質問主意書

第142回国会(常会)

質問主意書


質問第二三号

視覚障害者等の社会参加の推進等に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成十年六月十二日

荒木 清寛   


       参議院議長 斎藤 十朗 殿


   視覚障害者等の社会参加の推進等に関する質問主意書

 障害者施策については、現在「障害者プラン-ノーマライゼーション七か年戦略」等に基づいた施策の推進が図られているが、障害者の社会参加や「生活の質(QOL)」の向上のためにはなお多くの課題がある。
 こうした観点から、障害者の社会参加の推進等の諸課題について、特に情報の入手や伝達に困難を伴いやすい視覚に障害を有する人々の問題を中心に、以下質問する。

一、中途失明者等の実態及び施策の推進について

1 視覚に障害を有する人々は、高齢化に伴い増加の傾向にあるが、中でも、糖尿病等が原因で中途失明者となる人の増大が懸念される。成人期以降に視覚に障害を有するに至った中途失明者の人数、その障害の原因、視覚障害と認定された年齢及び実施されている福祉サービスについて明らかにされたい。もしこれらについて詳細に把握していない場合は、速やかに調査を行うべきではないか。
2 成人期以降に視力を失った人々については、日常生活動作の習得の援助等、幼少期から視覚に障害を有する人々とは異なる施策も求められるが、中途失明者の自立・社会参加のために、政府はどのような施策を講じているのか。また、障害者プランにおいてどのような施策を講じようとしているか。
3 厚生省の平成三年の「身体障害者実態調査」(以下「実態調査」という。)によれば、在宅の視覚障害者のうち五七・五%が重度の障害者であり、他の障害者と比べても重度化が際立っている。この原因をどのようにとらえ、どのような対策を講じているのか。
4 糖尿病性網膜症により視覚障害と認定される人は年間三千人と推計され、視覚障害の原因の第一位とされている。中途失明者の増大を防ぐためにも、糖尿病について、政府全体として対がん十か年戦略及びがん克服新十か年戦略に匹敵するような目標・計画を策定し、予防・早期発見・早期治療のための総合的な取り組みを図るべきではないか。
5 「実態調査」における「障害の原因別」の調査では、疾病構造の変化を反映し、感染症及び中毒性疾患を除く「その他の疾患」が全体の四三・一 %、視覚障害では四八・四%、内部障害では六〇・九%に達している。障害の原因について実態を把握し、施策を推進していくためには、疾病の原因に係る項目を見直し、例えば心疾患、糖尿病、悪性新生物等「その他の疾患」についてさらにきめ細かな分類を行うべきではないか。

二、ガイドヘルパーの拡充について

1 重度の視覚障害を有する人々や脳性まひ等全身的な障害を有する人々の外出を介助するガイドヘルパーのそれぞれの数、市町村における事業の実施状況及び利用実態を示されたい。また、障害者プランの最終年度である平成十四年度末におけるガイドヘルパーの目標数を示されたい。仮に目標数が無い場合は、その理由を示されたい。
2 ガイドヘルパーの派遣は、現在、身体障害者ホームヘルプサービス事業運営要綱において「公的機関、医療機関に赴く等社会生活上外出が必要不可欠なとき及び社会参加促進の観点から実施主体が特に認める外出」について認められているが、障害を有する人々の社会参加を促進する観点からは、上記外出に限定する必要はないのではないか。また、「身体障害者ホームヘルプサービス事業の運営について(昭和六十三年六月九日 社更第一四二号)」の3でいう「社会通念上本制度を適用することが適当ではない外出」とは具体的にどのような外出を指すのか。
3 視覚等に障害を有する人々がどこでもガイドヘルパーを利用できるためには、ガイドヘルパーの全国ネットワーク化が重要である。全国ガイドヘルパーネットワーク事業の実施状況を示されたい。また、「障害者の明るいくらし」促進事業実施要綱では、「ガイドヘルパーに支払う手当、交通費等の経費は、利用者が負担する」とされているが、その理由は何か。利用者の負担軽減のための助成を行うべきではないか。

三、盲導犬の育成等について

1 盲導犬は、視覚に障害を有する人の目として、重要な役割を果たしており、盲導犬の育成・助成に国はもっと積極的に関与すべきである。盲導犬の現在の頭数及び視覚に障害を有する人のうち実際に盲導犬を利用している人の割合を示されたい。また、盲導犬の計画的な育成が望まれるが、過去五年間の盲導犬の育成状況及び中・長期的育成計画を示されたい。
2 視覚に障害を有する人で盲導犬の利用を希望している人数を把握しているか。把握しているならばその人数を示されたい。行政側の盲導犬の需要把握は不十分であり、今後積極的な需要把握を行う必要があるのではないか。また、盲導犬の普及が必ずしも進まない理由を政府はどのように考え、どのような対策を講じる考えか。
3 盲導犬の貸与に当たっては、これを飼育できるだけの住宅スペースが求められるほか、維持費等の負担が少なくないために、盲導犬を利用したくても利用できない人が少なくないと言われている。盲導犬の維持費の実態を示されたい。把握していないならば、早急に実態調査を行うべきではないか。また、盲導犬の維持費に対して助成を行っている地方自治体の施策の現状を明らかにされたい。さらに、国としても盲導犬の維持費に対する助成を行うべきではないか。

四、視覚障害者に係る情報伝達手段の確保等

1 情報の入手及び伝達にハンディキャップを持つ視覚障害者の社会参加を進める上で、点訳奉仕員や朗読奉仕員の養成・確保は重要な課題である。点訳奉仕員及び朗読奉仕員の養成・確保の現状を示されたい。また、点訳技能者の処遇向上と身分制度の確立を図るべきと考えるがどうか。
2 アイコン(コンピュータの画面に表示される絵記号)化に伴い、視覚に障害を有する人々がパソコン等の操作に困難を来すようになっており、情報化社会の進展に伴い、視覚に障害を有する人と障害のない人との間の情報格差が拡大する懸念がある。視覚に障害を有する人々が情報通信機器を自由に使うことができるよう、その利用に配慮した情報通信機器及びシステムの開発を積極的に進めるとともに、こうした情報通信機器についての講習会を住民に身近な市町村等において積極的に開催すべきではないか。また、情報通信機器の取得を容易にするため、公的助成等を行う必要があると考えるがどうか。
3 視覚に障害を有する人々が安全かつ容易に家電製品を利用できるよう、家電製品への点字の表示を進める必要がある。現状及び今後の方策を示されたい。
4 情報通信手段として、電話は特に大きなウエイトを持つ。昨今の携帯電話の普及にかんがみ、携帯電話の購入に際しての補助及び使用料の減免措置を講ずるべきではないか。

五、移動・交通対策について

1 障害を有する人々が安全かつ容易に移動し、交通機関を利用できることは、ノーマライゼーションの理念を実現するための基盤である。このため、従来から鉄道駅舎におけるエレベーター・エスカレーターの設置、リフト付きバスの導入等が強く要請されているが、これらの整備についての現状はどうなっているか。また、誘導・警告ブロックの設置等視覚に障害を有する人々に対する施設整備の状況についても明らかにされたい。
2 公共交通機関において、1に例示したような障害を有する人々等のための施設整備を計画的に進める必要があるが、その具体的方策を示されたい。また、障害者プランにおいてもこれらの整備についての目標値を明示すべきではないか。
3 視覚障害者用信号機については、音声がうるさい等の苦情から住宅地等への設置が進まないとも聞いている。視覚障害者用信号機について、視覚障害者が利用するときだけ携帯用発信機の操作により音が鳴るような信号機への全国統一を進め、その設置の促進・普及を図るべきではないか。

六、資格制度における欠格条項の見直しについて

 視覚障害者等一定の事由を絶対的欠格事由とする医療関係職種の資格制度を始め、各種資格制度における欠格条項について早急に実態調査を行い、その結果に基づいて速やかに見直しを行うべきではないかまた、総理府を中心とした現在の検討状況及びその目途を明らかにされたい。

  右質問する。