質問主意書

第142回国会(常会)

答弁書


答弁書第二四号

内閣参質一四二第二四号

  平成十年七月二十八日

内閣総理大臣 橋本 龍太郎   


       参議院事務総長 黒澤 隆雄 殿

参議院議員加藤修一君提出地球温暖化対策等に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。


   参議院議員加藤修一君提出地球温暖化対策等に関する質問に対する答弁書

一の1の(1)について

 地球温暖化対策推進大綱(以下「大綱」という。)は、二千十年(平成二十二年)に向けて政府が緊急に推進すべき地球温暖化対策について、「地球温暖化問題への国内対策に関する関係審議会合同会議」(以下「合同会議」という。)において聴取した各委員の意見をも踏まえ、平成九年十二月十九日の閣議決定により設置された、内閣総理大臣を本部長として地球温暖化対策に関係する閣僚から構成される地球温暖化対策推進本部(以下「本部」という。)において、本年六月十九日に決定したものである。したがって、これは法的拘束力を有するものではないが、構成員である関係閣僚は、それぞれの所管行政分野において、大綱に従って地球温暖化対策を強力に推進していくべきものとされている。
 大綱は、数値目標も含む地球温暖化対策に関する国会の御議論をも踏まえて、数値目標の達成に向けた方針等について政府として策定したものであり、今後とも、国会での御議論や国民的議論等を通じ、地球温暖化対策を推進してまいりたい。

一の1の(2)について

 本部は、毎年、合同会議の委員の意見を聴取した上で、大綱に基づく具体的措置の推進状況を点検し、必要に応じてその内容の見直しを行うこととしている。従来から、合同会議の議事要旨等は公開しているところであり、また、今後、大綱が定める地球温暖化対策に関する具体的措置の推進状況及びその点検の結果については、毎年、公開することとしており、大綱に盛り込んだ事項の達成を目指すこととしている。

一 の2の(1)について

 昨年十二月の「気候変動に関する国際連合枠組条約第三回締約国会議」(以下「第三回締約国会議」という。)で採択された「京都議定書」(以下「議定書」という。)では、吸収源に関し、議定書第三条3において、千九百九十年(平成二年)以降の植林、再植林等に起因する温室効果ガスの発生源からの排出の量及び吸収源による除去の量の純変化に限定して、排出の抑制及び削減に関する数量化された約束(以下「数量化された約束」という。)を履行するために用いられることとされた。さらに議定書第三条4において、土地利用の変化及び林業等に係る部門に関連する人為的活動については、「気候変動に関する政府間パネル」(以下「IPCC」という。)による方法論に関する作業や「科学上及び技術上の助言に関する補助機関」から提供される助言等を考慮に入れて、いずれの追加的な活動を、どのように気候変動に関する国際連合枠組条約(平成六年条約第六号。以下「条約」という。)附属書Iの締約国の温室効果ガスの割当量に加え又は当該割当量から減ずるかについての方法、規則及び指針について、議定書の締約国の第一回会合以降において決定することとされた。
 政府としては、議定書が将来真に意味のあるものとなるよう、最新の科学的知見に照らして、右規定に基づいた検討作業に貢献できるよう努力していくつもりであり、御指摘にあるような実質的な議定書改定を考えているものではない。
 また、御指摘の吸収源に関する政府の姿勢について、我が国は、第三回締約国会議以前から、吸収源については、温暖化対策における重要性を認識しつつも、分野によって温室効果ガスの発生源からの排出の量及び吸収源による除去の量の純変化の計測の精度(以下「計測の精度」という。)に関する科学的不確実性の問題が存在するため、数量化された約束の履行のために用いる場合には、この問題の解決が不可欠であるとの基本的考え方を有していた。しかし、右問題の解決には詳細な検討が必要なこと、右検討により交渉を複雑化させることは避けるべきであると判断したこと等から、第三回締約国会議までは、吸収源を数量化された約束の履行のために用いるべきではないとの立場をとっていた。
 その後、第三回締約国会議の交渉の過程において、吸収源を盛り込まねば合意が成立しない状況となったことに加え、条約附属書Iの締約国が数量化された約束を履行するために用いられる土地利用の変化及び林業に係る人為的活動は、比較的高い科学的確実性が得られている千九百九十年(平成二年)以降の植林、再植林等に限定されたこと並びにいずれの追加的な人為的活動を、どのように条約附属書Iの締約国の温室効果ガスの割当量に加え又は当該割当量から減ずるかについての方法等については今後決定するとされたこと等、吸収源についての議論に進展が見られ、我が国が有する右基本的考え方に沿った解決が図られることとなったことから、我が国として吸収源に関し合意した。
 このように、我が国の基本的な立場は、第三回締約国会議以前から今日まで一貫しており、御指摘にあるような我が国の国際的信用を下げるものとは考えていない。

一の2の(2)について

 議定書では、第三条4において、土地利用の変化及び林業等に係る部門に関連する人為的活動については、IPCCによる方法論に関する作業等を考慮に入れて、いずれの追加的な活動を、どのように条約附属書Iの締約国の温室効果ガスの割当量に加え又は当該割当量から減ずるかについての方法等について、議定書の締約国の第一回会合以降において決定することとされている。「必要な追加的吸収分」とは、数量化された約束を達成するために我が国として必要となる追加的な温室効果ガスの吸収分を意味しており、右規定に基づいて決定されるものである。具体的にどのような追加的吸収分が認められるかは、かかる決定に向けた今後の国際交渉にゆだねられている。
 「日本全体の森林等による純吸収量」の「森林」とは、国内のすべての森林を指す。さらに、「等」には、「他から森林に転用された土地の土壌」、「森林から他へ転用された土地の土壌」及び「農業土壌」が含まれる。また、「純吸収量」とは、右森林等の「総吸収量」から「総排出量」を差し引いた量を意味している。

一の2の(3)について

 議定書では、第三条3において、千九百九十年(平成二年)以降の植林、再植林等による純吸収量を数量化された約束を履行するために用いることとされている。
 我が国の場合、千九百九十年(平成二年)以降の植林、再植林等に起因する二酸化炭素の吸収量及び排出量を見積もると、二千八年(平成二十年)から二千十二年(平成二十四年)までの五年間の年平均で、吸収量については約二百万トン(炭素換算)、排出量については約百万トン(炭素換算)と試算され、差引きで毎年約百万トン(炭素換算)の純吸収量となるものと見込まれるが、これは、基準年である千九百九十年(平成二年)の温室効果ガス排出量の約〇・三パーセントに相当する。「温室効果ガスの排出・吸収に関する国家目録作成のためのIPCCガイドライン」(以下「IPCCガイドライン」という。)は、議定書第三条3の規定する純吸収量の算出方法については示していないが、我が国の場合、吸収量の算出に当たっては、千九百九十年(平成二年)から二千十二年(平成二十四年)までの植林量の推移の予測に基づき、二千八年(平成二十年)から二千十二年(平成二十四年)までの間に増加が見込まれる森林の蓄積量を推計し、IPCCガイドラインの係数等に準拠して、森林の成長に伴って蓄積される炭素の量を算出し、排出量の算出に当たっては、国土利用計画の目標数値を基に、二千八年(平成二十年)から二千十二年(平成二十四年)までの間に減少が予測される森林の蓄積量を推計し、失われる森林が含有する炭素の量をIPCCガイドラインの係数等に準拠して算出したものである。
 また、我が国全体の森林等による純吸収量については、IPCCガイドラインにおいて算出方法が示されており、これに基づき推計したところ、二千十年(平成二十二年)ごろには年間約千二百万トン(炭素換算)の純吸収量が見込まれるが、これは、基準年である千九百九十年(平成二年)の温室効果ガス排出量の約三・七パーセントに相当する。

一の2の(4)について

 現時点における条約附属書Iの締約国の吸収源に関するデータはまとめられていないため、同締約国全体で拡大される吸収量についての算定は困難である。

一の2の(5)について

 吸収源に関しては、現時点で計測の精度に関し比較的高い科学的確実性が得られているものに限定すべきであるとの認識の下、議定書では、千九百九十年(平成二年)以降の植林、再植林等に起因する温室効果ガスの発生源からの排出の量及び吸収源による除去の量の純変化に限定して数量化された約束の履行のために用いられることが規定されている。
 吸収源によって「抜け穴」が拡大するとの御指摘であるが、条約においては、大気中の温室効果ガスの濃度を安定化させることを究極的な目的とし、温室効果ガスの人為的な排出の抑制並びに吸収源の持続可能な管理及び保全を促進することの重要性について規定しているところ、議定書の吸収源に関する規定は、条約のかかる規定を踏まえ、吸収源がいわゆる「抜け穴」にならないようにとの観点からも議論を重ねた結果であり、これが議定書の崩壊をもたらすものとは考えていない。

一の2の(6)について

 温室効果ガスの排出及び吸収量の計算方法等を定めた現行のIPCCガイドラインは、森林を伐採した時点で二酸化炭素が排出されたものとみなして計算する方式を採っている。しかし、木材の利用及び廃棄に伴う二酸化炭素の貯蔵量や排出量についても正確にとらえるとの観点から、現在、木材の輸出入が行われる場合も念頭に入れて具体的な計算方法がIPCCで検討されている。政府としては、今後のIPCCの議論を踏まえ、これらの計算方法につき検討していくことといたしたい。

一の3について

 議定書で定められた温室効果ガスの排出削減目標の達成に向け、第百四十二回国会にエネルギーの使用の合理化に関する法律の一部を改正する法律案(以下「改正省エネ法案」という。)及び地球温暖化対策の推進に関する法律案(以下「地球温暖化対策推進法案」という。)を提出し、改正省エネ法案は、同国会で成立を見たところである。エネルギーの使用の合理化に関する法律(昭和五十四年法律第四十九号。以下「省エネ法」という。)、地球温暖化対策推進法案及び環境基本法(平成五年法律第九十一号)には、温室効果ガスの排出の抑制等のための「革新的技術開発」及び「国民各界各層の更なる努力」の促進に対応する措置も規定されている。
 また、大綱では、講すべき地球温暖化対策として、「革新的な環境・エネルギー技術の研究開発の強化」を掲げ、超臨界流体利用技術等のエネルギー利用部門における省エネルギー関連技術や超高効率太陽光発電等の現在の技術水準を超えた革新的な技術開発等を強力に推進することとしている。また、「ライフスタイルの見直し」を大綱の重要な柱として位置付け、夏時間の導入についての国民的議論の展開等、国、地方公共団体、事業者及び一人一人の国民が議すべき具体的な対策を示し、これらを強力に推進することとしている。
 これらの対策を総合的に推進することにより、必要な削減量が確保できるよう努めてまいりたい。

二の1について

 省エネ法に基づく機械器具等に係る判断の基準となるべき事項(基準値の決定を含む。)の策定に当たっては、今回の法改正を機に、総合エネルギー調査会(自動車にあっては、総合エネルギー調査会及び運輸技術審議会)において学識経験者等の意見を幅広く聴取するとともに、基準案については公開し、広く国民から意見を求める方針としている。

二の2の(1)の(イ)について

 第一種特定事業者が提出する中長期計画には、具体的な設備の導入や投資の計画についての記載を求めるところ、これらの中に、通常、企業の経営上の秘密に属するものと考えられる事項が多く含まれることから、個々の計画の内容等を一律に公表することは適当ではないと考えている。

二の2の(1)の(ロ)について

 今回の省エネ法改正で創設された第二種エネルギー管理指定工場制度の対象となる工場等においては、当該工場等のエネルギーの使用状況を適確に把握していない例が多く見受けられるため、第二種特定事業者に対し、記録義務を課してエネルギーの使用状況を適確に把握させることにより、当該工場等におけるエネルギーの使用の合理化への取組を促すことが有効であると考えている。
 なお、第二種特定事業者に対しては定期報告義務は課していないものの、同事業者は省エネ法第二十五条第二項の規定に基づく報告徴収に応ずべき義務がある。

二の2の(1)の(ハ)について

 第一種特定事業者が提出する省エネ法に基づく中長期計画や定期報告に記載される内容には、年間の当該工場等のエネルギー使用量、生産数量、具体的な設備の導入の計画、投資の計画等、通常、企業の経営上の秘密に属するものと考えられる事項が多く含まれることから、個々の計画の内容や定期報告の内容を一律に公表することは適当ではないと考えている。ただし、第一種エネルギー管理指定工場全体に関する集計結果で可能なものがあれば、公表を検討してまいりたい。

二の2の(2)の(イ)について

 「工場におけるエネルギーの使用の合理化に関する事業者の判断の基準」(平成五年七月二十九日通商産業省告示第三百八十八号。以下「工場の判断基準」という。)においては、エネルギー消費原単位を工場ごと又は事業者ごとに年平均一パーセント以上低減させる目標のほか、事業者が技術的かつ経済的に可能な範囲内で遵守すべき燃料の燃焼の合理化、熱の動力等への変換の合理化等に関する具体的かつ客観的な基準を定めている。
 工場等におけるエネルギーの使用の合理化に係る取組が十分であるか否かについては、これらの事項に照らして総合的に判断することとしている。

二の2の(2)の(ロ)について

 エネルギー消費原単位は、工場等におけるエネルギーの使用の合理化に関する努力の状況を把握するための一指標であるが、製品の生産量、販売価格、生産品目の変更等のエネルギーの使用の合理化に関する努力と直接には関係のない要因によっても変化する可能性があるものである。このため、工場等に対してエネルギー消費原単位の一パーセント以上の改善の義務を課し、達成できなかったことのみをもって、企業名・工場名を自動的に公表することは適切ではないと考えている。

二の2の(2)の(ハ)について

 エネルギーの使用の合理化に関する法律の一部を改正する法律(平成十年法律第九十六号)は、来年四月にも施行する予定としており、工場の判断基準についても、それまでに改正、強化することとしている。工場の判断基準の改正、強化に当たっては、総合エネルギー調査会において、学識経験者等の意見を幅広く聴取することとしており、同調査会における本件に係る議論は、原則として公開することとしているが、個別企業の経営上の秘密に属する事項も取り扱う可能性があることから、そのような場合には非公開とすることとしている。

二の2の(3)について

 省エネ法に基づく中長期計画、定期報告等は、省エネ法の円滑な施行を図るために事業者に課した措置であり、報告内容は個々の企業の経営上の秘密に属するものと考えられる事項が多く含まれることから、これらを一律に省エネ法の施行にかかわらない他の省庁等に提供することは適当ではないと考えている。

二の2の(4)について

 工場等における省エネルギーへの取組を促進するため、優秀な取組に対して通商産業大臣賞等を授与することを実施している。

二の3の(1)の[1]について

 対象機器の設定に当たっては、当該機器の普及動向、当該機器のエネルギー消費の実態、当該機器に関する省エネルギー技術の動向等を踏まえ、これらが省エネ法第十八条第一項に定める要件に該当するか否かを総合的に判断することとなる。

二の3の(1)の[2]について

 御指摘の機器については、省エネ法第十八条第一項に定める要件に該当するか否かを総合的に判断した結果、対象としなかったものである。
対象機器の拡大については、今後、総合エネルギー調査会において学識経験者等の意見を幅広く聴取する等の方法により、検討してまいりたい。

二の3の(1)の[3]について

 対象となる機械器具及びその対象範囲の適否については、これまでも、必要に応じ検討を行ってきたところである。
 具体的な適用除外については、今後、総合エネルギー調査会(自動車にあっては、総合エネルギー調査会及び運輸技術審議会)において、学識経験者等の意見を幅広く聴取しつつ、検討してまいりたい。

二の3の(1)の[4]及び[5]について

 トップランナー値の設定に当たっては、まず、特定機器について、同一の目標を設定するのにふさわしい区分を設定し、次に、それぞれの区分において、現在商品化されている製品のうち、特殊品を除いた上で、エネルギー消費効率が最も優れている機器のエネルギー消費効率を基本として、将来の技術開発の見通し等を加味した値を設定することとしている。
 具体的な設定については、今後、総合エネルギー調査会(自動車にあっては、総合エネルギー調査会及び運輸技術審議会)において、学識経験者等の意見を幅広く聴取しつつ、検討してまいりたい。

二の3の(1)の[6]について

 具体的な適用除外については、今後、総合エネルギー調査会(自動車にあっては、総合エネルギー調査会及び運輸技術審議会)において、学識経験者等の意見を幅広く聴取しつつ、検討してまいりたい。

二の3の(1)の[7]について

 特定機器の製造事業者等は、省エネ法第二十五条第五項の規定に基づく報告徴収に応ずべき義務がある。製造事業者等における特定機器ごとの効率、販売台数等については、必要に応じ報告徴収等を行うことにより把握する予定である。なお、把握した内容の公表については、個別企業の経営上の秘密に属する事項であり得ることを勘案して、その是非の検討を行ってまいりたい。

二の3の(1)の[8]について

 特定機器におけるエネルギー消費効率の目標基準の設定に当たっては、参議院経済・産業委員会における附帯決議の趣旨を踏まえ、総合エネルギー調査会(自動車にあっては、総合エネルギー調査会及び運輸技術審議会)において、学識経験者等の意見を幅広く聴取しつつ、検討することとしている。

二の3の(1)の[9]について

 工場で用いられるボイラー等は、その使用の実態に応じて、形態、性能等が工場ごとにそれぞれ異なっていることから、一律にトップランナー方式によるエネルギー消費効率の目標基準を設定することは、必ずしも適当ではない面もあると考えられる。
 いずれにせよ、今後、対象機器の拡大については、総合エネルギー調査会において学識経験者等の意見を幅広く聴取する等の方法により、検討してまいりたい。

二の3の(2)について

 特定機器に係るエネルギー消費効率の目標値を達成するためには、各事業者が技術開発、商品開発をするための対応期間が必要であり、その期間を考慮し、適切な目標年度を定めることとしている。特定機器ごとの具体的な目標年度については、総合エネルギー調査会(自動車にあっては、総合エネルギー調査会及び運輸技術審議会)において、学識経験者等の意見を幅広く聴取しつつ、検討してまいりたい。

二の3の(3)について

 省エネ法においては、一般消費者が特定機器を購入するに当たりエネルギー消費効率の高い機器の選択に資するため、カタログ、本体等にエネルギー消費効率を表示することを義務付けているところである。しかしながら、御指摘のようなエネルギー消費効率の違いによる価格差分の回収については、機器の使用実態、実勢価格、エネルギーの価格の変化等に左右されることから、その表示を一律に義務付けることは適当ではないと考えている。
 いずれにせよ、表示の在り方については、今後、総合エネルギー調査会(自動車にあっては、総合エネルギー調査会及び運輸技術審議会)において、学識経験者等の意見を幅広く聴取しつつ、検討してまいりたい。

二の4について

 今回の省エネ法改正により創設された第二種エネルギー管理指定工場制度においては、すべての業種の工場等を対象としており、御指摘の大規模業務施設についても対象となる。

二の5について

 改正省エネ法案の閣議決定に当たっては、行政内部において、法運用面での手続や解釈に関し考え方を整理する趣旨で、覚書を締結している。通商産業省と他の各省庁との間で締結した覚書の内容は、別紙一記載のとおりである。

二の6の(1)について

 省エネ法は、地球温暖化問題も含め、内外におけるエネルギーをめぐる経済的社会的環境に応じた燃料資源の有効な利用の確保に資することを目的として、エネルギーの使用の合理化を促進する観点から必要な措置を定めている。今回の法改正は、内外におけるエネルギー消費量の著しい増加、大量のエネルギーの消費が環境に及ぼす影響に対する懸念の高まり等を背景として、これまで進めてきたエネルギーの使用の合理化を一層促進するために、所要の措置の創設、強化を図るものである。したがって、基本方針や判断基準の策定に係る所掌事務について、現行の整理を特に変更する必要はないものと考えている。

二の6の(2)について

 今回の法改正により創設された省エネ法第十九条第三項に基づく特定機器の製造事業者等に対する勧告に係る措置をとるべき旨の命令は、省エネ法第十九条第一項に基づく勧告に係る措置の実施を徹底するために設けるものである。したがって、命令の実施主体は当該勧告の権限を有する通商産業大臣(自動車にあっては、通商産業大臣及び運輸大臣)とすることが適当であり、付議すべき審議会は通商産業大臣(自動車にあっては、運輸大臣)の諮問機関である審議会とすることが適当である。

二の6の(3)について

 省エネ法第四条第一項等に基づく判断の基準を定め、又はその改定を行うに当たっては、事前に通商産業省と環境庁との間で協議することとしており、改正省エネ法案の閣議決定に当たっては、その旨の覚書を通商産業省と環境庁との間で締結している。

二の7について

 国内におけるエネルギー消費量の急増、海外におけるエネルギー供給基盤の脆弱化、地球温暖化問題の顕在化等の内外のエネルギー事情その他の経済的社会的環境の変化に応じ、省エネ法附則第二項に基づき、省エネ法の規定に検討を加えることとなる。一定の年限により見直すことを規定するよりも、これらの環境の変化に応じて随時の見直しを行うことが適当であるとの判断に立ち、このように規定しているものである。

三の1について

 総合エネルギー調査会は、総合エネルギー調査会設置法(昭和四十年法律第百三十六号)に基づき、「エネルギーの安定的かつ合理的な供給の確保に関する総合的かつ長期的な施策に関する重要事項を調査審議する」とされており、その一環として、同調査会需給部会において「長期エネルギー需給見通し」の改定を行っている。
 また、「長期エネルギー需給見通し」の改定に当たっては、同部会に、産業界の関係者のほか、学識経験者、マスコミ関係者、消費者代表等幅広い分野の委員に御参加いただき、様々な観点から活発な審議を行っていただいた上で、これらを踏まえた中間報告が取りまとめられたところである。

三の2について

 「長期エネルギー需給見通し」の改定に至る総合エネルギー調査会需給部会の審議の過程においては、経済成長率、全国総人口の見通し等、試算の前提となる外生変数及び試算の方法について、委員のみならず、一般に公開している。経済成長率については、エネルギー分野においては、資源開発、関連施設の整備等に長期間を要することから、短期的な経済動向よりも長期的な経済見通しを踏まえることが適切であり、今回の需給見通し改定に当たっても、二千年(平成十二年)までは、我が国の経済社会の中期展望としての位置付けを有する「構造改革のための経済社会計画」のマクロフレームを採用した。
 エネルギー消費量の多い四業種(鉄鋼(粗鋼)、化学(エチレン)、窯業土石(セメント)及び紙パルプ(紙・板紙))については、事業者団体からのヒアリング等に基づき、千九百九十六年度(平成八年度)に対する二千十年度(平成二十二年度)の生産量を、鉄鋼(粗鋼)及び化学(エチレン)についてはおおむね横ばい、窯業土石(セメント)については年率約〇・四パーセント増、紙パルプ(紙・板紙)については年率約一・九パーセント増と想定し、かかる生産量の想定をモデルの外生変数として織り込み「長期エネルギー需給見通し」の改定を行っている。

三の3について

 現在運転中の原子力発電所は、合計五十一基であり、その容量は合計約四千四百九十二万キロワットである。さらに、本年三月に電気事業者から通商産業大臣に届出がなされた電力供給計画によれば、二千十年度(平成二十二年度)末までに運転を開始する予定の原子力発電所として、新たに合計二十 基(容量合計約二千五百八十六万キロワット)の建設が予定されているところ、各立地予定地点における原子力発電所の建設状況等については別紙二記載のとおりである。なお、これ以降の見通しについては、電力供給計画の記載事項が、届出年度以降十年間に使用を開始する予定の発電所又は届出年度以降五年以内に電源開発基本計画に記載される予定の発電所の設置等に関する計画に限られるため、現時点では明らかになっていない。
 政府としては、今後とも、原子力発電所の安全性の確保に万全を期しつつ、原子力発電所の必要性やその安全性に関する国民の理解を求める活動の強化、原子力発電所の立地地域振興策の充実等に最大限取り組むことにより、二千十年度(平成二十二年度)における原子力による発電電力量四千八百億キロワット時の実現を目指して全力を挙げて取り組むこととしている。
 原子力発電所の廃止措置については、平成十年三月三十一日に営業運転が停止された東海発電所を除き、現段階において、平成二十二年以降に行われる分を含め、具体的に廃止措置を計画している原子力発電所があるとは聞いていないが、いずれにせよ、電気事業者自らが、運転を継続した場合と廃止した場合との経済性の比較衡量等を行い、安全の確保を前提に総合的に判断するものと認識しているところである。
 今後、高経年化に伴う設備利用率の低下が懸念されるところであるが、他方で安全管理の徹底によるトラブル停止の低減や、定期検査期間の短縮等の諸方策を講ずることにより、設備利用率の更なる向上が期待されることから、「長期エネルギー需給見通し」では最近の実績と同程度にこれを維持し得るとの想定を示しているが、従来どおり、核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律(昭和三十二年法律第百六十六号。以下「原子炉等規制法」という。)及び電気事業法(昭和三十九年法律第百七十号)に基づき、設計、建設及び運転の各段階において、厳重な安全規制を実施するとともに、各原子力発電所ごとに運転管理専門官を派遣する等、電気事業者に対する厳しい指導監督を行うことにより、安全の確保に万全を期することとしている。
 また、プルサーマルについては、各発電所ごとの最初のウラン・プルトニウム混合酸化物燃料装荷の前に、原子炉等規制法第二十六条の規定に基づき原子炉設置変更許可申請が行われ、国の安全審査においてその安全性が十分に確認されることとなっている。

三の4について

 電力需要については、電力の利便性、安全性等から、その最終エネルギー消費に占める割合は上昇傾向にあり、今後ともこの傾向は続くものと見込まれる。
 このため、産業部門の全般的な省エネルギー努力、トップランナー方式による機器の効率改善等の対策を行うことにより、電力の使用についても最大限の効率化を図ることとしている。
 この結果、「長期エネルギー需給見通し」では、特に追加的対策を講じない基準ケースにおいて、二千十年度(平成二十二年度)における電力需要が千九百九十年度(平成二年度)比で五八・一パーセント増加することが見込まれるのに対し、対策後は、これを三九・三パーセント増に抑制することを見込んでいる。さらに、直近の千九百九十六年度(平成八年度)との比較では、基準ケースでの三四・〇パーセント増に対し、対策を講ずる場合には一八・〇パーセント増に抑制することを見込んでいる。

三の5の(1)について

 本年六月十一日に総合エネルギー調査会需給部会により取りまとめられた「長期エネルギー需給見通し」の改定において、太陽光発電、風力発電、廃棄物発電、太陽熱利用等の新エネルギーについては、二千十年度(平成二十二年度)において、千九百九十六年度(平成八年度)の約三倍(原油換算で千九百十万キロリットル)の導入を見込んでいる。
 しかしながら、新エネルギーの導入等に当たっては、

1 太陽光発電については、火力発電等に比して、コストが著しく割高であり、大量導入を進めるためには、大幅なコストの低減が不可欠であること
2 太陽光発電、風力発電等自然エネルギーを利用したものについては、気象条件等による影響が大きく、電源として不安定であること
3 廃棄物発電については、地域住民との調整が必要であること
4 これまで普及が進んできた太陽熱利用については、近時、灯油等競合するエネルギーの価格が低位安定していることもあり、導入が停滞していること等の課題があり、現時点においては、各種の施策を講ずることによってようやく二千十年度(平成二十二年度)に全エネルギーに占める新エネルギーの割合を三・一パーセントとすることが可能であると考えている。このため、今後とも、各種施策を着実に講することにより、「長期エネルギー需給見通し」に掲げる導入量を達成するため最大限の努力を傾注してまいりたい。

三の5の(2)について

 太陽光発電の普及、促進のため、平成六年度から平成八年度までは機器の性能向上等を目的とした住宅用太陽光発電システムモニター等事業費補助金制度(以下「モニター事業」という。)を、平成九年度からは市場の自立化を図ることを目的とした住宅用太陽光発電導入基盤整備事業費補助金制度(以下「基盤整備事業」という。)を設けており、基盤整備事業については、設置コストの低下に伴い、モニター事業に比してし件当たりの補助金額の引下げを行っているが、コストの低減効果により、平成六年度以降、設置者の負担額は毎年低下傾向にあるところ、平成六年度から平成八年度までのモニター事業の対象実績数は約三千五百件程度であったのに対し、平成九年度における基盤整備事業の申請件数は八千三百件を超える等、太陽光発電システムの導入は大幅に増加してきている。
 このように、モニター事業に比して、基盤整備事業における補助金額の引下げによる太陽光発電の導入の停滞はなく、むしろ所期の需要拡大は着実に図られてきており、十分な効果をあげてきているものと思料する。
 さらに、平成十年度においては、基盤整備事業の予算を前年度比三十六億円増の百四十七億円に拡大しており、これを着実に活用することにより、平成九年度を上回る導入が進むものと考えている。
 基盤整備事業の申請等に係る手続等については、会計上の原則を踏まえつつ、設置者の負担軽減等を図るべく、最大限弾力的な運用が可能となるよう努力しているところである。
 なお、税制による支援については、現在、エネルギー需給構造改革投資促進税制等において、新エネルギー設備に係る税制上の優遇措置を講じており、今後とも、基盤整備事業による支援と相まって太陽光発電の普及が促進されていくものと考えている。

三の6について

 天然ガスは、環境、保安、供給安定性等の様々な面において優れた特性を有するエネルギーであり、今後我が国の基幹エネルギーの一つとして積極的に導入を推進すべきであると認識している。
 このような観点から、国内市場における天然ガスの地域間需給ギャップを解消し、更なる天然ガスの導入拡大を図るため、政府、民間事業者等の関係者において様々な努力を行っているところである。
 一方、天然ガスの供給基盤の整備は、天然ガスの導入促進を図る上で、極めて重要な課題の一つであると認識している。中でも、天然ガスパイプラインの整備に当たっては、関係事業者間において経済性、供給安定性等を衡量しつつ合理的判断の下に検討がなされ、その結果、天然ガスの更なる導入促進が図られるものと考えている。

三の7について

 我が国の石炭灰の発生量は、平成八年度実績で約七百二十万トン(うち電気事業者からの発生量は約五百三十万トン)であり、その約七十パーセントは有効利用されている。電気事業者が所有している石炭灰の埋立処分場は、今後とも相当な期間埋立処分が可能であり、現在建設中又は準備中の石炭火力発電所についても、相当期間埋立処分が可能な容量の処分場を有している。また、紙・パルプ、化学等の一般産業においては、現在、自社埋立て等により処理されており、今後ともこれにより処理可能とみられている。
なお、セメント製造業から排出される石炭灰は、全量セメント原料として有効利用が図られている。
 このように石炭灰は埋立てによっても処分されるが、他方、再生資源として有効利用を図るべきものであり、特に電気事業における石炭灰は、再生資源の利用の促進に関する法律(平成三年法律第四十八号)において、「指定副産物」として、その利用を促進することが定められている。
 政府としては、石炭灰の有効利用を促進すべく、技術開発及び税制優遇措置等を実施しており、これらの施策を通じ、今後ともセメント、土木、建設等の分野における石炭灰の有効利用を積極的に進めていく所存である。

三の8について

 既に二回実施された卸電力入札においては、いずれも募集量を上回る大規模かつ効率的な電源の応募があり、現行の卸電力入札制度は極めて効果的に機能しているものと認識している。このように卸電力入札制度導入による効率的な電力供給体制の構築という目的は着実に達成されつつあるところ、さらに発電分野への一層の競争メカニズムの導入による電気事業の構造改革の推進を図るため、特段の状況の変化がない限り、平成十一年度から、入札の対象を現行の短期開発電源のみから長期開発電源を含めた原則すべての火力発電に拡大し、入札を実施することが予定されている。
 他方、第三回締約国会議で合意された温室効果ガス削減目標を実現する上で、今後の卸電力入札制度の運用を、これと整合性の取れたものとすることが必要である。
 本年六月には、第三回締約国会議における合意も踏まえた電力需給の在り方について、電気事業審議会需給部会において中間報告が行われ、この中で卸電力入札制度と環境問題の両立の方策について、経済性とともに二酸化炭素排出量のより少ない電源が優位になるような募集又は評価方法を導入する必要性が提言され、具体的には、二酸化炭素排出量の多寡を反映させる評価や、燃料種を限定した募集を電力会社の判断により行う方向性が示されたところである。
 同部会の結論を踏まえ、今後、卸電力入札制度の適切な運用を図っていくことにより、経済性のみならず環境への配慮にも優れた応札者が優位となるようにすることが可能となり、かかる競争の過程において料金低減と環境保全の同時達成が図られることとなると考える。

三の9について

 運輸部門における省エネルギー対策の一つとして推進している物流効率化施策の一環として、衛星利用による位置確認システム(GPS)等の情報通信技術をトラックの運行管理等に活用することによる合理的な物流システムの構築について、現在、検討しているところである。

別紙一 1/3

別紙一 2/3

別紙一 3/3

別紙二 平成十年度電力供給計画における原子力開発計画 1/3

別紙二 平成十年度電力供給計画における原子力開発計画 2/3

別紙二 平成十年度電力供給計画における原子力開発計画 3/3