質問主意書

第142回国会(常会)

答弁書


答弁書第二三号

内閣参質一四二第二三号

  平成十年七月二十一日

内閣総理大臣 橋本 龍太郎   


       参議院議長 斎藤 十朗 殿

参議院議員荒木清寛君提出視覚障害者等の社会参加の推進等に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する


   参議院議員荒木清寛君提出視覚障害者等の社会参加の推進等に関する質問に対する答弁書

一の1について

 お尋ねの中途失明者の人数については、正確には把握していないが、平成三年度に行った身体障害者実態調査(身体障害者の生活状況等を把握するため五年ごとに厚生省が実施している調査。以下「実態調査」という。)における資料に基づき、その大半が失明者で占められている一級視覚障害者(身体障害者福祉法(昭和二十四年法律第二百八十三号)第四条の規定に該当する視覚障害者であって、同条の規定により交付された身体障害者手帳中に身体障害者福祉法施行規則(昭和二十五年厚生省令第十五号)第七条第一項第二号に規定する障害の級別として一級と記載されているものをいう。)のうち当該障害の発生時の年齢が二十歳以上のもの(以下「成人期一級視覚障害者」という。)について推計したところ、その数は約七万三千人であり、その視覚障害の原因は、事故によるものが約一割、疾病によるものが約六割であり、この疾病の内訳は、綱脈絡膜及び視神経系疾患が最も多く、次いで水晶体疾患及び角膜疾患の順となっている。また、お尋ねの視覚障害と認定された年齢については、厚生省においては、特に調査を実施していないため承知していない。
 中途失明者を含む視覚障害者に対して、市町村等において実施されている福祉サービスとしては、視覚障害者更生施設における職業訓練及び日常生活訓練、盲人安全つえや点字タイプライター等の補装具及び日常生活用具の給付、点字広報の発行や点字図書館における点字図書の貸出し等があり、また、視覚障害者を含む身体障害者を対象として、市町村等において実施されている福祉サービスとしては、訪問介護(ホームヘルプ)、日帰り介護(デイサービス)等がある。

一の2について

 成人期以降に視覚に障害を有するに至った者に対する施策については、視覚障害者更生施設において、その者に応じた個別の更生援護計画を作成し、これに基づく日常生活訓練等を行う等その者に適した内容となるよう配慮しているところである。
 また、障害者プランにおいては、中途失明者の自立と社会参加を促進するため、訪問介護等の在宅サービスの充実、点訳奉仕員の充実、点字広報の配布等の社会参加促進事業の実施、通所授産施設の整備等の推進を図っているところである。

一の3について

 御指摘の視覚障害者の障害の重度化については、近年の眼科における医療技術の進歩及び普及により、全体として視覚障害者は少なくなる傾向にある一方で、遺伝性疾患や糖尿病、高血圧症等の疾患に起因する眼疾病については、いまだに治療が困難なものが多く、重度の障害が発生する場合が多いということに関連しているものと考えられる。
 このような視覚障害者の重度化に対する対策としては、原因となる遺伝性疾患や糖尿病、高血圧症等の疾患について、治療法等に関する研究の推進、予防、早期発見及び早期かつ適切な医療といった総合的な対策に取り組んでまいりたい。

一の4について

 糖尿病は、網膜症を引き起こす可能性が高く、我が国では年間約三千人が糖尿病性網膜症を原因として視覚障害に認定されているという研究者の推計がある。また、糖尿病は、腎症を始めとして様々な合併症をもたらす疾患でもあり、その予防、早期治療等は重要であると認識している。
 このため、平成九年十一月に厚生省が実施した糖尿病実態調査の結果について、現在解析を行っているところであり、この解析結果を踏まえ、総合的な糖尿病対策について検討してまいりたい。

一の5について

 実態調査においては、御指摘の「障害の原因別」の集計とは別に、障害の原因となった疾病について、脊髄損傷、脳血管障害、心臓疾患等の二十一分類により集計しているところである。この障害の原因となった疾病の集計においては、御指摘の糖尿病については、二十一分類中の「網脈絡膜・視神経疾患」等に、悪性新生物については、その部位により、「ぼうこう疾患」、「大腸疾患」等に分類しているところである。

二の1について

 お尋ねの外出介護員(ガイドヘルパー)の数、市町村における事業の実施状況及び利用状況については、外出介護は身体障害者に係る訪問介護事業等により提供されるサービスの中の一つとして行われるものであるため、外出介護員のみの数等については把握していない。
 障害者プランにおいては、外出介護員を含めた訪問介護員の平成十四年度末までの整備目標として、高齢者の需要に対応するために確保する数として新・高齢者保健福祉推進十か年戦略(新ゴールドプラン)に計上している数に四万五千人を上乗せして確保することとしている。訪問介護員の整備目標が外出介護員を含めた形で掲げられているのは、身体障害者については訪問介護サービスの内容が入浴等の身体介護、洗濯等の家事援助、相談及び助言並びに外出介護から構成されており、その算出に当たり、外出介護の需要も含めた訪問介護のサービス総量として推計を行うことが適当と考えたことによるものである。

二の2について

 御指摘の身体障害者ホームヘルプサービス事業運営要綱には御指摘の記述があるが、社会参加促進の観点から必要な外出については幅広く外出介護員の派遣の対象と認められるべきものと考えており、市町村においてもそのように運営されていると承知している。
 また、御指摘の「社会通念上本制度を適用することが適当でない外出」とは、公費により外出介護員を派遣して介護を行うことについて国民の理解を得難いような外出を指すが、その判断については、事業実施主体である市町村において、個別の事例ごとにその外出の目的、その外出が当該身体障害者の社会参加に資する効果等を総合的に勘案して行われるべきものと考えている。

二の3について

 御指摘の外出介護員(ガイドヘルパー)ネットワーク事業については、「障害者の明るいくらし」促進事業実施要綱に基づき、平成九年度において四十三都府県及び八政令指定都市で実施されているところである。
 この事業に基づき提供される外出介護は、利用者が居住する市町村から身体障害者福祉法に基づき提供される訪問介護サービスとは異なり、都道府県の紹介に基づき居住市町村以外の市町村の外出介護員から個別に提供されるため、その費用の負担は、居住市町村以外の市町村に求めるべきものではなく、利用者本人が対価として負担することとなるものと考えている。また、現時点では、外出介護員(ガイドヘルパー)ネットワーク事業において利用者の負担軽減のための助成を行う考えはない。

三の1について

 盲導犬(道路交通法(昭和三十五年法律第百五号)第十四条第一項に規定する盲導犬をいう。)の実働頭数は約八百頭であると把握している。また、視覚障害者のうち実際に盲導犬を使用している者の割合は把握していないが、盲導犬の実働頭数及び平成八年度に行った実態調査における視覚障害者数の推計を踏まえれば、約〇・三パーセントと推計される。
 過去五年間の盲導犬の育成状況は、平成五年度百十頭、平成六年度百四頭、平成七年度百頭、平成八年度百三頭及び平成九年度百六頭となっている。
 また、盲導犬の育成については、「障害者の明るいくらし」促進事業の中で、盲導犬の実働頭数として平成十三年度末までに約二千頭を確保する盲導犬育成計画を定めており、平成十年度予算においては、同事業の中で、新たに二百五十頭を育成できる予算措置を講じ、都道府県に補助することとしている。

三の2について

 盲導犬を使用できる視覚障害者は、目的地までの地図を頭の中で描けること、盲導犬を管理する時間と能力があること等の一定の条件を満たす者であり、盲導犬の利用を希望する者と使用できる者は必ずしも一致するとは考えられず、盲導犬の利用を希望している人数については把握することは考えていない。
 盲導犬について、その普及が必ずしも進まない理由については、盲導犬の育成団体から、盲導犬が動物であることにより利用を希望しない者があること、個々の視覚障害者と盲導犬の相性が必ずしもよいとは限らないこと及び盲導犬の育成頭数が少ないことがあると聞いているところである。
 なお、視覚障害者が地域で生活していく上で、移動手段を確保することは重要であることから、盲導犬の普及は必要であると認識しており、平成十年度においては、三の1についてで述べたとおり、二百五十頭を新規に育成できる予算措置を講じたところであり、今後とも盲導犬育成事業の普及に努めてまいりたい。

三の3について

 御指摘の盲導犬の維持費については、現在、把握していない。また、盲導犬の維持費については、現在、国としてこれに対して助成を行う考えはなく、その実態について把握することは考えていない。盲導犬の維持費に対して助成を行っている地方自治体は、東京都並びに名古屋市及び神戸市であると承知している。

四の1について

 点訳奉仕員や朗読奉仕員については、都道府県が行う「障害者の明るいくらし」促進事業及び市町村が行う市町村障害者社会参加促進事業において、その養成及び確保に努めているところであり、現在、ボランティアとして、点訳奉仕員が約一万四千人、朗読奉仕員が約一万四千五百人登録されている。
 視覚障害者が円滑により多くの情報を入手できるようにするためには、点訳奉仕員及び朗読奉仕員を更に養成していくことが必要と考えているが、御指摘の点訳奉仕員及び朗読奉仕員の処遇及び身分制度については、現在のボランティアとしての活動により、質的には十分な点訳及び朗読サービスが行われていると考えられることから、今後ともボランティアを幅広く募集することにより点訳奉仕員及び朗読奉仕員の普及に努めてまいりたい。

四の2について

 政府としては、平成七年二月に高度情報通信社会推進本部において決定した「高度情報通信社会推進に向けた基本方針」に基づき、高度情報通信社会を高齢者、身体障害者等(以下「障害者等」という。)にも十分配慮した人に優しい社会とするために、誰でもいつでもどこでも自由に使える、低廉で使い勝手のよいサービスや機器の普及に配慮することとし、関係省庁において、次のような取組を進めているところである。
 通商産業省においては、障害者等が容易に情報処理機器を利用できるようにするため、平成七年度に障害者等が利用する情報処理機器の備えるべき仕様として「障害者等情報処理機器アクセシビリティ指針」を作成、告示し、平成七年度から三年間、当該指針の説明会と指針に対応した情報処理機器の展示会を四十七都道府県で開催してきたところである。本指針では、画面表示文字の音声化機能を必須とする他御指摘のアイコンについても音響情報又は触覚情報により出力する機能を推奨しているところである。また、新エネルギー・産業技術総合開発機構が政府の出資により実施する産業科学技術研究開発制度に基づく医療福祉機器技術研究開発においても、視覚障害者のマルチメディア情報へのアクセスを支援するシステムの開発が行われている。
 郵政省及び厚生省においては、平成九年度から共同で調査研究会を開催し、障害者等を含む利用者が電気通信を円滑に利用することを可能とするため、「電気通信設備のアクセシビリティ指針」を本年六月に作成したところであり、今後、障害者等の団体及び関係事業者に対する説明会を開催する等によりその普及を図ることとしている。また、郵政省通信総合研究所において、人に優しい情報通信端末の基礎技術の確立を目指して、視覚障害者のためにアイコンの代わりに触覚と音声で入出力するための研究開発等を行っている。さらに、通信・放送機構が政府の出資により、小石川リサーチセンター等において視覚障害者の電気通信の容易な利用を実現するシステムの研究開発等を行っているところであり、今年度から障害者等が情報通信の利便を享受できる「情報バリアフリー」環境を整備するため、個々の障害者等の特性に応じ、最適な入出力機能を自動的に調整して提供するシステムの研究開発を行うこととしている。
 御指摘の視覚障害者が情報処理機器等の高度の情報通信機器を取得することを容易にするための公的助成を設けることについては、これらの機器が視覚障害者が日常生活を送る上で不可欠なものとはいえないこと等から、現時点においては公的助成等の措置を講じることは困難であると考えている。

四の3について

 御指摘の家電製品への点字の表示に関しては、現在、民間企業及び関係団体において、視覚障害を有する人々にも使える製品リストの作成、点字取扱説明書の作成、凸図記号つき製品の品目の増加等の自主的な取組が行われているところであり、これらの自主的な取組を促進してまいりたい。

四の4について

 身体障害者福祉法第十八条第二項に基づく重度身体障害者日常生活用具給付等事業においては、身体障害者の日常生活上の便宜を図るための用具のうち厚生大臣が定めるものについては、必要に応じ、市町村から給付又は貸与が行われることとされており、電話については従来その対象種目としているところであるが、御指摘の携帯電話については、同事業の給付等の対象種目に加える必要性は少ないものと考えている。また、御指摘の電話料金の減免については、電気通信事業法(昭和五十九年法律第八十六号)に基づく料金減免制度の対象となる通信に視覚障害者が携帯電話を使用する場合を追加できるかどうか等について、その緊急性、必要性等を総合的に勘案して、検討してまいりたい。

五の1について

 御指摘の公共交通機関における障害を有する人々等のための施設整備(以下「障害者に配慮した施設整備」という。)の状況は、別紙のとおりである。五の2について障害者に配慮した施設整備の促進については、交通事業者等に対し、平成六年三月に運輸省において作成した「公共交通ターミナルにおける高齢者・障害者等のための施設整備ガイドライン」等に基づいて指導等を行うとともに、日本開発銀行及び交通エコロジー・モビリティ財団を通じた資金面での支援等の措置を行っているところである。障害者に配慮した施設整備は、交通事業者等が各々の経営判断により自主的に計画するものであることから、国においてその目標値を明示することは考えていない。

五の3について

 視覚障害者等の交通弱者の安全の確保に資するため、警察庁においては、都道府県公安委員会に対し、必要に応じて交通安全施設等の整備を図るよう指導している。御指摘の視覚障害者が利用するときだけ携帯用発信器の操作により音が鳴るような信号機については、各都道府県公安委員会において、視覚障害者が道路を横断する際の安全を確保するため、個別具体的な道路交通環境の実態を勘案しつつ整備を推進しているものと承知している。

六について

 御指摘の医療関係職種を始めとする各種資格制度における欠格条項については、「障害者対策に関する新長期計画」(平成五年三月二十二日障害者対策推進本部決定。以下「新長期計画」という。)に掲げられた必要な見直しについての検討の一環としてその現状調査を行い、昨年度末にその結果を取りまとめたところであり、この結果を踏まえ、現在中央障害者施策推進協議会(以下「中障協」という。)においてその見直しについて御議論いただいているところである。今後、総理府に置かれた障害者施策推進本部において中障協と連携を図りながら統一的な対処方針を策定し、各省庁において新長期計画の終期(平成十四年度)までに障害者に係る欠格条項の必要な見直しについて検討を行うこととしている。

(別 紙) 公共交通機関における障害者に配慮した施設整備の状況(平成8年度末)