質問主意書

第141回国会(臨時会)

答弁書


答弁書第九号

内閣参質一四一第九号

  平成九年十二月九日

内閣総理大臣 橋本 龍太郎   


       参議院議長 斎藤 十朗 殿

参議院議員山下栄一君提出特別養護老人ホーム入所申請における健康診断書の費用負担等に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。


   参議院議員山下栄一君提出特別養護老人ホーム入所申請における健康診断書の費用負担等に関する質問に対する答弁書

一について

 特別養護老人ホームは、常時の介護を必要とする者の養護を目的とする老人福祉施設であり、医療処遇が適当な者については、医療提供施設において療養を行うことが適当である。したがって、老人福祉法(昭和三十八年法律第百三十三号)第十一条第一項第二号の規定に基づき、市町村が特別養護老人ホームへの入所措置を行うに当たっては、各市町村は、入所措置の申出者が特別養護老人ホームにおいて処遇することが適切であるか否かを判定する必要がある。そのため、厚生省において都道府県知事等に対し「老人ホームへの入所措置等の指針について」(昭和六十二年一月三十一日付け社老第八号厚生省社会局長通知。以下「指針」という。)を示し、入所措置の基準として、入所措置の対象となる老人が次の条件を満たすこととするとともに、入所判定に際して精神障害及び問題行動のため医療処遇の要否の判断が必要な場合には、保健所等の精神科医の診断書を求めることとしている。

1 入院加療を要する病態でなく、かつ、伝染性疾患を有し、他の被措置者に伝染させるおそれがないこと
2 日常生活動作の状態が一定の介助を要する状態又は痴呆等精神障害の問題行動が重度若しくは中度に該当する状態であり、かつ、その状態が継続すると認められること(著しい精神障害及び問題行動のため医療処遇が適当な者を除く。)
 また、平成五年四月から特別養護老人ホームへの入所措置の事務が町村に移譲されることを契機として、厚生省において平成四年十二月に、市町村における特別養護老人ホームへの入所措置の事務等の処理の参考資料として「入所措置事務マニュアル」(以下「手引」という。)を特に示し、入所措置の判定に当たっては、入所措置を要すると認められる者につき、伝染予防措置として、伝染性の疾患の保有の有無を確認しなければならないこととし、その確認方法の例として、健康診断書の提出を示したところである。
 したがって、各市町村においては、指針及び手引を踏まえ、入所措置に当たり、入所措置の基準に該当するか否かを判定する資料として、入所措置の申出者に対し、健康診断書の提出を求めているものと認識している。
 なお、老人福祉法第十一条第一項第二号の規定に基づく特別養護老人ホームへの入所措置については、長期、短期という入所期間の区分はない。

二について

 御指摘の伝染性疾患については、赤痢等のいわゆる法定伝染病のほか他の入所者に伝染することにより特別養護老人ホームにおける処遇に支障を生じさせるおそれがある性病、結核等の疾患を想定している。厚生省としては、手引において、入所措置の要否を判定するためできるだけ受診すべき検査として、赤痢菌検査、梅毒検査及び胸部レントゲン検査を例示するとともに、緊急を要する場合その他やむを得ない場合においては、かかりつけの医者等から症状等必要な事項を聴取することを指導しているところである。

三について

 老人保健法(昭和五十七年法律第八十号)による健康診査(以下「老人健康診査」という。)は、循環器疾患等を早期に発見し、栄養、運動等に関する生活指導や適切な治療と結び付けることによってこれらの疾患の重篤化を予防すること等を目的としている。特別養護老人ホームの入所判定審査票に老人健康診査の記録表の写し等の添付を求めているのは、入所措置の基準の一つとして入院加療を要する病態でないことを要件としていることから、当該記録表の写し等の記載により把握できる範囲において入所措置の申出者の健康状態を判定するためである。しかしながら、老人健康診査については、入所判定に必要な伝染性疾患の有無並びに精神障害及び問題行動についての検査又は診断が行われないことから、老人健康診査の記録表の写し等の添付に加え、伝染性疾患の有無についての診断を求めるとともに、必要な場合、精神障害及び問題行動についての保健所等の精神科医の診断書の提出を求めることが必要となるものである。

四及び五について

 御指摘の各市町村における健康診断書の様式及び検査項目の相違について、厚生省においてその詳細は把握していない。特別養護老人ホームへの入所措置に必要となる健康診断書の様式及び検査項目は、市町村において老人福祉法を適正かつ円滑に実施するという観点から、市町村の実情に応じて適宜定めるべきものであり、厚生省としては、二についてで述べたとおり、その事務処理の参考資料として示した手引において検査の内容を具体的に例示する等の指導を行っているところである。

六について

 厚生省としては、市町村において入所措置が適正かつ円滑に行われるよう、二についてで述べたとおり、手引において検査の内容を具体的に例示する等の指導を行うことにより、指針の趣旨の徹底に努めてきたところである。また、健康診断書の様式については、入所措置が適正かつ円滑に行われるという観点から、市町村ごとにその実情に応じて適宜定めるべきものと考えており、厚生省として一定の様式を示す考えはない。

七について

 健康診断書の作成に係る費用負担の実態について、厚生省においてその詳細は承知していないが、検査項目の内容及び各検査項目に係る単価が異なること等から、多様な実態があるものと考える。

八について

 新規に特別養護老人ホームへの入所を申し出る者に係る健康診断書の費用については、その者が必要な養護を受けるための入所の手続において必要となるものであり、申出を行う者において負担されるべきものと考える。
 なお、市町村は、特別養護老人ホームへの入所の申出者が健康診断書を提出しない場合においても、市町村においてかかりつけの医者等からの聴取等他の方法により必要とする事項が把握できる場合には、入所措置を行えないものではない。

九について

 御指摘の特別養護老人ホームへの入所の申出に当たり必要となる健康診断書の料金については、各医療機関において検査項目等に応じて自主的に設定されるべきものと考えている。
 健康診断書に係る料金の広告については、現在、医療法(昭和二十三年法律第二百五号)第六十九条の規定により禁止されているところであるが、今後、患者が適切な医療機関を選択することができるようにするという観点から、医療機関における利用料金を広告事項とすることについて検討していくこととしており、健康診断書に係る料金の取扱いについても、その中で検討してまいりたい。
 また、健康診断書に係る料金の院内掲示については、現行においても禁止されているものではなく、医療機関の判断により実施できるものである。

十について

 老人保健施設への入所の申込みに当たって健康診断書の提出が必要な場合において、その作成に係る費用負担の実態について、厚生省においてその詳細は承知していないが、入所の申込みに伴う費用として入所申込者が負担しているものと考える。

十一について

 御指摘の介護保険法案(以下「法案」という。)が成立し、施行された場合の介護保険制度における特別養護老人ホームへの入所は、法案第十九条第一項の要介護認定を受けた者であって特別養護老人ホームへの入所を希望する者とその者が入所を希望する特別養護老人ホームとの間の入所の契約によることとなる。御指摘の健康診断書等の提出を含め、入所の際に必要となる書類の具体的な取扱いについては、要介護認定における主治の医師の意見等との関係も含め、今後検討してまいりたい。

十二について

 法案第二十七条第六項においては、要介護認定の申請があったときは、市町村は、申請者の主治の医師又は主治の医師がいない場合等においては市町村の指定する医師等から、申請者の身体上又は精神上の障害の原因である疾病又は負傷の状況等につき意見を求める等の措置を講ずることとされているが、当該措置は、市町村が介護保険の保険者として行う要介護認定事務に伴い必要となるものであり、これに要する費用については、当該市町村が負担することとなると考える。