質問主意書

第142回国会(常会)

質問主意書


質問第一七号

工業等制限法の抜本的見直しに関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成十年五月二十七日

齋藤 勁   


       参議院議長 斎藤 十朗 殿


   工業等制限法の抜本的見直しに関する質問主意書

 金融ビッグバンなどを大きな契機として、資本の移動の自由化や事業活動への参入障壁の低減などがもたらされ、従来にも増して国際的に開かれた日本の経済社会システムが構築される中で、事業者の活動はますますグローバル化が進展し、企業が国を選ぶ、あるいは資本が国境を越えて企業を選ぶ時代とも呼ばれるような、ボーダーレス社会の潮流が大きなうねりとなって押し寄せてきています。こうした変革の時代にあって、日本経済は極めて深刻な不況のどん底にあり、企業は、新しい経済システムに対応しながら、明日への活路を見いだすべく、たゆまぬ努力を行っています。高度経済成長の時代から、日本経済の牽引車としての役割を果たし、経済活力の源泉であった京浜臨海地域などにおいても、このままでは、輝きに満ちた事業活動が次々と創造されてくるという時代ではなくなり、国内外の厳しい経済環境の荒波にもまれ、次なる展開への光がなかなか見いだせないというのが現状であると認識しています。
 このような状況の下、地域から湧き上がってくる意欲に満ちた取り組みを元気づけ、これをサポートしていくことが求められることは言うまでもありませんが、一方で、京浜臨海部などの大きなポテンシャルを有している地域における新しい事業活動を制約してしまう規制、具体的には、首都圏、近畿圏において工場などの新増設を制限している、いわゆる工業等制限法についても抜本的な見直しが求められています。
 工業等制限法は、戦後の高度経済成長期における首都圏、近畿圏への人口・産業の異常な集中に対する緊急避難的な立法であったと理解していますが、今日においては当時のような異常な状況は解消しています。それだけでなく、今後の首都圏、近畿圏の整備のために必要となる地域における就業の場の確保や住工混在の解消の阻害要因となることが懸念されるところです。
 今日求められているのは、工業等制限法に代わる規制から誘導へと軸足を移した地域整備のための制度です。
 政府は、経済構造改革行動計画や昨年十一月の緊急経済対策において、この問題を取り上げており、本年夏までに工業等制限法の抜本的な見直しの論点整理を行い、本年度中に結論を得ることとされていますがこの工業等制限法の見直しについて、以下のとおり質問します。

一、昨年十一月の政府の緊急経済対策において、工業等制限法の規制緩和措置について、工場跡地に関する制限の緩和と除外業種の拡大等が行われたと承知しておりますが、その内容と規制緩和に当たっての基本的な方針はどのようなものであったか説明されたい。

二、京浜臨海部などでは、工場跡地をはじめとして、まとまった規模の低未利用地が発生する、そして、その有効活用がなかなか進まない、あるいは、従来、周辺の事業者と役割分担をしたり、協力を仰いだりしながら品質の極めて高い製品を作ってきたという企業のネットワークが、中小企業の転廃業により崩れる等、まるで櫛がぼろぼろの歯抜けになるような事態が懸念されています。このことを考えれば、制限区域内であっても土地の有効利用を進め、区域内の事業者の効率的な活動を守るということを通じて、経済活力を維持・発展させるという考え方が非常に重要であり、今後の工業等制限法の抜本的見直しに当たっでは、この考え方を徹底していかなければならないと思います。
 従いまして、現在、審議会で検討されている抜本的見直しにおいては、工業等制限法の廃止も辞さない覚悟で検討を進めて行くべきだと考えますが、現在の検討の方向性も含め、政府の見解を伺いたい。

三、国土政策あるいはまちづくりの政策として過度の集中を解消しなければならないということについては理解できる部分もありますが、仮に、工業等制限法の廃止ができないのであっても、現下の経済情勢や今後の日本の経済活力を発展させることを考えれば、工業等制限法を凍結するといったことも検討すべきであり、事業者が新たな事業展開を図るに当たっての制約とならない徹底的な規制緩和を行う必要があります。
 そこで、具体的には、

(1) 京浜臨海部などの自治体が工業系の地区として認めており、工場が建つために用意されているような土地については制限の対象区域から除外し、企業立地の自由を回復する。
(2) 地方企業や外資系企業といった域外企業であっても、工場跡地に同規模以下の工場が建つことについては規制の対象にしないなど域内の企業と同等の取り扱いをする。
(3) 企業が集積していて連携・協力の下で事業を行っているような地域は対象から除外する。

といったことをしないと、制限区域内の事業活動は、ますます停滞することになってしまいます。最低限こうした規制緩和を行うべきだと考えますが、政府の見解を示されたい。

  右質問する。