質問主意書

第141回国会(臨時会)

答弁書


第百四十一回国会答弁書第一〇号

内閣参質一四一第一〇号

  平成十年二月三日

内閣総理大臣 橋本 龍太郎   


       参議院議長 斎藤 十朗 殿

参議院議員竹村泰子君提出ダム事業の総点検に関する再質問に対し、別紙答弁書を送付する。


   参議院議員竹村泰子君提出ダム事業の総点検に関する再質問に対する答弁書

一の1及び二の2の(2)について

 御指摘の「ダム事業の総点検」(以下「総点検」という。)における検討を行うに当たって勘案した過去の洪水による災害の状況及び過去の渇水によって生じた支障の状況の概要を総点検の対象としたダム等事業(以下「対象ダム等事業」という。)ごとに示すと、別表第一のとおりである。
 対象ダム等事業で利水に関する計画を有するものに係る水需要の見通しについては、次のとおりである。
 日野沢ダム建設事業、明戸生活貯水池建設事業、芋川生活貯水池建設事業及び仁井田生活貯水池建設事業については先の答弁書(平成九年十一月十四日内閣参質一四一第一号。以下「答弁書」という。)別表第二で、前の川ダム建設事業、白老ダム建設事業、トマム生活貯水池建設事業、丸森ダム建設事業、小森川ダム建設事業、梅津生活貯水池建設事業、七ッ割生活貯水池建設事業及び白水ダム建設事業については答弁書別表第三で、それぞれ示したとおりである。
 また、第十堰建設事業では、同堰を利用して河川の流水を水道の用に供する意向を示していた徳島市を始めとする二市三町が平成九年八月にその意向を取り下げている。
 さらに、これら以外の対象ダム等事業にあっては、いずれも総点検の結果を公表した時点では、それぞれの事業において計画されているダム等を利用して河川の流水を利水の事業の用に供することが見込まれていたものである。
 御指摘の「事業が計画されている河川等における治水事業の進ちょく状況」については、総点検においては、それぞれの対象ダム等事業が計画されている河川の全体にわたって洪水により被害を受けると想定される地域の社会的及び経済的状況、当該河川の改修の現状及び見通し等を総合的に勘案して判断したものであり、特定の指標によって判断したものではないことから、これを一律に示すことは困難である。
 御指摘の「関係する地域の意向」については、それぞれの対象ダム等事業の事業者等においてもできる限り把握に努めているところであるが、例えば「賛成」を表明する者の中においてもその条件に関し極めて多様な意向が存する等、多岐にわたる関係者の多様な意向が存することから、これを一律に示すことは困難である。
 対象ダム等事業に関しこれまでに実施してきた調査の結果については、それぞれの対象ダム等事業について、降水量調査、水位調査、流量調査、地形地質調査等の基礎的調査及び洪水防御計画、環境保全計画等に係る調査等の施設の計画に関する調査を始めとする多様な調査が行われ、膨大な成果物が得られていることから、これを示すことは困難である。

一の2について

 中止ダム等事業(対象ダム等事業のうちその事業に係る水需要の見通しが変化したこと、治水計画上のより優れた代替案の存在が確認されたこと等の理由によって平成十年度以降は事業を行わないとの判断を行ったものをいう。)とされた各事業については、平成八年八月時点においては、御指摘の「他の事業を行うことが経済的に有利である」ことを確認できるような調査結果が得られていなかったものである。
 次に、休止ダム等事業(対象ダム等事業のうち事業の緊急性、地元状況等にかんがみて平成十年度予算概算要求では要求を行わず、その代替案も含めた今後の事業の進め方について検討を行うこととしたものをいう。以下同じ。)とされた各事業に関する検討経緯は次のとおりである。
 松倉ダム建設事業については、答弁書別表第三において示されているとおり、その事業者である北海道知事が平成九年七月に同事業の今後の進め方を判断する必要があると表明したことを尊重し、休止ダム等事業としたものである。
 白老ダム建設事業及びトマム生活貯水池建設事業については、平成八年八月時点においても事業の実施に関し多角的な検討を行う必要があると考えていたものであり、平成九年度予算概算要求においても要求を行っていなかったものである。
 矢田ダム建設事業及び新月ダム建設事業については、平成八年八月時点では、当時における計画に基づいて事業の進ちょくを図ることが適切であると考えており、事業の実施に関し多角的な検討を行う必要があると考えるには至らなかったが、総点検においては、これらの事業に係る地元状況等にかんがみて休止ダム等事業としたものである。
 また、これら以外の休止ダム等事業については、いずれも平成八年八月時点においては、それぞれの事業において計画されているダムによる洪水調節に相当する効果を有する他の治水対策を行う方が当該事業を行うよりも経済的に有利である可能性があると考えられるとする調査結果が得られていなかったこと等から、事業の実施に関し多角的な検討を行う必要があると考えるには至らなかったものである。

二の1の(1)について

 乱川ダム建設事業について平成十年度以降は事業を行わないことが妥当であると判断したのは、乱川ダムの建設予定地の変更に伴いその建設費の試算値が大幅に増加すると見込まれたことから、同ダムによる洪水調節に相当する効果を有する他の治水対策を最上川水系乱川において行う方が、同事業を行うよりも経済的に有利であることが確認されたことによるものであり、御指摘の「実施計画調査の一環として、河川横断測量等を実施し詳細に被害軽減額を見直したところ、妥当投資額が減少」したことによるものではない。
 また、御指摘の「一七五億円」及び「一六五億円」は平成二年度に、御指摘の「三一六億円」及び「一四二億円」は平成九年度に、それぞれ山形県が試算して得た数値であるが、御指摘の「一四二億円」については、河床及び高水敷の洗掘による河道の一時的な洪水の疎通能力の増加等を前提とした数値であり、乱用ダムの洪水調節に係る妥当投資額の試算値として適当なものではなかったと聞いている。
 さらに、山形県においては、御指摘の「妥当投資額」の試算値については、最上川水系乱川における洪水により被害を受けると想定される地域の社会的及び経済的状況の重大な変化等その見直しを必要とするような状況は存しないと考えたことから、また、乱川ダムの建設費の試算値については、その見直しを可能とするような調査結果が得られていなかったことから、いずれも平成八年八月においてはその見直しを行わなかったものである。

二の1の(2)について

 山形県においては、乱川ダムに係る妥当投資額の試算値を、同ダムによる洪水調節に係る妥当投資額の試算値約百七十五億円と、同ダムによる流水の正常な機能の維持に係る妥当投資額の試算値約七十四億円との合計として求めたものであると聞いている。
 なお、ダム等による洪水調節等に係る妥当投資額は、当該ダム等が計画されている河川における洪水により生じると想定される被害の総額を基に確率計算の手法により当該ダム等の建設によって生じる便益の期待値を求める等の手法により算出されるものであることから、御指摘の「内訳」を更に示すことができる性格のものではない。

二の1の(3)について

 ダム等事業においては、これまでも、ダム等による洪水調節等に係る妥当投資額についてはその事業が計画されている河川における洪水により被害を受けると想定される地域の社会的及び経済的状況の重大な変化が生じたと考えられる場合等に、また、ダム等の建設費については物価変動による増大が見込まれる場合等に、それぞれ見直しを行ってきているところであり、これらについて特定の時点に一律に見直しを行うことは考えていない。
 総点検を行うに当たっては、新たに妥当投資額の見直しの結果が得られていた対象ダム等事業が存在しなかったことから、妥当投資額の見直しを踏まえて検討を行った対象ダム等事業は結果的には存在しなかった。また、新たにダム等の建設費の見直しの結果が得られており、総点検においてそれを勘案した対象ダム等事業について、見直し前及び見直し後の建設費並びに見直し前の建設費を定めた年度を事業ごとに示すと、別表第二のとおりである。

二の2の(1)について

 休止ダム等事業のうち白老ダム建設事業及びトマム生活貯水池建設事業については、平成八年八月時点においても、それぞれの事業において計画されているダムによる洪水調節に相当する効果を有する他の治水対策を行う方が当該事業を行うよりも経済的に有利である可能性があると考えていたものであり、平成九年度予算概算要求においても要求を行っていなかったものである。
 また、これら以外の休止ダム等事業で他の治水対策を行う方が経済的に有利な可能性があると考えられたものについて御指摘の「平成八年八月にはそのような可能性が考えられなかった」のは、いずれも、平成八年八月時点においては、それぞれの事業において計画されているダムによる洪水調節に相当する効果を有する他の治水対策を行う方が当該事業を行うよりも経済的に有利である可能性があると考えられるとする調査結果が得られていなかったことによるものである。
 さらに、休止ダム等事業で他の治水対策を行う方が経済的に有利な可能性があると考えられたものについて御指摘の「今回の見直しで、結論が得られなかった」のは、いずれも、総点検の結果を公表した時点においては、それぞれの事業において計画されているダムによる洪水調節に相当する効果を有する他の治水対策を行う方が当該事業を行うよりも経済的に有利であることを確認できるような調査結果が得られていなかったことによるものである。

二の3の(1)について

 御指摘の「足踏みダム事業」とされた各事業について、建設省において御指摘の内容の要求を行わざるを得なくなったのは、答弁書二の4についてで述べたとおり、いずれも、予算上の制約によるものである。

二の3の(2)について

 平成十一年度以降の予算概算要求を行うに当たっての政府としての予算要求に関する基本的な方針が未定であることから、建設省において御指摘の「来年度以降の予算要求について、どのような方針で臨む」かについては未定である。

別表第一~別表第二 1/60

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