載することとしたものである。

三の2について

 日・欧州共同体委員会取極の附属書及び日・ベルギー取極の附属書Aの「2 核物質の使用」における「当該MOX燃料は、フランス共和国を経由して日本国に返還され」との記述は、関係する事業者間のMOX燃料加工に係る委託契約の内容に沿ったものであり、昭和六十二年十一月四日に署名された原子力の平和的利用に関する協力のための日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の協定(昭和六十三年条約第五号。以下「日米原子力協定」という。)の附属書に関係するものではない。
 なお、当該MOX燃料の我が国への返還については、日米原子力協定第十一条に基づく実施取極の規定に従って行われることとなる。

三の3の(1)について

 日・欧州共同体委員会取極における「核物質は、混合酸化物燃料の形態で、かつ、予定される移転を日本国政府に対し文書により少なくとも一か月前に通告することにより、附属書の2に掲げるとおり、フランス共和国に移転することができる。」との規定は、MOX燃料加工のためにフランス共和国からベルギー王国へ輸送される我が国の事業者が所有するプルトニウム及び我が国からベルギー王国へ輸送される我が国の事業者が所有するウランが、MOX燃料としてフランス共和国を経由して日本に返還されるとの関係事業者間のMOX燃料加工に係る委託契約を踏まえたものであり、同規定により、当該核物質がMOX燃料としてフランス共和国に移転される以外は他国へ移転されないことが確保される。
 なお、当該MOX燃料がフランス共和国へ移転される場合は日仏原子力協定の適用対象とすることが適切であるので、政府が日仏原子力協定の適用対象とするための手続(政府からフランス共和国政府への事前通告)を行うに十分な期間と考えられる一か月を欧州共同体から政府への事前の移転通知の期間として併せて規定したものである。

三の3の(2)について

 日・欧州共同体委員会取極における「核物質は、混合酸化物燃料の形態で、かつ、予定される移転を日本国政府に対し文書により少なくとも一か月前に通告することにより、附属書の2に掲げるとおり、フランス共和国に移転することができる。」との規定は、三の3の(1)についてで答弁したとおり、関係事業者間のMOX燃料加工に係る委託契約を踏まえたものである。加工されたMOX燃料のベルギー王国からフランス共和国への移転、さらに、フランス共和国から我が国への返還輸送については、我が国の事業者の意向に反して行われることはないと承知している。また、我が国事業者からは、プルサーマルの実施について地元の理解を得た上で、我が国への返還輸送を行うこととしていると聞いている。

三の3の(3)について

 東電は、MOX燃料を海上輸送する場合には、船舶安全法(昭和八年法律第十一号)第二十八条第一項及び危険物船舶運送及び貯蔵規則(昭和三十二年運輸省令第三十号)第九十一条の九第一項に基づき、放射性輸送物(MOX燃料が容器に収納されているものをいう。以下同じ。)について、船積み前に、安全性の観点から定められている基準に適合するかにつき運輸大臣の確認を受けなければならない。また、同社は、加工されたMOX燃料を装荷する前に、核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律(昭和三十二年法律第百六十六号)第二十六条第一項の規定に基づく通商産業大臣の許可を受ける等所要の安全審査等を経なければならない。

四の1について

 政府は、東電から、御質問のフランス共和国からベルギー王国への一回目のプルトニウムの輸送が完了し、その後MOX燃料の加工が開始されることとなる旨を平成九年五月に聞いている。

四の2について

 御質問のMOX燃料の製造に関しては、許可、認可、承認等の法的手続は必要とされていない。

四の3について

 事業者の海外におけるMOX燃料の加工に関しては、許可、認可、承認等我が国国内法令に基づく手続は必要とされていないが、一般に、加工が行われる国の関係国内法令を遵守しつつ適切に行われるものと理解している。

五の1について

 東電及び関西電力株式会社のMOX燃料の運送に使用される容器に関して、放射性輸送物としての設計の承認の申請日、その設計を承認した日及び承認番号、当該承認を受けた設計に係る容器の承認の申請日及びその容器を承認した日並びに当該承認を受けた容器の個数及び所有者の氏名は、それぞれ別表第二のとおりである。

五の2及び3について

 MOX燃料の我が国への返還輸送の具体的な方法については確定していないが、日米原子力協定の関連規定等に従い、関係省庁間において連携を図り、適切な輸送が行われるよう努めてまいりたい。

別表第一

別表第二