質問主意書

第142回国会(常会)

答弁書


答弁書第六号

内閣参質一四二第六号

  平成十年五月二十六日

内閣総理大臣 橋本 龍太郎   


       参議院議長 斎藤 十朗 殿

参議院議員栗原君子君提出市街地上空の自衛隊機飛行訓練等に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。


   参議院議員栗原君子君提出市街地上空の自衛隊機飛行訓練等に関する質問に対する答弁書

一の1の(1)について

 御指摘の自衛隊の航空機の飛行は、陸上自衛隊の立川駐屯地(以下「立川駐屯地」という。)への出入りのための立川飛行場における離着陸及び同飛行場の航空交通管制圏の通過時に行われているものである。
 御指摘の訓練空域は、「航空交通安全緊急対策要綱」(昭和四十六年八月七日中央交通安全対策会議決定。以下「緊急対策要綱」という。)に基づいて、自衛隊の航空機が曲技飛行等又は航空交通の安全を阻害するおそれのある飛行(以下単に「曲技飛行等」という。)を伴う飛行を行う訓練空域及び試験空域と空港の空域並びに航空路の空域及びジェットルートの空域を完全に分離するために公示されているものであるが、立川飛行場における離着陸及び同飛行場の航空交通管制圏の通過は、訓練空域及び試験空域で行う曲技飛行等を伴う飛行ではない。

一の1の(2)及び(3)について

 御指摘の小平市の要望は、小平市に関わる飛行計画(日時、機種、飛来数、空路、訓練空域、目的等)をすべて事前に公表することを求める旨のものであったと承知しているが、自衛隊の航空機の飛行に関し、すべての計画を事前に公表することは、自衛隊の練度が明らかになるおそれがあることから、事柄の性質上困難である。
 防衛庁においては、従来から、飛行訓練の事前の公表について、関係する地方公共団体等から要望がなされた場合及び当該訓練に対する住民の関心が高いと考える場合等には、防衛上の配慮をしつつ、可能な範囲で対応してきているところであり、今後とも、このような方針の下に対応していく考えである。

一の2の(1)について

 お尋ねの事項のうち、立川駐屯地における年間の総飛行訓練時間、編隊飛行訓練の年間実施回数、夜間飛行訓練の年間実施回数、関係基地所属の対戦車ヘリコプターの年間立寄り回数及びその他のヘリコプターの年間立寄り回数については、個別具体的な訓練の頻度等を明らかにすることにより、自衛隊の練度が明らかとなるおそれがあることから、事柄の性質上、答弁することは差し控えたい。
 立川駐屯地に所在する部隊の所属パイロット(航空機操縦のための要員。以下同じ。)数は、別表第一のとおりである。
 立川駐屯地における航空機燃料の各年度における消費量は、別表第二のとおりである。なお、平成四年度以前については、記録の保存期間が経過したため、当該記録は残っていない。
 立川駐屯地における体験搭乗者の各年度の総数は、別表第三のとおりである。体験搭乗飛行の年間離着陸回数については、自衛隊における業務の管理上、該当する統計は作成していない。

一の2の(2)について

 御指摘の体験搭乗者とは、防衛庁が行う広報活動の一環として、自衛隊の航空機に搭乗することを承認された部外者である。

一の2の(3)について

 防衛庁及び運輸省においては、自衛隊の航空機の夜間の飛行訓練のために特別に訓練空域及び試験空域並びに飛行経路は設定していない。

一の2の(4)について

 御指摘の事項については、個別の飛行について当該機種の航空機が配備されている部隊の所在する駐屯地等の記録はしていないが、平成九年度末において、御指摘の機種の航空機が配備されている部隊の所在する陸上自衛隊の駐屯地は、東部方面隊の警備区域においては、霞ケ浦駐屯地及び木更津駐屯地である。

一の3について

 立川駐屯地における御指摘の訓練の実施回数については、個別具体的な訓練の頻度を明らかにすることにより、自衛隊の練度が明らかになるおそれがあることから、事柄の性質上、答弁することは差し控えたい。
 御指摘の航空機が配備されている部隊の所在する駐屯地等については、自衛隊における業務の管理上、該当する記録は作成していない。

一の4について

 御指摘の立川飛行場に係る飛行経路については、同飛行場の運用状況にかんがみ、自衛隊の航空機の離着陸等の集中を緩和し、航空交通の安全性の確保、当該経路下の地域の騒音の緩和等に配慮することが必要と考え、平成元年六月十四日以来、御指摘のBSポイントと御指摘の多摩ポイントとの間を結ぶ経路、BSポイント及び多摩ポイントと立川飛行場の場周経路との間等を結ぶ経路並びに同飛行場の場周経路を、同飛行場への有視界飛行方式による進入又は出発の際に使用することとしたものである。
 陸上自衛隊の各駐屯地における飛行経路の新設及び変更の事前の公表等については、従来から、関係する地方公共団体等から要望がなされた場合及び航空交通の安全性を確保する必要がある場合には、防衛上の配慮をしつつ、可能な範囲で対応しているところであり、今後とも、このような方針の下に対応していく考えである。
 なお、地上から発した電波により方位情報を提供する無指向性無線標識施設を利用した立川飛行場への進入の際の飛行経路等は、その設定以来、航空路誌に公示している。

一の5について

 御指摘の内規は、防衛庁の内部規則に基づき、東部方面航空隊長が、立川飛行場に進入し又は同飛行場から出発する航空機が入間飛行場への進入を妨げることなく、安全に飛行することができるように定めているものであり、御指摘の飛行高度に関する内容は、立川飛行場の運用が開始された昭和五十七年三月一日以来適用されている。

二の1の(1)について

 御指摘の自衛隊の航空機の飛行は、航空自衛隊の入間基地(以下「入間基地」という。)への出入りのための入間飛行場への進入時等に行われているものである。
 御指摘の訓練空域は、緊急対策要綱に基づいて、自衛隊の航空機が曲技飛行等を伴う飛行を行う訓練空域及び試験空域と空港の空域並びに航空路の空域及びジェットルートの空域を完全に分離するために公示されているものであるが、入間飛行場への進入時等に行われている飛行は、訓練空域及び試験空域で行う曲技飛行等を伴う飛行ではない。

二の1の(2)及び(3)について

 お尋ねの理由及び方針については、一の1の(2)及び(3)についてで述べたとおりである。

二の2の(1)について

 入間基地における年間の離発着回数については、業務の管理上、該当する統計は作成していない。
 入間基地に所在する部隊に配備された航空機の機種別の機数は、別表第四のとおりである。
 入間基地に所在する部隊の所属パイロット数は、別表第五のとおりである。
 入間基地における航空機燃料の各年度における消費量は、別表第六のとおりである。なお、平成四年度以前については、記録の保存期間が経過したため、当該記録は残っていない。
 御指摘の連続離着陸訓練及び地上からのレーダーによる着陸の誘導管制(以下「GCA」という。)の着陸誘導を受け着陸を行う訓練の回数については、個別具体的な訓練の頻度を明らかにすることにより、自衛隊の練度が明らかになるおそれがあることから、事柄の性質上、答弁することは差し控えたい。

二の2の(2)について

 御指摘のコースにおいて御指摘の訓練に用いられている航空機の機種については、自衛隊における業務の管理上、該当する記録を作成していないため、特定することは困難であるが、一般的に、自衛隊の航空機の操縦者は、当該操縦者が搭乗する航空機を用いてその技量を維持向上するための訓練を行う必要があることから、御指摘の訓練を行う機種の範囲は、二の2の(1)についてで示した航空機の機種すべてに及ぶものである。

二の3について

 御指摘の機種の航空機が、有視界飛行方式により飛行する場合には、航空法(昭和二十七年法律第二百三十一号)第八十一条に基づいて運輸省令で定められる最低安全高度(以下「最低安全高度」という。)を遵守しつつ、様々な高度で飛行しているため、当該航空機が御指摘の場所を飛行する際の高度を含め、その飛行の高度を一概に示すことは困難である。
 御指摘の機種の航空機がGCAの着陸誘導を受け、御指摘の場所を飛行する際の高度は、概ね六百メートルから七百五十メートル程度である。

二の4の(1)について

 御指摘の南進入コースについては、航空交通の安全性を確保するとの観点から、入間飛行場において地上から発した電波により方位及び距離情報を提供する戦術航法装置(以下「タカン」という。)を利用した進入を行うこととしたことに伴い設定したものである。また、御指摘の南場周コースについては、入間飛行場のGCA標準誘導経路のうちどの部分を指すか明らかではないが、同飛行場のGCA標準誘導経路は、同飛行場の自衛隊による運用が開始された昭和三十七年五月からGCAの着陸誘導を行う場合における自衛隊の航空機に対する管制上の一つの目安として用いているところである。

二の4の(2)及び(3)について

 飛行経路の事前の公表等については、従来から、関係する地方公共団体等から要望がなされた場合及び航空交通の安全性を確保する必要がある場合には、防衛上の配慮をしつつ、可能な範囲で対応しているところであり、今後とも、このような方針の下に対応していく考えである。
 なお、入間飛行場へのタカンを利用した進入の際の飛行経路等については、その設定以来、航空路誌に公示している。

二の5の(1)について

 御指摘の南場周コースが、入間飛行場のGCA標準誘導経路のうちどの部分を指すのか明らかでないが、同飛行場のGCA標準誘導経路のうち東京都に掛かる部分は、概ね清瀬市、東村山市、東久留米市及び小平市の地域の上空に当たるものである。ただし、GCA標準誘導経路は、レーダーの画面上に表示された航空機を着陸誘導する際の一つの目安であり、具体的なGCAの着陸誘導の経路は、航空交通の状況や気象状況によって様々であることから、当該地域に限られるものではなく、正確に地理上の位置として示すことは困難である。
 また、GCA標準誘導経路の高度は、当該地域全般にわたり一概に申し上げることは困難であるが、入間飛行場の東側は概ね九百メートル程度、南側は概ね六百から七百五十メートル程度である。

二の5の(2)について

自衛隊の航空機に係るGCA標準誘導経路の設定は、航空法等の法令に基づく運輸大臣の許可を要するものではない。

二の6について

 防衛庁において入間基地の担当部局の記録を調査したところ、住民からの電話照会に対し、昭和六十二年頃において飛行ルートの変更はない旨回答したことはあるが、御指摘の同基地の担当部局において昭和五十六年五月に進入コースの新設、すなわち飛行コースの変更はなかった旨の回答を住民側に対し繰り返し行ったという点については、該当する記録がなく、事実を確認できなかった。

三の1及び3について

 海上自衛隊の厚木基地(以下「厚木基地」という。)に所在する部隊に配備された固定翼哨戒機P-3Cの御指摘の地域上空における飛行実績については、自衛隊における業務の管理上、該当する統計を作成していないが、御指摘の地域上空における厚木飛行場若しくは海上自衛隊固有の飛行コース又は通常の飛行ルートを設定しているということはなく、御指摘のP-3Cの頻繁な飛行の事実は確認できない。なお、P-3Cを含め、自衛隊の航空機は、最低安全高度を遵守しているところである。

三の2について

 厚木基地に所在する部隊に配備された航空機の厚木飛行場における年間離発着回数については、業務の管理上、該当する統計を作成していない。
 厚木基地に所在する部隊に配備されたP-3Cの機数は別表第七のとおりである。

四について

 防衛庁においては、飛行場における航空機の騒音対策については、自衛隊の航空機が離着陸を行う時間帯を限定する等の措置を講ずるとともに、防衛施設周辺の生活環境の整備等に関する法律(昭和四十九年法律第百一号)等に基づき騒音防止事業を講じてきており、航空安全の確保については、航空機の操縦者等が運航に際して平素から細心の注意を払うとともに、航空保安無線施設の充実を図ってきているところである。
 今後とも、それらの施策の推進を図ってまいりたい。

別表第一 (立川駐屯地に所在する部隊の所属パイロット数)

別表第二 (立川駐屯地における航空機燃料の消費量)

別表第三 (立川駐屯地における体験搭乗者の総数)

別表第四 (入間基地に所在する部隊に配備された航空機の機種別の機数)1/2

別表第四 (入間基地に所在する部隊に配備された航空機の機種別の機数)2/2

別表第五 (入間基地に所在する部隊の所属パイロット数)

別表第六 (入間基地における航空機燃料の消費量)

別表第七 (厚木基地に所在する部隊に配備されたP-3Cの機数)