質問主意書

第142回国会(常会)

質問主意書


質問第二七号

プルトニウム混合燃料加工に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成十年六月十七日

清水 澄子   


       参議院議長 斎藤 十朗 殿


   プルトニウム混合燃料加工に関する質問主意書

 最近のインド、パキスタン両国の核実験により、核物質の保障措置、防護措置はより重要なものとなっている。特に、プルトニウムの利用計画に関しては、平和利用とはいえ具体的な需給計画、手続き、進捗状況等を内外に公表し、我が国は過剰なプルトニウム在庫を持たないことを示さなければならない。
 我が国の原子力発電所から搬出し、海外再処理委託された使用済燃料から回収されたプルトニウムは、プルトニウム混合燃料(以下、「MOX燃料」という。)に加工されて日本に返還されることになっている。しかし、MOX燃料利用計画における需給計画、輸送計画、手続き等に疑義がある。
 以下、MOX燃料加工に関する質問をする。

一 プルトニウム需給計画について

 一九九七年までに再処理により回収された核分裂性プルトニウムは、英国三、一〇一キログラム、仏国一一、七三五キログラムとのことである。

1 一九九六年までの英国、仏国の核分裂性プルトニウムの在庫量及び一九九七年までの英国、仏国の核分裂性プルトニウムの在庫量は、それぞれ何キログラムか。
2 一九九八年から二〇〇〇年までの核分裂性プルトニウムの使用量及び在庫量は、英国、仏国それぞれ何キログラムの見通しか、各年ごとに明らかにされたい。
3 一九九五年八月の「プルトニウム需給見通し」では、海外再処理により回収されるプルトニウムは二〇一〇年までに約三〇トンである。軽水炉での二〇一〇年までの使用量は二五から三〇トンとなっており、二〇〇〇年からは年間二・六トンも使用することになっている。

(1) 現在、すでに十数トンに及ぶ核分裂性プルトニウムの在庫量は、ランニングストック量としてはあまりにも多い。年間二・六トン使用した場合、その適正なランニングストック量は何トンか。
(2) この先数年は供給量が使用量を上回る見通しであるから、さらに在庫量は増えるはずである。このままプルトニウムの過剰在庫を持ち続けるつもりか。何年に適正なランニングストック量となる見通しか。

二 東京電力株式会社(以下、「東電」という。)のプルトニウムの移転について

1 MOX燃料加工委託契約等に係る事業者からの申請、届出はないとのことである。東電からプルトニウムの移転に関しての許可・承認の申請、届出等はあったか。あるとすれば、その名称と申請、届出及び許認可の年月日を明らかにされたい。
2 今回の欧州共同体(以下、「EC」という。)との交換書簡では、プルトニウムが移転されたことについての連絡は、EC委員会及び関係国政府からはないとのことである。
 日仏原子力協定の「合意された議事録」によれば、仏国から核物質の施設ごとの在庫量を年単位で日本政府及びIAEAに通報されることになっている。

(1) ベルギー政府から日本政府に対して、ベルギー国内の核物質の施設ごとの在庫量を年単位で通報されることになっているのか。通報されるとすれば、その根拠は何か。また、通報されないとすれば、ベルギー国内の施設ごとの核物質の在庫量をどのようにして把握するのか。
(2) 日本はIAEAとの協定により、核物質の移動量、在庫量等をIAEAに報告する義務を負っているが、ベルギー国内における我が国事業者所有の核物質の施設ごとの移動量、在庫量をどのようにIAEAに報告するのか。

3 仏国からベルギーへのプルトニウム輸送に当たり、米国の承認は必要ないとのことである。必要としない根拠は何か。

4 日仏原子力協定に基づく、仏国からのプルトニウム移転同意の依頼内容について

(1) 保障措置はEC、核物質防護措置はベルギーがそれぞれ保証する、との内容はあったか。
(2) 日仏原子力協定にいう「認められた者」として、ベルゴ・ニュークリア社を加える同意依頼はあったか。ないとすれば、ベルゴ・ニュークリア社は、日仏原子力協定にいう「認められた者」ではないのか。
(3) プルトニウムを一九九七年九月以前に二二一キログラム、一九九八年七月以前に二六二キログラムを移転することの依頼内容はあったか。ないとすれば、移転プルトニウムの量と移転時期については、どのような依頼内容であったのか。
(4) 他に、具体的にどのような同意依頼内容があったのか。
(5) 同意したプルトニウム移転量は何キログラムか。それは東電がMOX燃料加工契約をした二〇〇体相当分か。
(6) 同意した移転時期は、それぞれいつか。

三 EC及びベルギーとの交換書簡の内容について

1 交換書簡にあるプルトニウム二二一キログラムとウラン一五四四キログラムを一九九七年九月以前に、プルトニウム二六二キログラムとウラン一五四四キログラムを一九九八年七月以前に移転するとの約束は、誰の提案又は何を根拠として、どのようにして決められたものなのか。
2 交換書簡にある「MOX加工された燃料は、仏国を経由して日本に返還される。」との記述については、平成十年二月十七日付の答弁書によれば「かかる記述は、関係する事業者間の当該MOX燃料加工に係る委託契約の内容に沿ったものである。」としているが、これは日米原子力協定の附属書に規制されたものではないのか。
3 ECとの交換書簡によれば、EC委員会が一ケ月前に文書により日本政府に通告すれば、加工されたMOX燃料を仏国に移転することができるとある。

(1) この約束は、日本政府の同意を必要としない非常に一方的なものであり、日本側の受け入れ状況を考慮していない。このような約束をした理由を明らかにされたい。
(2) 東電は地元の同意を得なければ、MOX燃料の輸送は行わないとしている。また、三県知事との約束で、政府は地元の同意を条件としている。しかし、これでは地元の同意なしに、MOX燃料返還輸送が開始される可能性もあるということではないのか。
(3) MOX燃料の安全審査、安全確認もせずに、返還輸送が開始される可能性もあるということではないのか。

四 MOX燃料製造について

1 東電のベルギーにおけるMOX燃料製造が開始されていることを承知しているか。承認しているとすれば、いつ、どのようにして承知したのか。
2 東電に対して、ベルギーにおけるMOX燃料製造の許認可及び承認等を、いつ、どのようにして与えたのか。
3 本来、事業者の海外におけるMOX燃料加工には、日本政府の事業者に対する許認可及び承認等は必要ないのか。ないとすれば、事業者は海外においてプルトニウムを、自由に何にでも加工できるということか。

五 MOX燃料輸送計画について

1 MOX燃料輸送容器について

 東電及び関西電力株式会社(以下、「関電」という。)のMOX燃料輸送容器の、それぞれの輸送物設計承認、容器承認の申請日・承認日、設計承認番号、承認容器の個数、容器所有者の氏名を示されたい。

2 MOX燃料輸送船について

(1) 輸送船はBNFL(イギリス原子燃料公社)所有のものか、それとも日本船籍のものか。
(2) 東電のMOX燃料と関電のMOX燃料を別々の船で輸送するのか。
(3) 輸送船には武装護衛者が乗船するのか。乗船するとすれば、一民間企業が武装護衛者を雇えるのか。また、武装護衛船は付くのか。付くとすれば、一民間企業が武装護衛船を雇えるのか。
 武装護衛者にしても、武装護衛船にしても民間企業が雇えないとすれば、海上保安庁又は自衛隊の派遣ということになる。一民間企業の企業活動のために、毎回派遣されることが法律上許されるのか。

3 以上の輸送に係る計画は、すでに具体的に決定されているのか。未だに検討中であるとすれば、東電のMOX燃料製造は昨年五月に開始されており、いつ返還輸送が開始されてもおかしくない。一ケ月で、すべて決定できるのか。

  右質問する。