第142回国会(常会)
答弁書第二号
内閣参質一四二第二号 平成十年三月三十一日 内閣総理大臣 橋本 龍太郎
参議院議員竹村泰子君提出徳島県吉野川第十堰改築計画等に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。 参議院議員竹村泰子君提出徳島県吉野川第十堰改築計画等に関する質問に対する答弁書 一の1について 吉野川で明治二十一年七月に生起した洪水において、御指摘の「二キロメートル上流の地点付近」は第十堰による水位上昇が発生した区間に含まれていたものと推定されるが、一般に洪水時における河川の水位の上昇に従って堤防が決壊する危険性は高くなることから、御指摘の「答弁書第三号」では、第十堰による水位上昇も吉野川の堤防の決壊の一つの原因として考えられるとしたものである。
一の2について 明治二十一年七月当時の第十堰付近における吉野川の河道の形状が現在のものと異なっていたことは事実と考えられるが、建設省においては、現在の吉野川における河道の状況等を基に、第十堰を改築する必要があると判断したものである。 一の3について 昭和二年以降、第十堰が洪水の挙動に影響を及ぼすと考えられる吉野川の区間で御指摘のように「川が氾濫した例」はないが、当該区間で堤防の決壊に至る可能性を有するような堤防からの漏水、堤防付近の大規模な河床の洗掘等の状況は発生している。 二の1について 御指摘の「区間」において吉野川の洪水時に同川の低水路及び高水敷を流下する流量をそれぞれ個別に求めることを目的とした観測はこれまで行われていないことから、実測に基づくこれらの概略値を示すことはできないが、同川の河口からの距離が十五キロメートルから二十四キロメートルまでの区間の一キロメートルごとの各地点について、昭和四十九年九月に生起した洪水(以下「昭和四十九年洪水」という。)において流量が最大となった場合の低水路及び高水敷を流下した流量について計算上得られている値をそれぞれ目安として示すと、別表第一のとおりである。
二の2について 平成七年十一月に建設省四国地方建設局が作成した「第十堰改築事業に関する技術報告書」(以下「技術報告書」という。)においては、「計画高水位に対応する粗度係数」である〇・〇三八を算出するための根拠となる低水路の粗度係数の値として、〇・〇三五を用いているところである。この〇・〇三五の値は、御指摘の「実績の洪水から求めた粗度係数」の数値をそのまま用いたものではなく、当該数値、過去に生起した洪水の痕跡から観測された水位(以下「痕跡水位」という。)の値等から別途算出した高水敷の粗度係数の値等を「改訂新版建設省河川砂防技術基準(案)同解説調査編」(建設省河川局監修)の百十ページ及び百十一ページに記載されている式(6-5)から式(6-9)まで(以下「平均流速関係式」という。)の数式に代入することにより吉野川の複数の流下断面について低水路の粗度係数を算出し、その結果を基に決定されたものである。 二の3について 技術報告書における「計画高水位に対応する粗度係数」の値を求める根拠となった主要実績洪水(技術報告書の五十八ページに記載されている吉野川において過去に生起した主要な四洪水をいう。以下同じ。)ごとの粗度係数は、吉野川の洪水による被害を未然に防止することを目的として治水計画を策定する観点から、当該粗度係数を用いて算出される第十堰の上流の区間の複数の地点の水位の値がそれぞれ同じ地点における痕跡水位の値をおおむね下回ることとならないような安全側の値となるように決定されており、御指摘の「粗度係数が含みうる誤差や不確実性」はこのような形で考慮されているものである。 二の4について 御指摘の「粗度係数の観測」が行われた河川の区間における河道状況と、吉野川の河口からの距離が零キロメートルから二十四キロメートルまでの区間における河道状況との間で、特に考慮すべき差異は存しないと考えられることから、吉野川の当該区間における高水敷の粗度係数を算出するに当たって御指摘の「他の河川の粗度係数の観測」から得られた結果を用いることは不合理ではないと考えたものである。 二の5について 御指摘の「数式」としては、平均流速関係式を用いたものである。
三の1について 吉野川の河口からの距離が十四キロメートルから二十四キロメートルまでの区間の二百メートルごとの各地点について、建設省が行った主要実績洪水に関する水位の計算(以下「建設省の実績再現計算」という。)によって得られた値からその地点の痕跡水位の値を減じた値を主要実績洪水ごとに示すと、それぞれ別表第三から別表第六までのとおりである。
三の2について 建設省においては、技術報告書において行われている吉野川の洪水時の水位の計算(以下「建設省の水位計算」という。)のうち同川に計画高水流量が生起したとした場合の水位の計算の結果のみでなく、第十堰の老朽化の状況、第十堰の下流側における吉野川の河床の洗掘の状況、建設省四国地方建設局徳島工事事務所(以下「徳島工事事務所」という。)が平成八年に行った模型実験(以下「模型実験」という。)の結果等をも勘案した結果として、第十堰を改築する必要があると考えているものである。 三の3について 建設省の実績再現計算は、第十堰に関し一定の条件を設定した上で水理学上の基礎的な理論式によって一義的に算出される吉野川の河口から十四・二キロメートルの地点(以下「十四・二キロメートル地点」という。)における水位の値を所与として、二の3についてで述べた手法によって同川の河口からの距離が十キロメートルから二十四キロメートルまでの区間を代表する一個の粗度係数の値を決定したものである。御指摘の「痕跡水位と再現計算水位との差」は、こうした計算の性質上結果的に生じ得るものである。
三の4について 数値計算の手法を用いる場合において、御指摘のように「計算結果を実際の自然現象にできる限り近づけること」は基本的には望ましいことであると考えているが、計画高水流量の生起といった実際に観測された自然現象の範囲を超える仮想の現象を取り扱うに当たっては、その適用範囲に関する十分な検証がされた手法によるべきものと考えている。 三の5及び6の(1)について 吉野川シンポジウム実行委員会が平成九年五月に作成した「水位計算の結果について」(以下「水位計算資料」という。)によれば、水位計算資料において行われている吉野川の洪水時の水位の計算(以下「市民団体の水位計算」という。)のうち主要実績洪水における水位を求めることを基本的な目的としたと考えられる計算(以下「市民団体の実績再現計算」という。)では、その性質上、当該水位が第十堰の形状に関する計算上の前提条件に応じて算出されるものとは言えないと考えられるが、一般に、第十堰のような堰の上流における水位の値は理論上堰の形状に応じて算出されることは明らかであるから、第十堰の存在を前提とした場合には、市民団体の実績再現計算は適切なものであるとは考えられない。
三の6の(2)について 「本間の式」に関する本間仁東京大学名誉教授の論文によれば、同式は、基本的には、堰の上流側の地点における水位の値から堰頂部の高さの値を減じた値(以下「堰上流側越流水深の値」という。)に対し当該地点における水理学上の速度水頭の値を無視できる状態において流水が堰を越流する流量の値を算出することを目的とする数式であり、堰上流側越流水深の値を堰の高さの値で除した値が〇・五程度以下である場合には同式を適用しても支障はないが、その値が大きくなるに従って同式における流量係数の値の誤差が大きくなるものとされているところである。
三の6の(3)について 御指摘の「市民団体の指摘」については承知しているが、平成九年八月十四日に吉野川シンポジウム実行委員会が作成した「建設省の水位計算に対する見解について」によれば、御指摘の「七百十五メートル」の数値は、十四・二キロメートル地点における水理学上のエネルギー水頭(以下「エネルギー水頭」という。)の値の理論上の最小値が、市民団体の実績再現計算において昭和四十九年洪水を対象に得られている同地点におけるエネルギー水頭の値とおおむね一致するような値となるように設定された第十堰の幅の値であると考えられる。しかしながら、三の5及び6の(1)についてで述べたように、第十堰の存在を前提とした場合には市民団体の実績再現計算において昭和四十九年洪水を対象に求められた十四・二キロメートル地点におけるエネルギー水頭の値は適切なものとは考えられないことから、当該エネルギー水頭の値を根拠として第十堰の幅の値を改めて設定し、吉野川に計画高水流量が生起したとした場合の水位の計算を行ったとしても、その計算から得られた結果が十分な信頼性を有するとは言えないと考えられる。 三の6の(4)及び(5)について エネルギー水頭の理論上の最小値は計算上設定する流下断面の条件に応じて異なり得るものであるが、建設省においては、水位計算資料における計算結果から算出した十四・二キロメートル地点におけるエネルギー水頭の値が、水位計算資料に明記されている第十堰に関する計算上の条件、水理学上の基礎的な理論式等を基に算出したエネルギー水頭の理論上の最小値を下回るものと考えられるとの結果を得ているものである。 三の6の(6)について 御指摘の「計算モデル」を用いた計算の結果が御指摘のように「実際の自然現象がなるべく忠実に再現」されたものであることは基本的には望ましいことであると考えているが、仮にある計算のモデルを用いた計算の結果が実際に観測された事象をおおむね再現しているものであっても、そのモデルの適用範囲に関する十分な検証がされているとは言えない場合、そのモデルを構成している数式の適用範囲に関する理論上の背景が適切に考慮されていない場合、そのモデルを用いて得られた値が基礎的な理論式から得られる値との不整合を有する場合等においては、そのモデルは、実際に観測された自然現象の事象の範囲を超える仮想の現象を取り扱うための十分な信頼性を有するものとは言えないと考えており、吉野川に計画高水流量が生起したものとした場合における市民団体の水位計算において用いられている計算のモデルも、こうした観点から十分な信頼性を有するものとは言えないと考えている。 三の7の(1)について 流水の流下方向に対して斜めに設置されている堰を越流する流水の幅の値は、当該堰が当該流下方向に対して直角に存在するものと仮定した場合の仮想の堰を越流する流水の幅の値以上のものとなると考えられるが、河川の幅に対する堰の長さの割合、河川における流水の状況等によっては、必ずしも御指摘のように河川の幅より長く堰の長さに近づくとは言えないものと考えている。 三の7の(2)について 流水の二次元的な挙動を的確に反映することが可能な汎用性を有する一次元不等流計算の手法は確立されていないと考えられることから、建設省の水位計算においては、一般に用いられている一次元不等流計算の手法と同様に、吉野川の流水の幅を、一次元不等流計算でいう流水の流下方向に対して直角の方向に測った幅として取り扱っているものである。 三の7の(3)及び(4)について 水位計算資料等によれば、市民団体の水位計算においては、上流側及び下流側の二つの堰から構成される第十堰の下流側の堰のみを考慮し、その堰が基本的に十四・二キロメートル地点において流下方向に対して直角に存在するものと仮定して、流水の幅、堰の長さ及び堰頂部の高さの値をそれぞれ六百五十メートル、五百五十メートル及び阿波工事基準面(東京湾平均海面マイナス〇・八三三三メートル。以下同じ。)を基準とした高さ五・一メートルとしていると考えられる。
三の7の(5)について 水位計算資料等によれば、市民団体の水位計算及び建設省の水位計算においては、共に実際に測量された結果を基に第十堰に関する計算上の条件が設定されていると考えられるが、実測値に即して計算を行うという観点からは、三の7の(3)及び(4)についてで述べたように、上流側の堰が考慮されていない前者における第十堰に関する計算上の条件の設定と比較して、上流側の堰も考慮されている後者におけるものの方が適切であると考えている。 四の1について 御指摘の「計画降雨の数を限定した」こととは、多数の実績降雨の中から代表的なものとして十の実績降雨を選定したことを指すものである。 四の2について 降雨量のデータの数をより多くすることは、統計学上の観点からは計画降雨量に関する信頼度をより高めるものであると考えているが、建設省においては、長期間にわたり継続的に実施していく治水事業の性格上、降雨の状況等の治水計画に係る状況に大きな変化がないにもかかわらず計画降雨量等の値から定められる基本高水等について頻繁に小規模な見直しを行うことは必ずしも適切であるとは限らないと考えている。
四の3について 御指摘の「河川整備基本方針」の作成の時期、その作成に当たって用いる計算手法等については、現時点では未定である。 五の1について 御指摘の「垂直航空写真の実体視」による手法(以下「実体視手法」という。)は、地上の複数の測定点について、空中の二つの異なる場所から撮影された写真を両眼で見た場合に生じる視差等を利用して、当該測定点間の高さの値の差(以下「比高」という。)を求めるもので、測量の手法として一般的なものである。御指摘の「昭和四十九年洪水の水位」の値は、阿波工事基準面を基準とした高さの値が既知である地点における当該高さの値及び実体視手法を用いて得られた当該地点と流水が堤防に接している地点との比高の値から得られたものである。 五の2について 実体視手法を用いて得られた比高の値が航空写真を撮影する高度等に応じた誤差を含むとされているのに対し、痕跡水位の値が洪水時の水位の最大値の真値に対して有する誤差はその程度を理論上明らかにすることが困難な性格のものであることから、水位の観測の精度に関し、実体視手法と痕跡水位による手法とを一概に比較することは困難である。
五の3及び4について 昭和四十九年洪水において実体視手法を用いて得られた吉野川の河口から十五・二キロメートル及び十五・四キロメートルの地点における水位の値はあくまで測定の結果として得られたものであり、昭和四十九年洪水においてそれらの値に対応する水位の真値が得られていない以上、御指摘の「約一・二メートルの水位差」及び「他の水位に比べてかなり高くなっている」ことについて分析することは困難である。
五の5について 第十堰のように流下方向に対して斜めに設置されている構造物の存在が洪水時の水位に及ぼす影響を的確に予測するためには、水位の計算手法として一般に用いられている一次元不等流計算の手法では限界があることから、必要に応じ模型を用いた水理実験等を行った上で総合的な判断を行うことが適切であると考えている。 六の1について 国営吉野川下流域土地改良事業の実施に伴う水利使用については、同事業を所管する農林水産省と同事業に係る水利使用の許可を所管する建設省との間で現在予備的な協議が行われており、現時点では、吉野川の柿原取水口を改築すること及び同川に第十取水口を新設することにより、現在行われている旧吉野川及び今切川からの取水の大部分を吉野川からの取水に切り替えることが協議されているところである。
六の2について 御指摘の大正十二年十二月二十六日付けの新聞の記事については承知しているが、同年初夏に生じたとされる第十堰の損壊の原因に人為的なものが含まれるか否かについては、現時点で確認することは困難である。
六の3について 昭和六十三年から平成九年までの十年間に、旧吉野川及び今切川から取水された水道用水の量の合計は約一億九千万立方メートル、これらの河川から取水された工業用水の量の合計は約五億七千万立方メートルである。
七の1について 平成五年六月に徳島工事事務所が作成し第二回第十堰環境調査委員会で配布した資料には、ハクセンシオマネキ及びルイスハンミョウについては記載されていない。
七の2について 平成八年一月に徳島工事事務所が作成し第四回第十堰環境調査委員会で配布した資料においては、イボウミニナは「吉野川下流域の自然環境調査~参考資料及び基礎データ~」中に記載されているが、シマヘナタリは記載されていない。
七の3について 徳島工事事務所は、吉野川の河口部から柿原堰までの区間において生息する生物等に関する現地調査を平成二年度から実施するとともに、学識経験者等から構成される第十堰環境調査委員会を平成四年から設置して、当該現地調査の結果の検討、吉野川第十堰建設事業によってもたらされる周辺環境への影響に関する調査等を実施してきたところである。 七の4及び6について 現在の第十堰に代わる可動堰をその下流側に設置した場合の影響については、吉野川において仔アユが降下するとされるおおむねの期間(以下「降下期間」という。)における近年の同川の流水の状況からみて、降下期間においては第十堰を改築するか否かにかかわらず基本的に同川の流水の大部分は旧吉野川に流下し産卵場から降下してきた仔アユの大部分は旧吉野川を降下するものと考えられること、現状でも流水が第十堰の魚道を越流しない状況が頻繁に見られ旧吉野川が吉野川と分流する地点から下流側の貯水池(以下「下流側貯水池」という。)に流入する仔アユの多くは第十堰から降下することが困難であると考えられること等から、下流側貯水池の容量の増加に伴って流水が下流側貯水池を通過するために要する平均的な期間が長くなっても、産卵場から海へ降下する仔アユの量が現状と比較して大きく減少することにはならないと考えている。
七の5について 吉野川の河口から十五・六キロメートルより下流の区間における御指摘の「新第十堰」により生じる貯水池の容量を約五百四十万立方メートル、当該区間における流量を毎秒約二立方メートルとし、流水が流下断面の全体にわたって均等に流下するものと仮定した場合には、流水が下流側貯水池を通過するために要する期間は三十日程度となるものと考えられる。 七の7について 七の4及び6についてで述べた内容、数値計算の手法を用いた水質に関する予測の結果等から、第十堰を新たに可動堰に改築することに伴う御指摘の「滞水時間」の増加が自然環境に与える影響は軽微なものであると考えているものである。 八の1及び2について 御指摘の「意見書」の内容については承知しているが、吉野川において昭和五十一年九月に生起した洪水によって生じた通常時の水面から約二十メートルの深さに及ぶ河床の洗掘(以下「昭和五十一年の河床洗掘」という。)については、流下方向に対して斜めに設置されている堰付近における洪水時の流水及び土砂の挙動に関する特性、昭和五十一年の河床洗掘が生じた箇所も含む同川における河床の状況等から判断すると、御指摘の「川の蛇行」、「砂利採取による河床の低下」及び「ブロック工事」のみを原因として生じたものと推測することは困難であり、第十堰が流下方向に対して斜めに設置されていることがその大きな原因となっているものと考えられる。 八の3について 昭和五十一年十月二十五日に徳島工事事務所副所長から国府町佐野塚地区代表に提出された「砂利採取について」においては、「吉野川第十堰、名田橋間における低水路内の砂利採取は、昭和五十二年四月以降は許可しないことで対処する。尚河道に堆積し採取可能となったときは地区代表に協議します。」と記されているが、これが御指摘のように「深掘れの原因が異常な砂利採取にあることを認め」たものであるか否かについては、現時点で確認することができない。 八の4について 徳島工事事務所では、昭和五十一年から昭和五十二年にかけて御指摘の「深掘れ対策工事」を行っており、当該工事を行った箇所において当該工事以降現在までに河床の洗掘が進行していることは確認されているが、現時点での河床の深さは、昭和五十一年の河床洗掘と同程度にまでは至っていないと考えている。 九の1の(1)及び(3)について 河床の洗掘への対策として河床の洗掘が生じた場所に根固めブロック等を投入する対策は、これまでに施工された多くの事例から判断して、河床の洗掘の進行を緩和する効果を期待できるものの、その進行を完全に抑止する効果までを期待できるとは必ずしも言えないものである。昭和五十一年の河床洗掘が発生した箇所においても、昭和五十八年度に根固めブロックを追加的に投入したにもかかわらず当該箇所でその後再び河床の洗掘が進行していることが確認されていること等から、第十堰が流下方向に対して斜めに設置されている状況においては、当該箇所のように一回の洪水で大規模な河床の洗掘が生じたような箇所では、根固めブロック等の投入のみによっては堤防の決壊に至るような河床の洗掘が生じる可能性を除去することは困難であると考えている。
九の1の(2)について 御指摘の「洪水」は、昭和五十一年九月に生起した洪水であり、この洪水によって発生した大規模な河床の洗掘への対策として根固めブロック等の投入を行ったものであって、それ以前には、当該河床の洗掘が発生した箇所では低水護岸の基礎部を保護する目的で根固めブロック等の投入が行われていた。 九の1の(4)について 御指摘の「「ケーソン及びコンクリート擁壁」以外の補強工法」については、直接基礎を用いる工法、杭基礎を用いる工法等に関して予備的な検討を行っているが、基礎地盤の状況、施工の困難さ等の観点から定性的に検討した結果、ケーソン基礎及びコンクリート擁壁を用いた工法が有利であると判断したものである。 九の2について 第十樋門については、その建設された時期等を勘案するといずれは改築が必要となるものと考えているが、現時点においては、その老朽化の程度からみて改築を行う具体的な時期等を定めるには至っていない。
九の3について 御指摘の「現位置固定堰改築案」において施工する必要があると考えた護床工については、「建設省河川砂防技術基準(案)設計編[I]」(建設省河川局監修)第一章第五節の「5・2・2水叩き」の記述等を参考に、概略的な検討として過去の事例を勘案して堰に直角な方向の上流側及び下流側の幅の合計の値を約二百十メートルとし、当該合計の値と堰の長さ等から御指摘の「約十六万六千平方メートル」を算出したものである。 九の4について 御指摘の「遮水工」は、堰の基礎部における土砂の流動等を防止すること等を目的として設ける必要があると考えたものであり、堤防の拡幅等及び内水対策とは無関係なものである。
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