質問主意書

第142回国会(常会)

答弁書


答弁書第五号

内閣参質一四二第五号

  平成十年四月二十四日

内閣総理大臣 橋本 龍太郎   


       参議院議長 斎藤 十朗 殿

参議院議員上田耕一郎君提出変額保険による被害救済に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。


   参議院議員上田耕一郎君提出変額保険による被害救済に関する質問に対する答弁書

一の1について

 変額保険は、運用実績が保険金額等に反映されるという性格を持つものであるが、あくまでも保険数理に基づく生命保険であり、被保険者が死亡した場合には最低保証としての基本保険金額が支払われるといった点において、投資信託とは異なる性格を有するものであると考えている。なお、他の保険契約同様、保険料の払込資金の手当てや払込方法は契約者の選択によるものであり、変額保険そのものに組み込まれているものではない。

一の2について

 アメリカ合衆国においては、投資リスクが保険契約者に帰属する等の理由から、変額保険が連邦証券関係諸法の規制の対象となる証券とされたものと承知している。

一の3について

 変額保険の導入に際しては、証券投資信託における資産運用規制、ディスクロージャー等の観点も踏まえて種々の検討が行われ、変額保険の基本的な考え方を示した昭和六十年五月三十日の保険審議会答申において、資産運用規制、ディスクロージャー、募集体制、当面の変額保険の実施等の各項目ごとに検討の結果が取りまとめられている。

一の4について

 民間金融機関の貸出商品は、銀行法(昭和五十六年法律第五十九号)等の規定による許認可又は届出の対象とはなっていないため、大蔵省としては、変額保険の加入資金に係る融資について、これを認めるといった立場にはない。

一の5について

 一時払保険料相当額を銀行から借り入れて変額保険に加入することがいわゆる相続税対策となるかどうかについては、相続発生時までの変額保険の運用実績及び銀行ローンの金利がともにその時々の経済環境等によって変動し、死亡保険金又は解約返戻金が銀行への要返済額を上回るとは限らないことから、一概にはいえないものであると考える。

二の1について

 変額保険については、金融機関が保険料の融資を保険契約者に対して行う、いわゆる保険料ローンが利用された例があることは承知しているが、銀行と保険会社の間で提携が行われていたとは承知していない。

二の2について

 大蔵省としては、変額保険を含む個別問題について苦情の申出があった等の場合は、必要に応じて保険会社、銀行等から事実関係等についてヒアリングを行い、問題があると認めた場合には適切に対応するよう指導してきているところである。
 いずれにしても、変額保険について、いわゆる保険料ローンが利用された例があることは承知しているが、銀行と保険会社の間で提携が行われていたとは承知していない。

三の1及び2について

 一般に、銀行の貸出商品について資金使途や内容等を報告させるといったことは行っておらず、御質問の点については不明である。

三の3について

 例えば全国銀行における平成九年九月末の延滞債権は約十二兆六千四百億円となっているが、当該債権について資金使途等により区分して報告させるといったことは行っておらず、御質問の点については不明である。

三の4について

 大蔵省においては、財務局、財務事務所を含め同省に寄せられる金融機関等に関する苦情について実態把握に努めているところであるが、苦情件数の集計を融資及び保険商品の種類別に行っていないことから、御質問の点については不明である。

三の5について

 大蔵省としては、金融機関等に関する苦情の処理については、金融機関等が自ら適切な対応を行うべきであると考えており、保険会社、銀行が受け付けた苦情の件数、内容等に係る報告を受けておらず、御質問の点については不明である。
 社団法人生命保険協会が公表している「相談リポート」によれば、相談、苦情の受付件数は別表のとおりであるが、変額保険に関する相談、苦情の内容は、バブル経済崩壊前は加入相談が中心であり、バブル経済崩壊後は加入時にリスクの説明がなかったことや解約すべきかどうかなどに関するものが中心であると聞いている。
 なお、全国銀行協会連合会においても、「銀行よろず相談所取扱状況」により、相談、苦情の受付件数を公表しているが、いわゆる保険料ローンに係る件数については掲載していない。

四の1について

 変額保険について、いわゆる保険料ローンが利用された例があることは承知しているが、実際の融資が御指摘の過剰融資であるかどうかについて、一概に申し上げることは困難である。

四の2について

 一般に、金融機関が融資取引を約定するに当たり、契約者(顧客)が契約書を金融機関に差し入れ、契約者(顧客)には契約書を交付しないことがあるが、そのこと自体が法令等に抵触するものではないと承知している。

四の3について

 一般に、金融機関は融資を行うに当たり十分に審査する必要があると考えるが、実際の融資が民事ないし刑事上の責任を問われるようなものであるかどうかについては、個々の具体的な事例に応じ、最終的には司法の場で判断されるべきものと考える。
 いずれにしても、金融機関においては、その業務の公共性にかんがみ、公共的・社会的役割を自覚した業務運営を行っていくことが求められており、いやしくも社会的批判を受けることがないよう努める必要があると考えている。

四の4について

 契約の具体的内容をみて個別に判断すべき問題ではあるが、一般的にいえば、利息分の貸付けを実施してこれを預金させること自体は、利息の支払に充当する趣旨で貸付けが行われていることからみて、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(昭和二十二年法律第五十四号。以下「独占禁止法」という。)に規定する不公正な取引方法に該当する歩積・両建預金に当たるものではなく、また、平成元年六月十六日付け蔵銀第千三百七十八号通達「歩積・両建預金の取扱いについて」に違反するものでもないと考える。

四の5について

 利息制限法(昭和二十九年法律第百号)と独占禁止法は、その規制の趣旨及び目的を異にするものであり、仮に、いわゆる保険料ローンの利息返済のためのカードローンに係る利息が複利で運用されることにより貸付け金利が利息制限法の制限利率を超える事実があるとしても、そのことのみをもって独占禁止法に規定する不公正な取引方法に該当するとはいえないと考える。

別表